趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

August 7, 2016
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【本文】染殿の内侍といふいますかりけり。
【訳】染殿のないしというかたが、いらっしゃった。
【注】
・染殿の内侍=未詳。一説に右大臣藤原相良の娘、また一説に権掌侍藤原因香の娘。染殿は藤原義房の邸宅の名で、のちに京都市上京区の地名となった。
・「内侍」は、掌侍(ないしのじょう)。後宮女官の三等官。

【本文】それを能有の大臣と申しけるなむ、時々すみたまひける。
【訳】それを右大臣能有と申し上げたかたが、時折、彼女の家に通っておられた。
【注】能有=文徳天皇の子で右大臣。(八四五~八九七年)。

【本文】物をよくしたまひければ、御衣(おほむぞ)どもをなむ預けさせ給ひけるに、綾どもを多く遣はしたりければ、「雲鳥の紋の綾をや染むべき」ときこえたりしを、


【本文】ともかくものたまはせねば、「えなむ仕うまつらぬ。さだめうけ給はらむ」と申したてまつりければ、
【訳】うんともすんとも返事をおっしゃらなかったので、「ご指示がないと処理いたしかねます。御取り決めをうかがいましょう。」と申し上げたところ、
【注】
・「ともかくも」=ああしろともこうしろとも。
・「のたまはす」=「いふ」の尊敬語。
・「つかうまつる」=「す」の謙譲語。
・「うけたまはる」=「聞く」の謙譲語。
・「たてまつる」=謙譲の補助動詞。

【本文】大臣の御返り事に、
くもとりのあやの色をもおもほえず人をあひみで年の経ぬれば
となむ宣へりける。

雲や鳥の模様の色も区別がつかない。愛するあなたに合わずに何年もたってしまったので。
とおっしゃったとさ。





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Last updated  August 7, 2016 09:23:25 AM
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