がらくた小説館

S53消滅

 あるときを境に俺の身近に変化が起きていた。それを確かなものに感じたのはつい一ヶ月前の同窓会。

45人いた生徒のうち同窓会に参加したのは3人足らず。

確かに用事などで欠席したものもいるが、それでもこの人数は少なすぎる。あれだけ仲の良かったクラスがなぜ?

その質問を幹事の新田に問うのは当たり前のことで、そしてその答えが「音信不通やそのほとんどが死んでしまった。」と言うものだった。

そしてそれは俺の同級生だけではなく、この国全体で起きている現象だと知ったのはそれからすぐのことだった。

確かにこのところ変なことが多い。
人があまりにも死にすぎる。

最近では俺の周りの人間が2人も死んだ。それはすべて自然死なので実際にニュースにもならないが、確かにおかしい。

そしてもっとも俺がそのことに違和感を覚えるのはその亡くなった人の共通点が昭和53年生まれなのだ。

そう言えばこの前死んだ同級生の富山なんて昔から風邪なんか引いたこともないような体が丈夫な男だった。

不自然過ぎる。そしてそのことに対して何も不思議に思わない周りの人間たち。

いや、気づいていないだけなのだろうか?俺はこの事をどこかに知らせなければと思っていた。早急に対処しなければ手遅れになる。

しかしいったいどこに?

俺はすぐさま押入れの中にあったタウンページをめくり、関係機関をあたる事にした。

そして片っ端から電話をかけた。しかし、どこも馬鹿にした態度で話を聞いてくれない。

俺は最後の手段とばかりに直接関係機関に出向くことにした。とにかくそうする以外に仕方がない。

俺はとにかくなめられないように一張羅のスーツを着て、玄関先で靴を履いていた。

と、その時「ピンポーン」 とインターフォンが鳴った。

まさか…。


俺は嫌な予感がしてとっさに靴を履くのを止め、音を立てないようにそっとのぞき穴から外を見た。

しかしそこには誰もいない。

やはり…。

俺はその時確信していた。おそらくこの出来事には何か裏があるに違いないと。

なぜ俺が?そして俺がこんなこと(政府か何かに命を狙われている)になってると言うことは?

俺は急いで親友の橋元に電話をかけた。

「この電話は現在使われておりません」

もしかしてあいつも…

その時俺はすべてを悟っていた。


俺達昭和53年生まれはおそらく絶滅する定めにあるのだろうと!

なぜなのかは分からない。 俺達が生まれた年に使われていたワクチンに問題があったのか、それとも何かもっと恐ろしいことが…。そしてそれは政府レベルでの話しなのだと。

その時いきなり玄関のドアが開く音が聞こえて男が部屋に入ってきた。

俺は目の前の男をとっさに睨みつけ、こうなれば最後まで意地を通そうと思っていた。そして俺は生き抜いてみせる。

そして男は俺の前で膝をついて言った。

「親父。なんでいるなら出てきてくれないの。歳だからって元気なくせに動かないと余計に体に悪いよ。そう言えば親父明日で何歳になるんだっけ?」

「97歳」

「何言ってんだよ。親父は102歳だろ。今年は西暦2081年分かった?」

「…。」


 その質問には、俺は意地でも答えなかった。 




              了


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