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睦美、いきなり…。体を…。そして…。頭の中で…。「…やっぱりだめ。」急ぎ足で玄関に。耀司、そんな睦美に、「睦美さん。」芙美花、慌ててキッチンから。そして父に、「おとうさん。私が。」耀司、芙美花に、「う、うん。」睦美、既に玄関で靴を履いてうずくまっている。そんな睦美に芙美花、「ま、なべ…、さん。」その声に睦美、「あ、あ。あ~~~。ごめんなさい。私…、また…。」芙美花、体をくの字にして両手を腰で結んで、顔を睦美に近づけるようにして…。そして、ニッコリと。「少し、歩きませんか…???」睦美、顔を僅かに右に。「え…???」芙美花の顔を見て、「…えぇ…。」芙美花、上体を起こしてリビングに向けて、「おとうさ~~ん、ちょっと歩いて来る~~。」その声に耀司、リビングから、「お、おぅ。」そしてゆっくりと玄関に。そして睦美に、「だい…じょうぶ…???」睦美、「え、えぇ~~。」頭をコクリと。そして…、「ごめんなさい。」芙美花、ドアを開けて…。そして父にコクリと。耀司も、コクリと。芙美花と睦美、アプローチを…。そして…。芙美花、「眞鍋さん。お花、ありがとうございます。」睦美、「え、え~~~。」「それから…。」「えっ…???」芙美花、ニッコリと。「お見舞い、ありがとうございます。」その声に睦美、「あ。あ~~。いいえ。…私の方こそ。高井戸さん、いなかったら、私なんて、今、こうやっては…、いられなかったと思うから。」芙美花、そんな声に、両手を組んで前に、後ろに。「はは。…ですよね~~。」前を向きながら、「叔母が言ってました。さすがは黒帯だって。」睦美、そんな芙美花を見て、「えぇ。その話、高井戸さんからも…。…と、言うか、木守さんから…???…話しを…。だったような。」「子供の頃に~~。映画を観て…。」瞬間、「あれ…???…合気道だったかな~~。空手…???」顔を傾げて…。そしてクスクスと。「はは。忘れちゃった。…でぇ~~。単純な話。たったそれだけで~~。教室に入った~~。でぇ~~。何でか、とんとん拍子に~~。黒帯~~。」睦美も、「うんうんうん。そんな風に聞いてます。」「もしかしたら~~。」芙美花。そんな芙美花の声に睦美、「うん…???えぇ…???」「おとうさん。自分の大切なもの、増えたって、思っているの、かも…。」その声に睦美、芙美花を見て、「えっ…???」「おとうさんって~~。」芙美花、前を見て歩きながら、「あぁ見えて~~。物凄い単純。そして優柔不断。」睦美、「うそ。」芙美花、その声に、顔を左右に振って、「ううん。ほんと。前に、おかあさんがいきなり倒れて、入院。その時なんて酷かった。おとうさん、あぁ見えて、物凄い単純だけど、物凄い責任感もあって、私に迷惑掛けたくなかったんじゃないかな~~。自分から進んで料理を。」瞬間、睦美、芙美花を見て、「うそ。家事出来ないって。」芙美花、顔をコクリと、「はい。出来ません。…なんだけど~~。変に正義感。…と、言うか、責任感…???…感じたん。だろうと思う。会社休んで、おかあさんに付き添って、そして帰って家で食事の…。それが…。」眞鍋にぷ~~たれた顔をして、「もぅ~~。キッチンやらリビングのテーブル、ぐっちゃぐちゃ。私、学校から帰って、それを見て、おとうさんに、大声で、何よこれっ!!!って、怒鳴り散らした事あった。」睦美、「えへぇ~~~???」「おとうさん。私に申し訳なく、ごめん。何とか、やろうと思ったんだけど…。私に。そして次に、体を曲げるように私に、本当に申し訳ない。ごめん。」睦美、黙って芙美花の話しを。芙美花、「私。私もね。いきなりおかあさんが乳癌になって。あ。眞鍋さん、私のおかあさん、乳癌だって…。」睦美、「えぇ。…高井戸さんから。」芙美花、「私もパニクってたんだよな~~。」空を見ながら。「いきなり学校で先生から、芙美花さん、すぐ病院に。おかあさんがって。スマホ、開けてみたらおとうさんから3回も電話が。スマホ、電源切ってたから。…それからだよね。おばちゃんが家事、手伝ってくれて…。それから私にバトンタッチ。」睦美、「うんうん。」「おばちゃん、おとうさんとはあんまり口、利かなかった。家事出来ないから。…って言うか、ひとりにしておこうって。芙美花には私がいるけど…。兄さんには…。…まっ。当然、芙美花がいるけど…。お義姉さんがこんな事になって。そして…。何か月か…。おかあさんが…。あの時は。」芙美花、目をパチクリと。「あの時は、私が…。完璧に参ってた。…なんだけど…。おとうさんは…。」芙美花、思わず自分の頬に手を。鼻を啜って。涙が零れていた。「とにかく、おとうさん、私の事、毎日、心配で…。それに…。おばちゃんがいてくれた。後で話を聞いたけど。おとうさん、覚悟はしていたって。さすがに、黒帯の精神だよ。私なんて全然。」 ママでいい…。 vol,125. 頭の中で…。「…やっぱりだめ。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2024.11.26
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誓、「へぇ~~~。こういうワンちゃんなんだ~~。めっちゃくちゃ可愛い~~。耳がおっきくって長~~い。しかも、垂れてるのがまた可愛い~~。ほんと、大人しそうで、人懐っこそう~~。」暁美、「ははははは。睦美の腕を噛んだ犬とは大違い。」ソファから睦美、「だから~~。その話はやめて~~。」その声に暁美、鼻の下を伸ばして舌をチロリと、「怒られた~~。」夜の9時を過ぎようとしている。耀司のスマホにライン通話の電子音。左手はまだ使えないが、右手で仕事の最中。「ふん…???」そして画面を見ると、「えへ…???…うそ。」3回のコールで通話に。そして右手で持って右耳に、「はい。高井戸です。睦美さん…???」スマホから、「もしもし。高井戸さん…???…睦美です。」睦美、鼓動が高鳴る。部屋着でベッドに腰掛けたままで。耀司、「あ。はい。高井戸です。」睦美、心臓はバックンパックン状態。「あの。…今日は…。申し訳ありませんでした。」スマホを耳に、深く頭を下げる睦美。スマホから高井戸の声、「あ、あ~~~。あ、いや…。…と、言うか。…あの…。僕も、申し訳ありませんでした。」睦美、一瞬、「えっ…???」耀司、パソコンの画面を見ながら。「あ、いや…。家に、犬を飼っているなんて、一言も言わないで。しかも…。中型犬で、ちょっと、大きいので。」その声に睦美、「あ、あ、あ~~。はい。」スマホから、「ごめんね。いきなりだったから、ビックリしちゃったよね。はは。」睦美、「あ、あ~~。はい。」高井戸の声、「あ、いや。ビックリなんてもんじゃないよね~~。僕の方こそ、申し訳なかった。はは。反省してます。」そして、「はは。…だから、汐梨にも怒られる。」睦美、スマホを耳に、「怒られる。…反省してるって…。」目をパチクリと。耀司、思わず顔を上に、「あ、いやいやいや。ははは。…こっちの話しで…。」「あの。」いきなり睦美。ハッキリとした口調で。耀司、その声に瞬きして、「あ。はい。」睦美、目を閉じて、ゆっくりと息を吐いて。吸って。今度はふたり同時に。「あ、あの…。」「あの。高井戸さん。」耀司、その声にまた、「あ。はい。」「明後日。」耀司、僅かに顔を傾げて、「あ、明後日。」睦美、「あ、はい。…あさって…。…あの。…もう一度…。…お邪魔しても。」耀司、その声に、「え…???…はっ…???」睦美、まだまだ鼓動は高鳴っている。そして、今度は、「明後日、またお邪魔しても…。」「あ、あぁ~~。」耀司。「あ、あ、はい。」部屋のカーテンを見て。「え、え~~~。べ、別に…、構いませんけど…。…でも…。」睦美、口の中の物を飲み込んで、「あ、ありがとうございます。」耀司、「あ、あの…。…でも…。ウチには…、犬が…。」睦美、「えぇ。…分かってます。」少し間を置いて…。耀司、スマホに、「だ、大丈夫…、ですか…???…晄史さんから睦美さん。…犬の事を…。」「えぇ。…でも。…このままじゃ…。」最後の語尾は小さく。耀司、僅かに眉間に皺を。「…このままじゃ…???」睦美、スマホに、「あ。いえ…。明後日。…お邪魔します。」「あ、はい。」耀司。「わ…かりました。お待ち…、しております。」汐梨、麻沙美を連れてヨシカワ音楽教室に。ママ友たちとも鉢合わせ。そんなママ友たちから汐梨、「ねね、木守さん。麻沙美ちゃんのおじさま。…って…???」その声に汐梨、思わず。…けれども、「はは。あん。えぇ~~。実は、脚をちょっと、怪我しちゃってて。」その声にママ友、「あらまぁ~~。…道理で~~。…顔を見せないから心配しちゃって~~。」汐梨、何とか作り笑顔を。「はははは。ご心配頂き。」事務局員にも、「こんにちは~~。」講師のスケジュールで、遅い時間で始まった今日。睦美、事務局員たちに挨拶をして、「お先に失礼します。」事務局員たち、「おつかれさま~~。」睦美、フラワーショップに寄り…。高井戸家の玄関のチャイムを。学校から帰って来ている芙美花、「あ、来た。」捻挫は殆ど回復。けれども用心で松葉杖を。耀司、芙美花に、「あ、おとうさん出るよ。」芙美花、「うん。」足取りは軽くなっている。芙美花、モニターに、「は~~い。」モニターから睦美の声。「眞鍋です。」芙美花、「空いてます。どうぞ~~。」耀司も玄関で、「空いてますよ。どうぞ。」ドアが開く。そして…。睦美、高井戸の前でお辞儀をして、「こんにちは。先日は…。」耀司、ニッコリと。「まま。どうぞ。」睦美、花束を持ったままで靴を…。そしてゆっくりとリビングに。鼓動は高鳴っている。リビングに入るや否や、「高井戸さん、これ…。」花束を…。耀司、振り返って、「ああ。はは。うん。ありがとう。芙美花~~。」キッチンから芙美花。「あ、は~~い。」花束を受け取って、「ありがとうございます。」そして、睦美。リビングの定位置の犬を。 ママでいい…。 vol,124. 「…あの。…もう一度…。…お邪魔しても。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2024.11.25
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