いつの頃からか、過ぎていく「時間」に
焦燥感を覚えるようになった。
何かを、何かをしなくちゃいけない。
そんな気持ちばかりが、僕を。
僕を動かすようになっていった。
1日が24時間しかない事を、歯痒く思った。
無茶とも言えるほど、予定を詰め込み、
まるで自分を虐めるかのごとく、動き回った。
今日が。今日が終わってしまう。
そんな焦燥感。
『明日があるよ。』
そんな言葉に、耳を貸さなかった。
止まらぬ針。
回る秒針。
デジタルの点滅。
時計を見るたび、時間が削られていく。
早く、早く何かをしなくちゃ。
何を?何でもいい。
兎に角、時間が過ぎていくんだ。
何かを。しなくちゃ。
何時しか、眠ることすら、恐れるようになる。
どうしてだか分からない。
目が覚めたときに
また、針が進んでいる時に恐れを感じた。
時間は、残り、少ないんだ。
手を伸ばせ。
歩を進めろ。
脳を、神経を、細胞を。
その全てを。
この時間に賭けろ。
止まるな!!
止まるな!!
止まるな!!
止まったら。
もしも、止まったのなら。
もしも、止まったのなら?
時計の針が、時間を削っていくのを見ている。
デジタルの点滅が、次の時間を呼び込んでいく。
止まったら、どうなるんだろう。
僕は。
僕が立ち止まったら、どうなってしまうんだ?
どうにも。
きっと、どうにもならない。
過ぎていく時間を、時を、
『もったいない』
そう、思っていた。
Time is Money.
時だけは、
乞食だろうが富豪だろうが
老人だろうが赤子だろうが
同じように手に入れることが出来て、
それ以上を手に入れることが出来ない。
だから。
だから僕は必死で手に入れた時間を使っていた。
走り続けることで。
『時を使う』ことは
それが正しい方法だと思っていた。
理由なんて、無い。
いつの頃からか、過ぎていく「時間」に
焦燥感を覚えるようになった。
何かを、何かをしなくちゃいけない。
そんな気持ちばかりが、僕を。
僕を動かすようになっていった。
けれど、『何もしない』時間の使い方を
僕は、していなかった。
しようとしなかった。
走る事を、止めた。
立ち止まってみた。
暗い、暗い夜道。
0:00を示す 腕のデジタル時計が点滅を繰り返し、
時間を次々と食い潰していく。
自転車から降りて、袖を伸ばし、時計を隠した。
顔を上げてみる。
ひんやりとした空気が、確かにそこにあった。
深く黒い空に、刺すように星が。
僕は、それを見てる。
時計の針を見ずに。
僕は、ただ、それを見ていた。
『走ること』
それを僕は否定しない。
確かに僕は、走り続けることで
たくさんのものを手に入れた。
けれど、立ち止まってしか
手に入らないものも、きっとあったんだろう。
刺すような星が、
僕を照らした。
その時、何かを。
何かを手に入れた気がしていた。
僕「つまり、そういうことなんです。」
ツタヤ店員「はい。延長料金¥1,200頂きます。」
ちっ。分からず屋め。
お話のつづきを、いつか、また。 2005.06.14
チェリー(702の場合) 2005.06.11
やわらかい、かぜ。 2005.06.06