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2012年04月11日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
私の仕事場は、不動産屋だ。

だから、お部屋探しのための、いろいろなお客様がいらっしゃる。

私は、事務が担当なので、お客様との直接のやり取りはしないが、小さな事務所だから営業の会話は机越しにそっくり聞こえる。

お客様の多くは、これから社会に出ようとする若いカップルが多いけれど生活保護の方も増えてきた。


さて、今日は朝一番で、ドアがあき、(久保くンはいるかあ)と元気な声が飛び込んできた。

目がくりっとした、背丈のあるいい男だ。

生憎、久保君はトイレに入っていたので

営業が、いらっしゃいませ、すみません、久保はちょっと席をはずしております、と答えると

(なんや、せっかくきよったのに、いないとはどういうこっちゃ!)



トイレのドアが空き、久保君を認めると、

(おう、久保君、きよったぜ、いい部屋探してくれや)と、上機嫌になった。ホッ。

(ワイは、生活保護や、エイブル行ったらな、ここにはTVや冷蔵庫がついた部屋があるっちゅんで、紹介された。そな便利や、なんも心配せんで、いい。

部屋があれば、寒ないし、彼女も呼べる。普通そうやろ、部屋があるのは人並みや。

ただな、ワイは生活保護や、金がない、仕事がない、今、41000円ある、待てよ、42000円かな、いや待て、40500円や、それで、入れるとこ探してや。

指扇にな、兄貴がおるんや、インターネットで調べられるやろ、

地域によってな、保護される金額が違うから、ここは高い、指扇で41000円以内の部屋がいい。

頼むで久保君、仰山出してや、バンバン出してくれや。)

久保君は新卒で入って1年目だ。

僕は、ここへきて初めて、生活保護の人と話をしましたという、お坊ちゃん育ちの子だ。

 久保君は、分かりました、お探しします。ところで、なぜ生活保護を受けられるようになったんですか?)と、尋ねえた。



営業としては、当然の流れの会話である。

が、突然流暢な関西弁でまくし立てていた彼の口調が変わった。

(それは答えられん、個人情報や。言わんくてもいいはずや。必要ない)

ちょっと沈黙で固まった。久保君が引いたのがわかる。

答えられない、なぜ?言えない理由がある、なに?



(仕事がないから、金がない、だから生活保護や。しゃないやろ。頭もおかしくなる。

金がなくて、野宿だってしたことあるんや。それが理由や。安い部屋でいいんや、探してくれ、な)

彼は、久保君の顔ををすがるようにみつめた。


店長が、生活保護の方の紹介の場合、管理会社様にその理由を報告しないといけないんですよ、理由いかんによっては、断られることがあります、と、久保君の代わりに答えた。

(金がないからや。だから大阪から、逃げてきたんや。仕事してなきゃしゃないやろ)


        え、大阪から、に、げ、て、来た。なに、そのフレーズ!

お金がないからですか。わかりました。そう答えます。店長は、それ以上は深追いしない。


(指扇にな、兄貴がおるんや。知ってる人がいればあ心強いやろ。たくさん物件あるやろから
探してください。)

         あれ、口調が変わったよ。

久保君が、わかりました、指扇に弊社の支店がありますので、当たってみますと、電話をかけ始めた。

41000以下で、初期費用がなくて、即入可で、生活保護の方です。はいそうです。宜しく。

久保君が電話を置くなり、大阪の男がすぐ聞いた。

(何が、はいそうです、なんだ?刑務所帰りの奴かとかきいてきたのか?)

        あちゃー!個人情報、自分から話しちゃってるじゃないの。

久保君は、お仕事していない人ですかと聞かれたので、そうですと答えたのですと、説明した。

彼は安堵したように、さあ、どんどん送ってこいよ、見てやるでえと、ニコニコしている。

FAXが入った。(来たか!)と目を輝かせたが、久保君が、いえ、違う情報ですと、そっけなく答える。

久保君の頭の中には、彼をそつなく追い返すにはどうしようという思いが渦巻いているに違いない。

トーンの落ちた声で、聞いたわけでもないのに彼は話し始めた。

(俺は、親に捨てられたんだ。な、久保君よ。久保君は多分真面目やろうけど。

男と女がいいことやりおって、子供作って、どっか行っちまった。無責任やろ。

親父の顔も知らんし。そな、たばこも吸ってみたくもなるやろう。久保君は真面目やろからせんやろけど。人間、真面目かやんちゃか、どっちかや)

つぶやくように、彼は、しゃべった。

(この間、字もやっと覚えた)

           え~、どんな、境遇だったの?

FAXが入って来た。

3枚入ってきました。どうでしょうか、と久保君は彼の前に資料を広げると

食い入るように彼はみつめ、一枚をとり(これいいなあ)と感嘆している。

店長がすかさず、お店によって、公開しないものもありますよ。と口をはさむ。

(と、いうことは、他の物件もあるかもしれんということか?)

一人合点した彼は、(なら、久保君、この資料もって、この店行ってみるわ。世話になったな。や、や、や、ありがと)

久保君は、神妙にわかりました、それでは下までお送りいたします。と、2人はドアから出て行った。



ん~!

最初は、調子のいい男だな、と聞いていたが、彼の(親に捨てられたんだ)という言葉が耳に残る。

その時の彼の表情は、小さな少年の、さみしくて、悲しくて、憤きどうりと、やりきれなさが垣間見えた。

瞬間、小さな少年に戻ってしまったかのように見えた。

彼は、今も幼いまま、大人になれなかったのだ。

それが、過ちを犯し、償いはしたものの、大きく健康な図体のまま、仕事もなく、金もなく

ただ、時間すごさなければならない。

しかし、今、社会に出たとしても適応するための、忍耐力や知恵にも不足があるだろう。

彼は、どうやって生きていけばいいのか?

私は、心配する。

もし、彼に彼女ができたとしても、

彼は、彼女が優しければ優しいほど、母親の償いを彼女の中に求めるのではないだろうかと。

彼は、それで救われるだろうけれど、そこまで大きな女に巡り合えるだろうか、と。


彼の、不幸な元はなんなのだろうと考える。

自分の子供を見捨ててしまう男と女。

罪深いことだ。

罪深い食物で、罪深い体と、罪深い考えを作るから、不幸が創られる。


叶うことなら、彼が、正しい食物で出来上がった、正しい女性と巡り合うことを願うばかりの私でした。


                             2012/4/10 
kanaria































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最終更新日  2012年04月11日 12時43分11秒
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