早く早く 南風一
「早く早く」
小学生のころ 日々はおろか
遠足の日だろうと
いつも遅れて来る友人がいた
ようやく姿が見えてきても
ゆっくり歩くので
なかなか近づいて来なかった
「早く早く 走って来なさい」と先生が呼びかけると
当人は走っているつもりなのだろうけれど
動作が緩慢なので
歩いているのとほとんど変わりがなかった
級友たちの間からどっと笑い声が漏れるのだが
当人は全く動じない
そのうち先生も級友たちも彼はそういうものなのだと理解した
だから彼が遅刻して来ようが遠足に遅れて来ようが
みんな笑って彼を待った
その友人とは30年以上会っていないが
今も頑なにマイペースを守って生きているのだろうか
今では多分彼の方がかつての級友たちのあくせくした暮らしぶりを見て
笑っているのだろうか
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