何を勘違いして 南風一
すべてが過ぎ去って
ようやく人の心持ちに思い至っている
たとえばラブレターの中ですでにきみにプロポーズして
いることなんか
本当は確かにおかしいことに違いなかった
俺はきみの本当の姿をこれっぽっちも知らなかった
きみも俺のことをちっとも知らなかった
それからきみのお父さんからすれば
少しくらい勉強ができたことや
大学のラベルなんかどちらでも良かった
そんなことより
自分の娘が持って生まれた自分のぶにを
健やかにまっとうしてくれること
父親としてただそれだけしか望んでいなかったことに
ようやく思い至った
きみだけしかいないとか
きみと結ばれることで人生の問題がすべて解決できるとか
それ以降の人生がバラ色になるなんて
有り得なかったのに
あの頃なぜあんなふうに信じ切っていたのかな?
今なら有り得ないってことが
分かる
きみの後ろ姿を見たとき
こんな大きなお尻の娘で良かったのかな?
俺は何か勘違いしているのじゃないかな?
ふと過ぎった疑問は確かにその通りだった
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