ネオリアヤの言葉

ネオリアヤの言葉

Mへ


心の輝きや
躰の動揺が、
なるべく伝わり過ぎないよう。

なるべくふつうにビジネスの会話が
成立するよう、
眼の力を抜く。

それなのに。

あの人は
私の眼をあまりに感情もない表情で
見つめながら話をするから、
切なくて、
また動揺する。

あの人は、
どんなふうに愛する人を見つめ、
どんなふうに抱きしめるのだろう。
どんな力で。


*****


床のうえに
ばらまいた想い
左足で 散り散りにした

それがせいいっぱいの
反抗だった

あとで気づいたのは
掃いて 捨てに行くのを
忘れてたこと


*****


想い方をかえてみても、
あなたには届かないのだと知る。
自分でも気づかないほどに、
私は、
その存在に傷ついているのだと知る。

ひとりで導き出さねばならなかった終わりは、
導火線がくすぶったまま、
あなたを忘れられない現実だけを、
いまさら私に突きつけた。

忘れたいと願いつつ、
ほんとうは
忘れたくなかったのだと知る。
心がいつでもあなたへと
向かう準備ができていると知る。

あなたを忘れられずにここまできた私は、
幸せだったんだろうか。


*****


「あいつに会ったよ
またみんなで会おうな」

ひどく動揺してしまった。
動揺した自分にも驚いたから、
そのあとは放心したように、
何も話せなくなった。

あの人に、
会わないことが前提で。
あの人に、
もう二度と会わないことが前提で、
私はあの人を心の奥に葬ってきたのだと知る。

頭から布団を被り、
呪文のようにあの人の名前をつぶやいた。
オズの魔法使いに出てくる臆病ライオンみたいに、
同じ言葉を恐ろしく何百回と唱えた。


*****


呼びかける名前を変えてみても
心に描かれる姿は
いつも決まってあなたになる

そろそろきちんと描ききらないと
いつまでたっても
あなたのことだけで時間が過ぎていく

けれど
あなたを愛している限り
あなた以外の人を描くことは
私には無理だということもわかっている

何度もなんども
あなたから遠ざかってきたけれど
そのたびに
あなたを想う自分の気持ちに気づいてきた

意識して描くことは
現実なんかじゃなくて
幻想そのもの
言葉はとても隠喩的で
意識できることしか形にならない
だから真実が言葉になることなんて
ほとんどない

いつも遅れを伴ってだけ
言葉は真実を過去の足跡として残す

あなたのこと
私はいつになったら
描かなくなるんだろう
言葉になったあなたとのことは
過去のことではあるけれど
その言葉に終わりがない限り
やっぱり
あなたが私のなかで過去になることはない

あなたとのいろいろなことではなく
あなた自身が
あなたを想う私の心が
過去の記憶にならない限り
私は優しくあなたを描くことができない



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