”名も知れぬ人たちへ”・【承25】

・・・やっぱり,ストレスなのかな・・・

少し前に遡る。
今から3年前,妻のお母さんが亡くなった。
本当のお母さんではない,育ての親。だから普通の親より年齢が上だった。

通称"片川バアーサン"。同じく"片川ジーサン"。
ジーサンは,目が見えず,下半身が動かない。バーサンもあたってしまって普通の人より体が弱い。

私の妻は,ジーサンを老人ホームに長期スティさせるために一生懸命に社会福祉協議会へ働きかけていた。
何回か短期に入れてもらい,念願の長期になったとき本当に嬉しそうだった。
妻はそのときもストレスを抱えていただろう。

ただ,バーサンの方が塞ぎ始めた。
外に出なくなった,ごはんもろくに食べていない。妻はなんとかして介護認定させて老人ホームに入れようとした。
短期で入所することとなったが,少しして体調を崩し入院した。"風邪"をこじらせ"肺炎"を起こしていた。

バーサンの口癖は"こんちくしょう"ということ。私も何回も聞いた。
そんなバーサンがジーサンを残してこの世を去った。
病院の看護婦から電話がきて,"体調が悪化して今朝なくなりました"と。妻は泣きながら,バーサンのもとへ。

後で聞いた話だが,なくなる前日にバーサンと妻は喧嘩をしたとのこと。
このこともかなりのストレスになったようだ。
借家で亡骸と一夜を過ごしたが,私と妻と娘だけの通夜。本当に寂しかった。
妻は"本当に寂しい,なぜ,なぜ"と言ってオイオイ泣いた。

私は,何もしてやれなかった。慰めとバーサンの葬儀の取り仕切りくらいだった。

妻は,いろいろなストレスを抱えていた。今から考えればもう,この時から蝕まれていたのかも知れない。
私の単身赴任はバーサンがこの世を去ってから二ヶ月後だった。
そして,妻が倒れたのはバーサンの一回忌が終わった直後だった。

・・・私は妻にいったい何をしてやったのか・・・
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