”名も知れぬ人たちへ”【承30】

・・・「行ってもいいって」笑顔・・・

発表会のパンフレットが出来てきた。
華やかなで,艶やかで,幻想的。有名なバレエ団からの参加もあり大変豪勢だ。
今回は,土曜日に"ジゼル",日曜日にクラスでのモダンである。
とくに土曜日がすばらしい,リハーサルで何回か見たが見とれるの請け合いである。
"そんなバレエを,娘を"妻に見せてやりたい。
この一週間順調に推移することを願う。

水曜日と金曜日はいつものように半日休暇であるため,リハーサルに当てることが出来た。娘もその点はホッとしているようだった。
もしかして妻の関係で練習もできないかもしれないと思っていたに違いない。
まして,私が単身赴任をしているから。

さあ,当日(土曜日)昼の13時集合であった。娘を会場において,一端,病院へ行った。
もちろん妻の調子が気になっていたからだ・・・。
あまり,いいともいえないが妻は,「行きたい」と言った。
妻は,あまり長距離を歩くことができない状態だったため病院から車椅子を借りて行くことにした。

妻が車椅子で公衆の面前に出ることは,本当に辛いことだったに違いない。
昨年までは"ピンピン"していたし,手伝いもしていたのだから。
会場と病院を何度が往復しているうちに時間が近づいてきた。
「さあ,お母さん,バレエ見に行こうか」
「そうだね,行こう」と,車椅子に座った。待合室で待たせて,車を持ってくる。いつもの後部座席左側に乗せた。車椅子は,ムーブの後にちょうど入る。

バックミラーに写る妻を見て,"痩せたなぁー,辛い思いをしているんだろーな"・・・。
・・・今日のバレエは最高だろう,と・・・
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