”名も知れぬ人たちへ”【承34】

・・・妻+娘+私=不憫?・・・

バレエ発表会の後から,後半の放射線治療が始まった。
2週間の予定。
前回も書きましたが,とにかく腫瘍が小さくならないと次のステップにいけない。

このとき,すでに下腹部が"やけど"で皮膚が硬くなっていたと思う。
下痢と便秘,皮膚のやけど,背中からのチューブと体が自分のものでないような感覚に襲われたに違いない。
それでも"一生懸命に戦っていた"と看護婦さんが言う。
もちろん,娘に向かっては,一言も辛いなんて言葉を聞いたことがない。

私は,毎日のように妻へメールした。
"今日は何回目かの治療だね,調子はどうだい?"と。
なかなか返事がこない。
その付属病院は,結構携帯電話に厳しい,というか看護婦さんによるかな。見て見ぬふりをする優しい看護婦さん,見るとダメッといって電源を切らせる真面目な看護婦さん。
まあ,仕方ないのかなと思うけど,唯一の通信手段だから大目にみてもらいたい。
やっと返事がくる。
"ようやく,メール打てるよ,うん,調子はあまりよくない。治療はすすんでいるけど"と。

仕事の時間が少ないこともあって周りにも迷惑をかけていたがそのことは,一切話しをしていない。
難しい仕事であることを"たびたびメール"したが,逆に励まされた。
"ごめんね,でも仕事ガンバッテネ"と,そのメールを見て「うん,うん・・・」
と何回も頭をたてにふる。
私が"ガンバレ"と言いたいところだが,だまっていてもガンバッテイル妻への言葉として不適切。言葉が出てこない,詰まって出てこない,その時の気持ちを今でも忘れない・・・。

・・・悔しい・・・
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