”名も知れぬ人たちへ”【承39】

・・・退院,直って退院だったら・・・

本当に直って退院だったら,すごーくいいのに,でもそれは夢なんだろーな。
かなわない夢なんだなー。
そう思うと涙がスーと流れてくる。

妻はこの3ヶ月,誰よりもガンバッた,この私や娘よりも。
精神的なところ,肉体的なところ苦悩の連続だったろう。
なぜそのガンバリにご褒美がついてこないのか?
理不尽でならなかった。

妻曰く「これからは化学療法受けながらの治療だって」
続けて「でも退院できる,我が家に帰れる。うれしい」って。
私はそんな笑顔の裏には残念そうな顔が見える。

今年の夏は,気温がどんどん上昇し例年にない暑さだった。
車の周りに陽炎が見える。
ムーブのエアコンもなかなか効かない。
この日,私は休暇を取って妻の退院に備えた。

「退院おめでとう,これから迎えにいくから待っててな・・・」
前の日に”みんなにフェイスタオルやるから一枚一枚包んでもらって,退院祝い”
とメールがあり,かわいい(結構派手な色だったかな)タオルを10枚ほど包んでもらっていた。
夏休みの娘と一緒に涼しくならないムーブに乗り込む。

・・・複雑な気持ち・・・
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