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図書館で予約していたブレイディみかこさんの「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」がやっと届いた。これの1は数年前に読んだ。確か、ベストセラーになったので興味を持ったのである。みかこさんはイギリス人と結婚してイギリスに住み、労働者階級が住むという団地でイギリスの階級制度や移民に対する差別などを冷静な目でみたノンフィクションを書き上げたのである。イギリスと言えば王室程度のことしか知らない日本人は…私だけではなかったのだろう。その格差たるや、当時の私は仰天した。しかし、数年後、日本もそうなっていくとはあまり思わなかったのだけれど。
ハーフの「ぼく」は確か、最初はカトリックの私立学校に通っていたのだが、日本で言う中学の段階になって、みかこさんは底辺と言われる公立に転校させた。様々な人達と触れあってほしいという気持ちもあったし、みかこさんのご主人も労働者階級だから経済的な側面もあったのではないだろうか。
何年も前なのでかなり忘れてしまったが労働党が政権を持っていたので、貧困層にもかなり手厚い時代だった。びっくりしたのは児童虐待の定義が厳しくて、シングルマザーが育児をネグレクト気味にしていると、すぐに里親に預けられてしまうという制度だった。こどもを愛していないわけではないので、里親にこどもを連れて行かれた母親を当時哀れにすら思った、というのが当時の私の感想だった。今は保守政権なので、生活保護費もどんどん下げられて格差は広がる一方のようだ。
そんな中で「2」は思春期を迎えた「ぼく」がこの社会はどうなっているのか、感情も交えながら客観的に世の中を見ている。かなり優秀な「ぼく」だということは読んでいてわかるし、底辺校と言われる中等部でも徹底的にこどもたちに考えさせる教育をしているし、ここは日本はやはり遅れている。自分で主体的に考え、意見を言うのが当たり前の学校教育なのだ。LGBT、多様性の問題は日本の図書館でも大事にとらえ、考えさせる本を大量に用意しているが、学校教育の現場ではどうなっているのだろうか。図書館に通ってくるこどもたちはもともと勉強熱心で問題意識も高いが、学校の中でそれが多数派なのかどうか、現場にいない私にはわからない。聞こえてくるのは教員不足の実態ばかりである。
「2」を読んでいて、今回衝撃的だったのは父ちゃんの言葉だった。
「ぼく」が珍しく数学で悪い点数を取ってきた。みかこさんは何も言わなかったが、労働者階級とはいえ、穏やかで明るく、人情的な白人の父ちゃんがブチきれたのである。
「俺だってもちろん、人のことは言えない。おれも勉強がきらいだったから、成績は悪かった。だからおれが今どうなっているのか見ろ。ガタが来ている体に鞭打って一晩中ダンプを運転して、スズメの涙みたいな賃金しかもらえない。おまえにはおれのようになってほしくないから言ってるんだよ。頼むからおれみたいにはなるな」
「ぼく」はこう言われて泣いた。怒られたからではない。「おれのようになるな」とそういうことをこどもに言わなきゃならない父ちゃんの気持ちを考えるとたまらなかったのである。「労働者階級のもののあわれ」を12才にしてわからなければ、ならなかったのだ。
私はハッとした。
「私のようにならないで」と願った子育て。父ちゃんの気持ちが痛いほどわかる。
私だってそう思って子育てしてたんじゃないのか。
何とも胸にせまる言葉だった
続編に期待したい。
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