Simple Life

Simple Life

2005.09.23
XML
カテゴリ: 自作の小説
はなれの台所は、さっきまでいた居間と、廊下をはさんで、ちょうど反対側にあった。

台所のドアは、全面曇りガラスで、真鍮のノブを回して、中に入った。

     「この家、かわってるね。」

     「へっ?あはははっ。」

コウ君が、今日、初めて、大きな声を出して笑った。

     「かわってるって、何が?」

     「だって、天井はすごく高いし、部屋は、赤い廊下で、つながってるし。それに、デザインが。なんか。」



     「化け物屋敷?」

     「そんなこと、言ってないよ。」



     「ほら、美術で習った、アール・デコとかいうの。ああいう感じが、ちょっと、する。」

     「この辺の中学は、良く、外国人の先生が、赴任して来るんだ。昔は、そういう人たちを、受け入れる家主が、なかなか、いなかったらしくて。じいちゃんが若い頃、このはなれを建てて、そういう先生たちに、貸していたらしい。」

     「ふうん。そうか。」

なる程と、思った。それなら、古い家なのに、こんなに天井が高いのは、うなづける。

     「じいちゃんが、おととし、脳いっ血で倒れて。」

     (えっ?)

     「看病は、自分でするって、ばあちゃんが言い出して。それで、もう、ここ物置きみたいに、なってたんだけど、ばあちゃんと、じいちゃんだけ、こっちに移って。だけど、今年の春に、じいちゃんが、死んで。」

     (そうだったんだ。)

コウ君は、小皿やら、お椀やらを出しながら、手を休めずに、喋り続けている。


    「俺も、春には、親と色々あって。だから、ばあちゃんが、本家に戻ろうとしないから、ばあちゃんが淋しいだろうからって、理由こじつけて、俺が、5月に、はなれに移って来た。」




テーブルの上には、美味しそうな、ちらし寿司が、のっていた。




    「これ、暖め直そうか。」

    「うん。頼む。」


とても、自然に、二人が、働いていた。

もう、何度も、このはなれに遊びに来たことがあるような、そんな、錯覚を覚えた。








          つづく












banner


(若葉は、続き物です。前のお話は、カテゴリの「自作の小説」に入っています。^^)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005.12.04 11:32:44
[自作の小説] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: