Laub🍃

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2012.09.07
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カテゴリ: .1次メモ

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 ごぼごぼごぼと何かが流れて引っ張られていく感触。

 目の前の柾目ちゃんが急に遠ざかる。最後に触れた余韻も一瞬で消え失せた。

「っ……っっっ……」


 声が、出ない。いつも見る夢の中と同じ、走っているのに走れないようなあのもどかしさ。

 ちかちかと目の前が明滅して、昔の事が浮かぶ、ぐるぐるぐるぐる渦を巻く。

柾目の事はもう諦めたらどうだと言う柾目の家族。
僕と同じような目的を持った、けれど僕よりも憔悴した同僚。
出ない成功例、テストの志願者の絶望。



 夢の中に入り込んだ彼らは皆一様に門前払いを喰らったかそれとも夢に飲み込まれて帰って来られないか帰ってきても以後ずっと不安定か――――連れ戻した人間が数日後に、もっと手の届かない所に行ってしまって、絶望するか。

 僕だってそうならないとは限らない限らないでもどうすればいい今更どうにも出来ない他の方法はない柾目ちゃんの為に頑張らなくてどうするんだでなきゃ僕は生きていられない生きている意味がない頑張れ今更戻れない戻らないだから頑張らなくちゃ連れ戻そうそうだ連れ戻せればいいんだそうして手の届かない所になんて行かせない逝かせないずっとずっと僕が
















混色の思考が回り溶けて絵の具を混ぜたような汚い緑が黒と緑ともっと複雑な間の色に分かれて解けて秩序を取り戻して。





「……草原?」


ぽつりとつぶやいた僕の目の前には、
背の高い草でぐるりと取り囲まれた夜空があった。







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最終更新日  2015.06.12 01:19:09
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