2006/03/05
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カテゴリ: *TOKYO*

春の訪れが目の前に来た気配がする今日このごろ。久しぶりに外出してみることにしました。
表参道ヒルズ 」。


2月のオープン以来、それはもう大変な混雑だと聞いてはいましたが、3月になっても相変わらず客足は衰えていませんでした。装いを新たにした地下鉄表参道駅の出口から続く人の波は、そのまま表参道ヒルズまで吸い込まれ、順路の定められた道をぞろぞろと進む客の大群は、まるで蟻が巣の中でうごめいているようでした。当分、この賑わいは続くことでしょう。


表参道の風景に溶け込んできた「同潤会アパート」の建て替えを機に作られた「表参道ヒルズ」は、そのコンセプトを「記憶に刻まれた風景を、次の世代へ継承する」、表参道の街の再生と掲げました。

表参道ヒルズの最大の特徴である「表参道と同じ傾斜を館内に作った」という通路。実物は想像よりも小さくて、こんなに狭い空間だったのかと思いました。しかし、地上3階から地下3階まで6層もある縦の厚みは、想像よりも奥深く、1つの階を移動するのに1往復必要な感覚の坂道を歩いていくのは、思ったより距離があって大変でした。


表参道ヒルズの見所は、なんといっても建物です。名建築家・安藤忠雄氏の作品が、東京で体感できる貴重な機会でもあります。
最初の印象は、造形的に美しい建築だと思いました。壁をガラスで覆う建築は最近頻出していますが、その中でも他の建築にはない大胆な造形。それでいて全体が周囲と溶け込むような、落ち着いたボリュームが配慮されています。

また、近頃の再開発ビルをいくつも見る中で、それらに比べて圧倒的に丁寧な設計をしているように感じられました。柱1つ、ガラス1つを見ても、何か意図されるものに深さを感じるのです。コンクリート打ちっぱなしの壁面は氏の特徴ですが、その仕上げは芸術的に美しく、メタルな柱と合わせて無機質な雰囲気を作っています。しかしそれは、各店舗の魅力を最大限に引き出すための、無垢なベースなのだと感じました。ただし、コンクリートの冷たさが温かさに変わるまでに、どれほどの年月が必要なのかはわかりません。

この建物の地下3階から地上に上ってくる所に、1つの階段が設置されています。それはまさに神社にある階段のような、リアルな石作りになっていて、その素材に本物感を感じて、とても感動させられました。氏はここに1つの屋外の街を作り、表参道の長い歴史を館内で再現することにまで思いを馳せたのだろうと感じました。


しかし、結論として、表参道ヒルズは私にとって違和感を感じるものでありました。
併設された同潤館に残る同潤会アパートの記憶-それは綺麗に修復され、新しいガラスの建物に合うように手を加えられたものは、そこにあった同潤会アパートではありませんでした。

私が表参道のこの場所で見ていたもの-それは、大正時代からその場にあり続け、その建物で丁寧に人が生きた歴史であり、記憶だったのです。美しい木漏れ日の合間から、静かに時を刻む建物と人々の息遣いこそ、愛すべき表参道の風景だったと。
そのかすかな物体的な触感がなく、ただ美しく飾られた表参道ヒルズは、きらびやかだったけどとても硬いものだった。そして新しさで装われたものは、時を経るに従って陳腐化してしまったりもする。あの建物はどうやって、我々の時間を吸収してくれるのだろうか。そして何年か経た後に、どのような風景を表してくれるだろうか。
そもそも、大規模な再開発プロジェクトに、ユーザーの思いを刻み込んでいくことのできる余地というのは、残されているのだろうか?
そんなことを考えながら、裏路地からこの建物を後にしたのでした。

Copyright (c) nyanzo 2006

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Last updated  2006/03/05 11:41:43 PM
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