りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年09月09日
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今日の日記




「ある女の話:アヤカ22」



タカダくんと別れた。

連絡先を聞かれなかった。
これって…。
絵画教室やエリの家で、
そのうち会えるからってことだろうか?


  アヤちゃん
  俺のこと好きになってよ


男はズルイな…。

呪文みたいな口説き文句を囁いたくせに、
そのまま放置。

魔法にかかって無いとでも思ってるんだろうか?
かけられたこっちは戸惑ってばかりだよ。

今までお互いにあった何かが壊れちゃったような気がした。
でも、壊れて無いのか確認さえできない。

それがジワジワと心に広がる。

連絡先聞けば良かったのかな…。
どうしていいのかわからない。

それでも、
あの調子だと、以前と同じように振舞うんだろうな。

落ち着かない気持ちをどうにかしたくて、
深呼吸する。

ぼんやりと、寝転がってるうちに、
ある人の声が聞きたくなって、
私は電話をかけた。

かなり迷って。

「はい。」

懐かしい声が聞こえた。
ハキハキした好青年を思わせる、
マノくんの声。

「アヤカだけど。」

「おう!どうしたんだよ!
久しぶりじゃん。」

思った通りのリアクションだった。
いつも私を助けてくれた声。

「うん。元気かな~と思って。
元気?」

「ああ。そっちはどうだよ?
彼氏できた?」

「ううん。
そっちは?」

「俺?
今付き合ってる女がいるよ。
結婚しようと思ってる。」

「あ…そうなんだ。」

一瞬、すごくガッカリしてる自分がいた。
何があっても、マノくんだけは、
ずっと自分のこと想っていてくれるんじゃないか?って、
心のどこかで思っていたんだな…って、
そのことがよくわかった。

「あ、でも、私も好きな人ならいるんだ。
まだどうなるかわからないけど。」

私は何を言ってるんだろう?
タカダくんのこと、本当にそう思ってるんだか、
マノくんの言葉に思わず返してしまっていた。

でもね、
後押しして欲しいの。
私には、もう誰もいないんだって、
思い知らせて欲しいの。

「そっか。
それなら良かった。
うまく行くといいな。」

優しいマノくんの言葉に、
自分の強がりがバカバカしく思えた。
つい、心の中を話しそうになる。

大事な人を、もしかしたら無くしちゃったかもしれない。
怖くてたまらないの。
落ち着かなくて、マノくんに頼っちゃったよ。

「どうしたんだよ?
元気無いな。
何かあったのか?
そっち行こうか?」

心配してくれるマノくんの様子がつい嬉しくなってしまう。

「ううん。いいよ。彼女に悪いし。」

「彼女は彼女だよ。
俺は俺だし、
俺とアヤカとの付き合いには関係無いじゃん。」

私はふふふと笑った。
ちょっと泣きそうになった。

「相変わらずそんなこと言ってるの?
彼女に嫌がられちゃうよ。」

「大丈夫だって。
大丈夫と思える相手にようやく会えたって言うか、
そうじゃなきゃ結婚なんか考えないよ。
それに、こんな俺でも大丈夫じゃなければ、
多分これから先も無理だよ。」

「そうなんだ。」

ようやくマノくんはそんな相手に巡り会えたんだな、って思った。
何だか羨ましい。

「アヤカのお陰って言うか…」

「え?」

「オマエがあの時、キッパリ俺に正直な気持ち話してくれたから、
オマエがいなくなって淋しくなっちゃったから、
だから俺も真剣になれるヤツ探せたんだと思う。
だから、多分良かったんだよ。」

「そっか。
それなら良かったよ。」

「まあ、…好きって言ってもらえたんだから、
強引なことしちゃっても良かったのかもな…って、
今はちょっと後悔してるけどな。」

私は笑ってバカじゃん!って返事した。

「ありがとう、元気出た。」

「お、そうか?」

「マノくんも元気でね。彼女と幸せになってね。」

「何だよ、最後のお別れみたいに。
何かあったら絶対言えよ!
強がらないで、俺使え。
いつでも連絡していーから。
じゃな!」

笑いながら、
いつもみたいにマノくんが電話を切った。
胸の中に大きな穴が空いちゃったみたいで、
ますます空しい気持ちになった。

マノくんに電話したりして、
私はどうするつもりだったのだろう?

私は自分を取り戻したくて、
電話の相手にマノくんを選んだんだと思った。
私ってズルイ。
心のどこかで、マノくんの声を聞けば、
自分を慰められると思ってたんだ。

利用しようとしたんだと思うと、
自分への嫌悪感でいっぱいになった。
なのに、マノくんはまだ私を大事にしてくれていた。

バカだな。
バカだよ、私は。

涙がポロポロ出てきた。

自分のこと、泣くほど好きになってくれた、
大事な存在を、
私は絶対壊せないだろうと思った。

マノくんに電話して良かったと思った。
大丈夫。
私は大丈夫。

タカダくんだって、
もしも、あのことで慰めになったなら、
それでいいじゃん。

きっと、こんな淋しい気持ちは今だけだ。
時間が経てば、
ツカちゃんやマノくんの時と同じように、
きっと心から薄れて、
思い出になってくれるはず。

いつか、いろんなことがあったなぁ~って、
遠い映画を観たみたいに、
思えるようになるはず…。

私は涙を拭いて、
水を飲みに行こうと思った。
なのに立ち上がれない。

その時電話が鳴った。

「タカダですけど…あの…
アヤちゃん?」

心臓がキュッと跳ねた気がした。
淋しかった気持ちが、
一瞬で和らいでいくのがわかる。

「うん。」

「ごめん、突然。
ヨッちゃんから前に番号聞いたことあって。
驚いた?」

「うん。」

「部屋の窓開けてくれる?」

開けたら、
外灯の下で、携帯を持ったタカダくんが手を振ってた。
やっほーって感じで。

「携帯買ってきちゃった。
一番最初にアヤちゃんにかけたくなっちゃって。
そしたら、顔も見たくなっちゃってさ。」

へへって、タカダくんが笑った。

「待ってて、外出る。」

「うん。」

外に慌てて出たら、タカダくんの笑顔が急に曇った。

「どしたの?泣いてた?」

「え?あ…、ううん。泣いてないよ。」

タカダくんがいきなり私を抱き締めた。

「ホント?ホントに泣いてなかった?」

「うん…。
ううん。」

「どっちなの?」

顔を覗きこんで、
タカダくんが笑いながら聞く。

「泣いてた。
連絡先知らないし、不安になって、
淋しくなっちゃって。」

「ごめんね。」

「うん…。」

「ほっといたら、ヨッちゃんやエリちゃんに言いつけるでしょ?」

「そんなことしないよ。」

「ホント?」

「うん…。多分。…どうかな。」

「ほら、やっぱりそうじゃん。」

タカダくんはそう言って、笑って、
ずっと私を離そうとしなかった。
時々髪を撫でた。

あ~、ホントに私は現金だ。
こんなことで安心しちゃうなんて。

でも、タカダくんはもうすぐ、
この街から去る。

いろんなモノを振りきるために。

私を置いて。







続きはまた明日

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最終更新日  2009年09月09日 18時43分09秒
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