りらっくママの日々

りらっくママの日々

2009年09月10日
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今日の日記




「ある女の話:アヤカ23」



タカダくんがレトロに手紙をくれるから。

あ!今日は入ってる!
タカダヒロトって名前が書いてあった。

中に入ってるのは写真と絵。

写真の裏側に短くメッセージが書いてある。

男ばっかで、真っ赤な顔した人が何人もいる。
居酒屋?

「同期で飲んだ」

「コイツ、同じ部署のバカ」

絶対女の子もいるはずなのに、
ちゃんと写って無いの送ってるんだろな。

桜の写真があった。
ビルに囲まれた公園に一つポツンと。

「アヤちゃんに会いたいなー」

その桜でも描いたのか、
タカダくんっぽい絵が描いてあった。

ふううううん。
ちょっと顔がニヤける。

私も現像しておいた写真を出す。

「私の職場」

「仲良しのパートさん」

「お昼の友達」

私を写したのが男の社員さんだって知ったらヤキモチ焼くかなぁ?
しかも食事誘われてるし。
まあ、既婚者がノリで言ってるだけなんだけど。

会えた時に暴露してみよう。
タカダくんがうろたえるところが見てみたい。

うふふん、と笑って、私は封筒に写真を入れた。
ちょっと思いついた絵も描いた。

「私もタカダくんに早く会いたい~!」
ハートマーク!
赤に塗ってみた。
キスマークに見えるように、キスマークを描いて見た。
驚くかな?
驚け!驚け!

バッカだわ~。
こんなのメールで送ればすぐなのに。

メールはメールで送るけど、
この手紙って言うのがなかなか楽しいと最近知った。

  今日手紙届いたよ。
  返事出した~!

ショートメールを出す。

  ほんと?
  楽しみにしてる!

夜に返事が返ってくる。
会えない時間も楽しいなんて~、
何てこと~?

数日後にメールで返事が来る。

  あのキスマーク何?!
  本物?
  ドキドキもんです!

あはははは!って画面を見て笑う。

  本物はもっとベタベタしてて、紙に移っちゃいます~!

すぐに返事が来た。

  今度は本物にして!


ゴールデンウィークは、
タカダくんが一人暮らししてる街に呼んでもらった。

親には、会社の友達と旅行って言って。
多分もうバレバレなんだろうけど、
親もいちいちツッコンで来ない。

彼氏の一人でもいない方が心配とか言ってた。
でもデキちゃった婚は無しね!
って、釘は刺されてる。

スーパーに行って、
いっしょにご飯作って食べたり、
近所を案内してもらったりした。

近くに堤防があって、
そこで二人でぼんやりと川を眺めた。

故郷の川とまた違うね。
でも、繋がってるのかもしれないね。
何て言いながら。

繁華街の方に行って、映画観てみたり、
美味しいって言うラーメン屋に行ったり、
家の中で転がってたり、
気が向いたら抱き合ったり、
本当にアッと言う間だった。

帰りの電車に乗るのが淋しかった。
でも笑顔で手を振る。
最後が泣いてる顔なんて嫌だもんね。

扉が閉まると、またずっと会えないんだ…って思った。
それ位、私たちの距離は遠い。
すぐに会える距離じゃない。

風景が変わって行くのを見て、
離れてくんだと思った。

淋しい。

淋しい。


それ位遠くにタカダくんは行ってしまったんだ。


手紙のやり取りが続いて、
私はウキウキする。
もうすぐ夏休み。

タカダくんがお盆に帰省することになってる。
私の休みとちょっとズレるので、
後半は私がタカダくんのところに行くことにした。

真夏の遊園地は混んでいた。
ほとんどが家族連れだった。
プールも沢山の人がいた。

木陰にビニールシートを置けて良かった。
日差しがジリジリと痛い。

「夏はこの遊園地、こんなに混んでたんだね。」

タカダくんが寝転がりながら言う。
地元の、
子供の頃みんなで来た遊園地。

「そうだね。
あの時は春休みだったっけ?
こんなに混んでなかったよね。
バイキングなんて、連続で乗れたし。
ジェットコースターは連続12回記録を作ったもんね。」

そうそう!ってタカダくんがあははは~って笑う。

「今はもう無理だな。
胃が絶対ひっくり返る。」

「うん。アレって何でだろうね?
子供の頃は全然平気だったのにね!」

「後でジェットコースターに12回って書いちゃったの、
確認しに行って見る?」

「うん。」

冷やしたポカリをゴクゴク飲みながら言った。

「あ~、そう言えばさぁ~、
あの時だ。
アヤちゃんのこと、ちゃんと見るようになったの。」

「え?なあに、それ?」

「いやさ、それまでは、アヤちゃんのこと、
ただのヨッちゃんの、ねーちゃんの友達位にしか見てなかったんだけどさ。
ほら、覚えてる?
俺らの近所で駆け落ち騒ぎがあったの。」

「ああ、うん。
どっかの家のお父さんとお母さんが駆け落ちしちゃったやつね。
お母さんの方、私のクラスの子だったもんね。
覚えてるよ。」

「ここに来た時さ、その話が出たんだよ。
みんなで昼食べてた時に。
で、ヨッちゃんが、信じらんねーって。
親は親だと思ってたって。
自分ちじゃ有り得ないとか何とか。
で、エリちゃんも、
親って男とか女とかって感じしないとかって言っててさ、
あー、この家は幸せそうだなって、俺思ってたんだよね。」

私もぼんやり覚えてる。
その時のこと。
同じこと思ったから。

「エリんちは、見合いとかって話だったからね。
親がHしてるなんて考えられないって言ってたよ。」

「あ、それ俺も聞いた。
でさ、その時にみんながそうだよね~って賛成する中、
アヤちゃんが言ったんだよね、ボソッと。
男と女じゃなきゃ私達が生まれること無いんだから、
有り得るんじゃないの~って。」

私はあははって笑った。
よく覚えてるねーって。

「うん、俺も同じこと思ってたからさ。
うち、あの頃親が離婚しそうだったんだよ。
母親が家出して戻ってきたことあった。
どっちについてくる?とか言われて、泣きそうだったもんね。
親って家族だけど、夫婦は他人なんだって、
その時すっげー思ったよ。」

タカダくんもポカリを飲んで続ける。

「アヤちゃんが言ったことで、
ちょっとこの人はわかるんじゃないかな?って思ったんだよね。
俺が思うこととか。」

へぇ~って私は照れて、
またポカリを飲んだ。

マセたこと言ってたもんだ。

「子供のくせに、生意気なこと言ってたんだね、私。」

「でも、ちょっと嬉しかったよ。
自分だけ大人にならなきゃいけないような気がして、
周りのみんなが無邪気に見えて、
すごく羨ましかったから。
アヤちゃんも俺と同じ気持ちになったことあるのかな?って。」

「うん…。
そんな感じあるかな…。
まあ、うちも離婚しそうになったこと何度もあるから。」

「ふーん、やっぱそうなんだ?」

「うん。」

お互い顔を見合わせて笑った。

「可笑しいね。
小学生の頃にどうなのかな?って思ってたことが、
今になって解けるなんてね?」

「あの頃は聞けなかったからね~。」

「ここに来なければ思い出さなかったしね。」

不思議な気持ちになって、
またプールで体を冷やすことにした。
暑い。

あの頃タカダくんがそんなふうに思ってたなんて、
私は全然知らなかった。

いつもは大人びて見えるタカダくんが、
小さな少年のように思えた。






続きはまた明日

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最終更新日  2009年09月17日 18時19分16秒
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