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June 19, 2009
悼む人
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「悼む人」
天童 荒太
文藝春秋
忘れ去られた被害者、その人を確かに記憶したい、愛したこと、愛されたこと、感謝されたこと
その人は、確かにこの世に生をいききった。だからこそ、この心にしっかりと記憶する。
静人の過去の人生がそうさせたとはいえ、彼の心からの被害者を心に留めるという、その崇高な気持ちが、
時として、人に受け入れなくても、自己のみにとらえて離さない被害者への思い、
人は、彼を悼む人と呼ぶ、多くの人は、精神的に病んでいると思う、あるいは何かの宗教団体かと思う。
彼が悼む事で、嫌悪感を示す人もいる。それでも、彼の悼む行為は、やがて理解する人も現れる。
彼の不可思議な行為を、すべて理解した母、ガンに侵されても死をむかえる間際まで、病院の厄介にならずに、
自宅でその強い意志で、自己を失うことなく、人生をまっとうしていこうとする。それを支える家族の暖かさ、優しさ
「悼む人」静人を中心に、かかわっていく人々のそれぞれの葛藤、
マスコミで事件、事故は日々伝えられるが、加害者の罪を通して、加害者自身は、私たちも多少なりとも覚えているが、
被害者のことと言えば、まったく知らせられないし、だから記憶にもとどめない。加害者の過去の経路は知らされても、
被害者の生前の人々との係わり合いには、めもくれない。
被害者が誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されたか、知るよしもない。
一方、家族や、多くの人々に惜しまれながら、死んでゆく人たちもいる。
平等にこの世に生を受けたのに、死は平等にあたえられない。
だからこそ、静人のように、死そのものに区別なく、受け入れ、記憶に留めてくれる人がいれば、安らかな死そのものを受け入れる
事ができる。
この本は、私に、忘れ去られる死そのものを、死だけに孤立せずに、その死を通して、生前の生を、その人が生ききった人生そのものを
考えさせられることをあらためて思い起こさせる事を、知らされた。
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Last updated June 19, 2009 11:33:11 PM
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