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千菊丸2151 @ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
mifess @ お元気ですか 2012/03/01 仙人草21さん >その後、記事の掲載が進…
仙人草21 @ こんばんは。    mifessさんへ お元気でお過ごし…
mifess @ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
仙人草21 @ kyonkyonさん、こんにちは! いつも温かいコメント、ありがとうござい…

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俳ジャッ句      耀梨(ようり)さん
Nov 18, 2008
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ぼくは、少し前からイケのことを友だちだとは思えなくなっていたのだ。イケの言動に振り

回されていることが、ぼくの気持ちを暗くするようになっていったからだ。

イケと一緒にいないことの方が、落ち着いていられた。ちょっとは、寂しかったけれど。

相談したくても、どうせ、そこにイケはいつもいなかった。

そして、ぼくに、東京に帰れとまで、言ったのだ。

 今、イケが必死に護ろうとした野島さんは、もう、いない。

イケはどんな気持ちでいるのだろう。どんな気持ちで見送ったのだろう。いてほしかった野島

さんがいなくなり、帰ってほしかったぼくがしっかりここに、いる。

 ぼくは、どんなに大変なことをしでかそうとしたかをまだ、本当には分かっていなかった。



ぼくが自分のしたことに、慄然となるのは、この何週間か後のことだ。

 今ぼくは、何だか、夢の中にいるような気がして仕方なかった。踏みしめている大地がぐに

ゃぐにゃと、揺れる。まるでゴムでできた、つり橋の上にいるようだった。

「お前、いつまでそこにいる気なんだよ。こっちへ来いよ。そのまま、這って来い。落ちるか

ら、立ち上がるんじゃないぜ。ヤベェ、立ち上がるなって言ったろ!這って来い!ルイ、這っ

てくるんだよッ。お前、使えねぇ奴だよな、まったく、よー」

 ぼくは、這っているのに、ふらついている。だから思わず、立ち上がろうとしたのだ。

「アホ!立ち上がるなって言ったろ!分からね―奴だな、お前。下を見るんじゃねーって。こ

っちを見ろ。こっちだよ、こっち」

 イケは、必死に怒鳴っている。

ぼくは、よろよろと座り込んだ。そして深く呼吸した。



波間に、大きな花の形をした白い何かが揺れているのが、目の端に見えたような、気がした。

 ぼくは息を止めて、必死で這いながら、イケのいる方に向かった。

ぼくは、そのまま夢中で這った。

ぼくは、やっとゴムのつり橋を渡りきったのだ。

膝小僧が擦り剥けて、血が滲んでいた。ハーパンの裾も破れていた。



「イケ、どうしたの?血、出てるよッ」

「ゲッ、お前のセイに決まってるだろッ。お前を力任せに引っ張りあげてよォ。弾み食らって

よ。思いっきり、ここまで飛ばされたんだよ。もしかして、お前、柔道三段だったのかよ?で

も、よ。オレの方が強いからよ、かすり傷で済んだんだけどな。でも、ちょっとは、痛てぇ。

あはは。サッカーじゃ、ケンカ強くならねぇからよ。逃げ足は速くなるけど、な。二人で柔道

でもやるかぁ?やられそうになったら、やり返せるし、な?マジで、よ。オレは、殺されたっ

て死なねぇけどよ。それにしても、痛てぇ。やっぱり、よォ」

 イケは、どうしてこんなに強いんだろう。それに、明るい。

自分に負けないと言うのは、こう言うことなのだろうか。

ぼくも、どうしたらイケのように、強くなれるのだろう。強くなりたい。そして、自分に負け

たくない。

 もう、ぼくは、こんなこと、二度としないんだ!

イケのように、殺されたって死なないようになるんだ。

 柔道。ぼくもイケも習ったことはない。

「イケ、ケンカ強くなるための柔道じゃ、ぼく嫌だけど、さ。マジで柔道習う気ある?」

「でもよ。金、ねえしな。親父に習いてぇなんて、言えねえし、よ。もう、オレ。自分の金

も、全部使ってしまったしよ。オレのために使ったんじゃなくてよォ。仲間のために使ったん

ぜ、もったいねえ話だぜ。まったく、よ」

「えッ?イケ、そんなことまでしてたんだ。ダメだよ」

「まあな。まあ、そんなところだ」

「イケ。もう、あんな奴らと付き合うの、止めろよッ」

「まあな。考えてみるからよォ。もう、帰ろうぜ。無限岬にいると、死のうなんて思わなくた

って、死にたくなってくるぜ。危ねえ、危ねえ。分かりたくもねえ、アホな、ルイの気持ちが

分かってしまうからよ」

 イケは、憎まれ口をきく。

「ぼくだって、分かってもらいたくも、ないよッ」

「オイ、オイ。命の恩人に向かって、それはないだろ。お前、今頃、海の底だぞ。二度とやろ

うとしたら、もう絶対、知らないからな!オレは、もう助けないぞッ。(もし、二度もやった

ら)後はもう、人魚と友だちになるんだなッ」

「うん。分かったよ!分かった!あ、そうだ!イケ!さっきさ。海に白い大きな花みたいなの

が浮かんでいた気がするんだ。何なのか、確かめてみようよ」

「花?何だよ、ソレ。どっかの国から漂流して来たプラ(スティック)に決まってんじゃねー

の?プラゴミだろ?プラゴミ。もう、行くべ。こんな所には、いられねー」

「イケ、本物の花ってこと、ないかな?」

「ねー、ねー。あり得ねー。ルイ、行くぞ」

 イケは、足を引きずりながら、帰りはじめてしまった。

                              つづく 













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Last updated  Nov 18, 2008 02:36:41 PM
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