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千菊丸2151 @ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
mifess @ お元気ですか 2012/03/01 仙人草21さん >その後、記事の掲載が進…
仙人草21 @ こんばんは。    mifessさんへ お元気でお過ごし…
mifess @ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
仙人草21 @ kyonkyonさん、こんにちは! いつも温かいコメント、ありがとうござい…

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俳ジャッ句      耀梨(ようり)さん
Jan 23, 2010
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 おじいちゃんに、問い詰められても、本当のことは言えない。

嘘をついて、おじいちゃんを一時的に納得させるのはできないことじゃないけど、とても嫌な

ことだ。

「おじいちゃんに、嘘をつきたくないから、今はまだ言えない。言えるようになるまで、ぼく

を信じて待って」と、言うしかない。

今度だけは、手ごわい気がするけど、どんなに考えてもそれしかないんだ。

そう決心しても、ぼくの気持ちは振り子のように揺れる。

おじいちゃんの前に出た時のことを、どきどきしながら想像してしまうのだ。

自分の気持ちを、しっかり言いきれるだろうかって。



どんなにじたばたしても、残されているのは、それだけだ。

 逃げたくても逃げられない。

逃げずに、当たっていくには、どうすればいいんだろう。

あ、ぼくに欠けているもの、ある!

今、ぼくに足らないもの。

それは、勇気なんじゃない?当たっていく勇気なんだよ!

勇気がなかったら、イケと一緒になんか戦えないに決まってる。

意気地なしのぼくが、心の奥に眠っている(そう信じたい!)勇気を呼び覚ましていけばいい

んだ!

ぼくは、何だか、一瞬熱くなったような気がした。この熱さが冷めきらないうちに、ぼくは家

に帰ろうと思った。



もう、正面から当たるしかない。

勇気、ゆうき、ユウキ、ぼくは小声で言い続けた。

そして、海に咲く花を、思った。



 家に帰ると、牧野先生が来ていた。

おじいちゃんと、話している。



いつも、こういう状態で聞いてしまうことが、ぼくの苦しみを生んできたからだ。

「ただいまぁ!」、ぼくは先ず、大きな声で言ってしまった。

おじいちゃんと先生は、話しをぴたりと止めた。

ただいまぁ、ぼくはもう一度そう言って、居間に入った。

「ルイ。池上くんはどうしたんだい?先生も、待ってて下さったんだよ」

 おじいちゃんの顔は穏やかだった。ぼくの気持ちは、少しだけ落ち着いた。

「イケは、家に帰ったよ。親父が心配だからって。おじいちゃんによろしくって。ありがとう

と、言ってくれって言ってた」

「後から来るのか、池上くんは?」

「来ないよ。きっと、来ないと思う」

「何だ、来ないのか」

 おじいちゃんは残念そうに、頭の後ろに手を当てて言った。そして、すまなそうに、先生を

見た。

「池上くんは、父一人子一人なんです。夕食も池上くんが作ったりしてて。だから、きっと来

られないのかもしれないんです」

 牧野先生は、自分の手元に視線を落としてそう言った。

                           つづく














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Last updated  Jan 24, 2010 12:59:05 AM
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