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千菊丸2151 @ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
mifess @ お元気ですか 2012/03/01 仙人草21さん >その後、記事の掲載が進…
仙人草21 @ こんばんは。    mifessさんへ お元気でお過ごし…
mifess @ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
仙人草21 @ kyonkyonさん、こんにちは! いつも温かいコメント、ありがとうござい…

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Feb 16, 2010
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ――イケ、そんなのないよッ。何だよッ。何で一人で行っちゃうんだよォ。ぼくを、バカに

すんなよ、イケったら!――

 ぼくは、海の草原を目指した。

走った。走った。

絶対に奴らは、無限岬には呼び出さないと思った。

さすがに、奴らも、無限岬は恐ろしいはずだ。

不毛の岬、無限岬。

人を寄せつけない、荒涼とした岬。

激しい風を呼びつけ、縦横に蹴散らすことを命じ、大王のように君臨している岬。



ぼくたちが、変わっていかなければならないこと。

変わらずに守っていかなければならないこと。それを教えてくれた(伝説の花に会えた)大切

な場所。

誰にも行ってもらいたくない場所。

厳しく神聖な場所。

見えない扉をつけて、鍵をかけておきたい場所だ。

 奴らは、そんな所には、呼び出さないはずだ。

 ぼくは、目立たないように遠回りをした。イケの呼び出された(はずの)、海の草原へ。

話し合いで、決着がつくのだろうか。それは、やっぱりない!

殴り合いになってしまうのだろうか。

奴らは、何人来るのだろうか。



らないのだ!

ぼくの体を、寒くて、黒々とした何かが駆け抜けていった。

ぼくは恐怖の波を押しのけて、必死に走った。走らなければ、ぼくは自分に負けそうな気がし

た。

――イケーッ、今、行くからぁ。負けるなよォ、イケーッ。加勢するからぁ!――



ぼくの弱い心は、時々、自分だけを守ろうとする道を選ぼうとするのだ。

 ぼくは、下の方から草原に行った。声がしない。耳を澄ました。

やっぱり、誰の声もしない。

ぼくは少しずつ上に上っていき、草の間からそおっと覗いた。

誰も、いない!どうして!何で!

ぼくは、上がりきって見回した。

「イケッ、いるのッ?殴られたッ?怪我してるッ?イケ、いたら返事して!イケ、イケ!」

 返事はなかった。ぼくは、草の中を必死で探し回った。イケが倒れていないかと、思って。

イケはいなかった!奴らもいなかった。

ここじゃ、なかったのだろうか。

ぼくは、はっとして海を覗いた。覗き回した。

人の影はなかった。

――そうだよ、そんなはずないんだ。崖下に呼び出されるなんてこと、あるもんか――

 イケはどこに呼び出されたのだろう。イケはどこにいるのだろう。

奴らは、イケをどこに呼び出したのだろう。

イケは、どうなっただろう。

大丈夫、だろうか。

ぼくは、焦った。ぼくは、どこへ行けばいいのだろう。イケはどこにいるのだろう!

ぼくの心臓が、どくッ、どくッと怒鳴っている。息苦しくなる。

イケは、何故ここにいないんだ!

きりきりと追い立てられるのにぼくは、座り込んでしまった。

奴らは、人の来ない所に、イケを呼び出しているはずだ。それは、どこ?分からない。ぼく

は、ここしか知らないのだ。まさか、無限岬?!

 その時。

――もう、いいんじゃないの?ぼくは、懸命にイケを捜そうとした。

やるだけのことは、やったんだから。イケは、どこにいるか分からないんだし。仕方ないんじ

ゃないの。イケだって、ぼくの助けを断ったんだから。一人で戦うって言ったんだし。余計な

ことしない方がいいよ。イケを捜すの、諦めた方がいいよ――

 ぼくは、愕然として自分自身の声をきいていた。

思わず目を閉じてしまった。

海に咲く花が、ゆらゆらと遠ざかっていくのが見えたような気がした。

ぼくは、ハッとして立ち上がった。 

                           つづく





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Last updated  Feb 16, 2010 11:10:30 PM
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