児童小説

児童小説

PR

Freepage List

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

千菊丸2151 @ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
mifess @ お元気ですか 2012/03/01 仙人草21さん >その後、記事の掲載が進…
仙人草21 @ こんばんは。    mifessさんへ お元気でお過ごし…
mifess @ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
仙人草21 @ kyonkyonさん、こんにちは! いつも温かいコメント、ありがとうござい…

Favorite Blog

おどろきの桃の声 New! ミーシャ1225さん

皮はぐ者 ミシェル・… 千菊丸2151さん

斑鳩町と藤原宮跡の… リュウちゃん6796さん

これも圧巻です。『… kyonkyon727さん

俳ジャッ句      耀梨(ようり)さん
Nov 24, 2010
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 先生は、何をしたらいいのかを考えてくれないかなと、言った。どんな小さなことでも構わな

いからとも、言った。

笑顔だったけれど声と目に、真剣な迫力があった。途端にぼくは、重い荷物を背負ってしまった

のではないかと、思った。

急かされているような、追われているような落ち着かない気分になった。

 だから、ぼくには、イケの協力が、どうしても必要だったのに!

 とにかく、何をしたらいいのか、先ず書き出してみるしかないと思った。できることもできな

いことも、思いつくままを。

 1 北くんとサッカーして仲良くなる。いじめの元凶の彼を味方につける。(これは、ぼくにと



 2 朝、登校したらみんなでサッカーか、ドッジボールする。(みんな、めんどくせーって反対

しそう)

 3 帰りの会のとき、その日の楽しかったことをみんなに話してもらう。(楽しいことなんて、

学校では、ないような気がするけど、一応)

 4 今までで、一番悲しかったことを話してもらう。(他人の悲しみに共感できたらいいけど。

でも、みんなの前でそんなこと、言えるだろうか。言えてたら、こんなクラスには、なっていな

かったはずだし)

 5 みんなで、何かを続ける。

例えば、クラス三十二人三十三脚を始める。そのタイムをあげる練習に挑戦する。テレビに出ら

れるぐらい、強くなる。(みんな白けてしまいそうだ)

考えているうちに、ぼくのクラスでは、とてもできそうにないことばかりだと、思った。



いる。

例えできたとしても果たして、一人ぼっちの子がいなくなる保証なんてあるのだろうか。いじめ

は、根が深い。簡単になんかいかないんだ。

ぼくの考えていることは、みんな、実現できそうもないことばっかり。

 山には登りたいけれど、登る前から、その困難を想像して、避けているぼくだ、きっと。先生に、



まだ何もはじめてもいないのに、挫折しかけている。

難しくなってきて、ぼくは自分で引き受けたのに、投げ出したくなってしまった。

 だけど、イケと一緒ならできる、とは、思った!何故なら、ぼくには、イケと一緒に解決した、

悪との決別と言う輝かしい、金メダルがあるからだ!

ぼくは、イケと力を合わせられれば、どんな難しいことだってできると信じている。

 あの時、どういう風に言えば、イケはぼくと一緒にやろうとしてくれたのだろう。

どうして、協力しないなんてイケは、断言したのだろう。

ぼくはあの時、頭にきて、よく考えもしないで、一人でやるからいいと言ってしまった!

イケは、―――正しいことをするんだから、協力するのが当然とぼくが思っている―――と、言った。

ぼくはそんなこと一度も言ってないし思ってもいない。なのに、イケはそう言った。

(言ってもいないし思ってもいないのに)態度に出ていたって、どういうことなのだろう。

ただ、イケに断られるなんて、思いもしなかったことは確かだ。

だから驚き、がっかりし、頭にもきてしまったのだ。

イケは一緒にやってくれるものと、信じていた。

イケは、ぼくのその態度のことを、言っているのだろうか。

ぼくが気づいていないだけなのだろうか。

ぼくの気持ちの中に、そんな傲慢さが隠れていたとでも言うのだろうか。

ぼくは、そんなもの隠してなんかいない!

思いもしないことが心の中にあるなんて、そんなことがあり得るのだろうか。心の中には思って

いることしか入っていないはずなのに。

イケの言っている意味が、分からない。

イケは時々、ぼくの理解できないことを言う。

 ぼくはその時、はっとした。理解できないこととか、やれないことばかり考えているから苦し

くなってしまうんだ。そして、前に進めなくなって、他人の所為にしたくなったりするんだと、

思った。

一度引き受けておきながら、今更、断ることなんかできない。

ぼく一人ででも、やるしかない。

それなら、ぼくがやりたいと思うことを、考えていけばいいんだ。(考えてみれば、引き受けた

のは、ぼくの都合でもあったのだから、文句なんか言えない)

 ぼくのやりたいこと。

ずっと、抱き続けてきたこと。

それは、校舎の裏のどぶ川を綺麗にすることだ。

蛍が住めるような美しい川にしたいってことだ。

水の流れのない川なんて、川とは呼べない。

 小さい頃、一度だけ父さんと一緒に、蛍を見たことがある。

ゆらゆらと、幻想を背に乗せて飛んでいってしまった蛍。

今度は父さんの思いを乗せて、蛍が還って来てくれたら、どんなに嬉しいだろう。

強くてやさしくて厳しくて、物知りだった父さんの魂をふわりと包んで、運んで来てくれたら。

そしたら、ぼくは言おう。

ずっと、思っていたこと。

「父さん、ぼくはもう大丈夫だよ!思い出してばかりいて、とても苦しかったけどね。でも今は、父さ

んとの思い出が光ってるんだよ」って。

                                  つづく











お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Nov 24, 2010 03:55:52 PM
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: