[Durban Ladies]~その5~


朝食バイキングにはいつもカリーがある。数口だが少し辛いカリーが食べたくなった。僕はいつのまにか毎日カリーを食べないと物足りない体になってしまったみたいだ。席を立っていつもカリーがあったケースを開けると、そこにはなんと!・・・焼きそばがあったのだった。

ラリーさんが「木曜の夜はJAZZナイトです。皆さんで行きまショウ!」と言っていたが、今朝になって「今夜は用事が出来ましタ。」とトーンを落とし気味に言った。僕以外は元々行く気がなかったらしいけど。
会社に着くとまずATMに向かった。もう何回チャレンジしたであろうか。いつもの手順で操作をするといつもと違う、バタバタバタと札を数える音がした。あっ!と思った瞬間、R100が4枚にR20が5枚出てきた。「やった!I have a money!!」うれしかった。

ホテルに着くとラリーさんがへこんでいた。実は同じホテルに泊まっているMayumiさんをjazzに誘ったから僕らには用事が出来たと言ったらしいのだが夕方になって断られたそうだ。「皆さん、行きますカ?」他のメンバーは部屋でカップラーメンを食べると言ってエレベーターに向かった。「ラリーさん、俺いくよ」と言うと白い歯を見せてにやりと笑った。

シャワーを浴びて、約束の7:00ちょうどにロビーに行くとラリーさんは「来チャッタ。」と苦笑いをした。向かいのソファーの悪そうな黒人がニヤニヤして立ち上がった。「サワボーナ!」と握手をすると、「コンニチワ、フェジレです」と流暢に日本語を話した。その横には日本人の女の子がいた。「日本人同士で握手のあいさつって少し照れますね」と言うとrieさんは「Please speak English」と笑わないでいった。
ラリーさんは「mayumiさんが来マス。」と言うので「邪魔なら帰るよ」と言ったが「帰らないでクダサイ」と言うので一緒にいく事にした。
7時を5分過ぎたところでフェジレとラリーさんが「Too late!!」と言い始めた。
『時間には意外と正確です』と、この国に駐在経験のある知人が言っていたがまさか5分で遅すぎると言われるなんて・・・呆気にとられていると「もう電話シマス!」とラリーさん。「Japanese lady は 時間がかかるもんだよ」となだめた。
約束を10分過ぎたところで疲れた顔をしたmayumiさんが現れた。「Nice to meet you」と握手をする。ラリーさんの第一声は「mayumiさん、遅すぎマス!」だった。
mayumiさんは『今日は仕事であちこち運転して大変だったんだよ!』みたいな事を、かなり流暢な英語で言った。正直ほとんど聞き取れなかった。
5人でカローラに乗り、街へ出かけた。フェジレは『おいしいピザ屋があるんだ』と得意げな顔をして言った。
ピザ屋に入ると、まずビールを頼んだ。Rieさんはダーバンの英会話学校に通っていると言い、Mayumiさんはこちらで仕事を見つけて、アパートを見つけるまでホテル暮らしをしていると言った。Rieさんは今風のかわいらしい子だが自分を持っているタイプだろう。Mayumiさんは多分、日本人という殻の中では満足できないタイプではないだろうか。落ち着いた雰囲気を持った芯の強い女性、という匂いがする。Mayumiさんが話しているのは日本人が話す英語ではない。あまりに自然で日本人ではないんじゃないのではないかと疑いたくなる。
久しぶりに日本の女性と話した気がする・・・ほとんど英語だけど。なぜだかみんな、僕の英語を誉めてくれた。「言いたいことは伝わるよ」うれしかった。確かに文法など全く無視して話しているが、あまり困った事は無い。言いっぱなしだからか。ただし、聞くのには常に困っている。人によって発音のくせやアクセントが違うのに対応できない。「schedule」を「すけじゅーる」と発音してもわかってもらえるが、『ッチェドゥー(ル)』みたいな言い方されてもわからない。
フェジレは陽気なブラックで、僕の英語を面白がった。日本に住んでいたこともあり、簡単な日本語なら理解する。苗字、つまりファミリーネームの意味を聞いてきたので「Small,big,woods,sea….many kind,but not important!」と言うと大笑いした。
コーヒーを飲み終えると、会計を持ってウェイターが来た。僕がカードを出して「Today, my card is happy!」と言ってみんなを制した。事情のわかっているラリーさんは笑っていた。
しかし、この国では飲食代の10%程度をチップとして払う習慣があるのだ。ホントは飲食代にチップをレシートに書き込み、トータルでいくらカードで支払いますよ、と処理しなければならなかったのだ。それに気がついたフェジレが、ウェイターにいくらか支払った。しかし、五人で軽く飲んで食べてR340、¥6000位。ビールが安いのがうれしい。

ホテル前でrieさんとフェジレと別れ、ホテルのバーに行った。ここで今夜はFREEのJAZZナイトが行われているのだ。金属探知機を持った入り口の大男に「サワボーナ!」と声をかけると『おまえはズールーのあいさつができるのか!』うれしそうに握手を求めてきた。
バーでは何を話したか覚えていない。近くで派手な女性が飲んでいるなあと思っていたら次はその人が歌った。生ビールを飲んで生ピアノを聞いた。もちろん、帰りにも大男とがっちり握手をした。「ディアボンガ!」と言うとうれしそうに笑った。
部屋に戻ると倒れるように眠った。

JAZZ NIGHT


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