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2006.08.03
花火、咲ク
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カテゴリ未分類
そのときも、僕は約束を守れなかった。10分。彼女が10分の間、恨みつらみを言った後に、それ以上には絶対に何も言わない。だから、僕らはやってこられた。そして。だから、僕らは終わってしまった。きっとそうなんだと思う。僕は約束を守れないことが多くて、彼女はそんな僕を結局いつも許した。
花火。花火に行けなかった。否、行かなかった。人ごみが嫌いで、暑いのも嫌いだった。高いだけで不味くて不衛生な出店も、甚平を着て歩く金髪も、好きじゃなかった。つまり、僕は花火が、花火大会が好きじゃなかった。彼女も、マナミも実は、僕と同じだった。人ごみも暑いのも出店も甚平姿の金髪も嫌いだった。違ったのはすごく花火が好きで、そして、好きな人とそれを見るのを、僕が理解できないくらいに楽しみにしてたこと。それは、僕が真夏のカンカン照りの中で汗まみれになりながらロックフェスに行くことを、彼女が理解できないのと同じ理由だと僕は言った。
「浴衣」
その日も例外なく暑かった。2回目のカフェでの休憩の後。夏休みは5割増になる人通りの中に浴衣の女の子が二人いた。キャミソールから出た細い腕を伸ばして、真っ直ぐに指を差した先に。
「ゆーかーたー」
「はいはい」
「いいな」
「いいね、俺も好き。浴衣。帯でグルグルーって」
「あーれーお代官さまーってね」
「良いではないか良いではないか」
左手のマナミを見た。冗談を言ってるときの顔じゃないことはすぐに分かった。
「いいな」
もう一度言って、指していた指を僕の左手に絡ませた。僕は彼女の顔を見るのをやめた。富田林で花火があったのを聞いたのは、その夜のニュースだった。10万発の花火。日本一の。10万という数字がよく分からない。大学の友達が言うには見なきゃ分からない迫力だって。じゃあ、僕にはきっと一生分からない。洗い物が終わってマナミがソファの下に座った。僕はまたマナミの顔を見なかった。彼女は何も言わなかった。責めてるように感じた訳じゃなかった。けれど、僕は思わず口にした。花火に、行こうって。
「嫌いでしょ、花火大会」
「まぁ、好きじゃない」
「うん、去年ずっと言ってた」
「付き合いだして、すぐな」
「わたしが、好きな人と花火行くのがすごい楽しいって言ったときに」
「じゃあ、行こうか」
「覚えてないの?」
「何を?」
ソファの下からマナミが僕を見上げた。責めてる訳じゃなさそうだった。けれど好意を持った顔じゃないことは確実だった。「何を?」もう一度尋ねて、僕がとぼけてる訳じゃないことに気付いたように諦めた顔になった。
「去年も、そう言った。じゃあ、行こうか、って」
富田林で日本一の花火があがった何日かあとに、淀川の空で花火があがる。バイトのシフトを確かめた。見事に。シフトが入ってた。2度確認したから間違いない。携帯を開いてマナミにメール。10秒もしないうちに着信音が鳴った。
「ばーか」
絵文字も入れずに返ってきたメールを見て、さて、どうやってなだめようか迷った。すぐに折り返した電話が留守電に繋がった。中途な約束はするもんじゃない。何回目かのおんなじ反省をしたあとに、大学の研究室へ向かった。夏休みは、4年生には関係が無い。研究には、関係が無い。世間が休みだろうが、暑かろうが、花火があがろうが、彼女を怒らせようが。
「と、言うことで、実家に行って浴衣を持ってきた」
研究室からバイトに行って、夏休みはどこ行ったって感じの1日を終えたところに、マナミから電話が入った。原付をとめてすぐに着信音が鳴った。
「浴衣、って。誰かと花火行くのか?」
「誰かって、あんたやん」
「だから、バイト」
「だから、淀川じゃないって」
なにが「だから」なんだ?
「淀川じゃなくて、宇治川。それに行こう」
マナミの実家は住んでるアパートから片道2時間半はかかる。往復5時間かけて、浴衣を取りに行った。どうしても、今年は行くんだって。こうして僕は後に引けなくなった。
遮断機の下から見た花火は、富田林にあがる10万発の花火の10分の1もないんだって言う。それでも浴衣のマナミの右手を握って、首が痛くなるくらい近くで見た花火は、じゅうぶんにすごかった。もう、表現力が乏しいにも程があるんだけれど、何年ぶりかに見た花火はすごかった。そして、マナミが花火を見たかった理由が、好きな人と花火を見たかった理由が分かり過ぎるくらい分かった。花火が上がってる間、ほとんど僕らは喋らなかった。暑かった。人も多かった。もちろん、甚平を来た金髪も何人もいた。高くて不味いタコ焼きも食べた。それでも、僕は左手をマナミは右手をずっと離さなかった。花火が終わり、人が流れて、息が詰まるくらいの人ごみの駅、それから駅を降りて、マナミのアパートに着くまで。何を喋ればいいのか、と言うより何か喋るのがもったいないというか。ただ、マナミは今にも笑い出しそうな顔をずっとしてて、僕もきっと同じ顔だった。
「来年も、行こうね」
ふたり、きっとずっと帰り道の間思っていたことを、部屋についてからマナミが言って、「おお、行こうか」僕は缶ビールを開けながら言った。
そして、また僕はその約束を破った。いや、破ったのはマナミも一緒か。僕らが、二人で花火の咲く空を見上げることは、もう、無い。
僕は富田林で10万発の花火があがったのを、今年もニュースで知った。
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Last updated 2006.08.04 02:15:43
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