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2006.07.24
黒信号の夏
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アスファルトはまだ濡れていた。僕が昔住んでいた街は、昼は身体を溶かして汗にする温度にまで上がっても、夜はひんやりとした風が吹く、そんな夏を過ごすことが出来た。ただ、大学進学のために出てきたこの街は、皮膚を焦がす日差しが無くなった後にも、身体を溶かす温度と湿度は残したままだった。深夜の夕立が止むと、バカみたいに電気メーターを回すクーラーの効いた部屋から追い出されて、買出しに行かなければならなかった。
言い出しっぺはユウスケだった。真夏にクーラーのガンガン効いた部屋でキムチ鍋をやる、これが究極の贅沢だと彼は言って、ユウスケと彼女のチヒロ、アキラとショウジ、それからユウコとメグミ、僕の7人がユウスケの部屋に集まった。まぁ、想像以上にこの提案は素晴らしいものだと、始め面白半分に集まった僕らは認めざるを得なかった。真夏にクーラーの効いた部屋で食べるキムチ鍋はうまかった。真冬に食べるそれの、何倍もうまかった。ように感じた。それからは、結局いつもと同じに、鍋を食べながら片手に持っていた缶チューハイとビールから始まって、いいちこや安いジンとウォッカをオレンジジュースで割ったものを飲みながら、プレステで2人一組になっていただきストリートをやった。つまみと、酒が少なくなったから、最下位チームが買いに行く、と。それもいつものことだった。
そして、僕とメグミが、夕立のあがった住宅街の毛細血管である路地を歩いた。「あそこの増資のタイミングが…」とか、そんな反省をするでもなく、いただきストリートでは完膚なきまで最下位だった。僕には、計算とか経営とか、それ以前に先の見通しを立てる能力がひどく低いように感じられた。コンビニまでは少し離れていた。ユウスケの住んでいるマンションがある住宅街のすぐ側に平成への時代の移り変わりを拒否し続ける商店街があった。商店街が近くにあって便利、というのは昭和の話で、僕らは平成の、21世紀を生きている、しかも主な活動時間を夜とする学生だ。僕らはその『便利』な商店街を抜けてコンビニに向かった。多種多様の店舗が並んでる商店街はシャッターが下りていて違いが分からなかった。
「夜なのに、あついー」
メグミは両手を顔の前でぱたぱたと振った。なまるい空気を混ぜ返しても涼しくなんかなりそうにも無かった。首元を右手でつかんでTシャツの中に空気を送り込んで僕は思った。
「夏だから、あつい」
そう答えた。暑さよりも、まとわりつく湿気が不快なんだ、そう付け加えた後に「西海岸じゃ、同じ気温でも湿気がないから過ごしやすい」と言った。僕がアメリカに行ったのはずっと昔のことで、そのときは春だったから実際はどうだか知らない。
「アメリカは、いつも、なんかズルイ」
メグミがひとりごとなのか、僕に言ってるのか分からない声のトーンで更に言った「男も」。それは、別れたばかりの恋人のことだと思った。「健全な大学生男子は、遊ぶものだ」「浮気は文化?」「それは違うけど」「ずるいだけだ。卑怯だ。不健全だ。バカだアホだスケベだ!」両手を広げて叫ぶメグミを1歩下がったところから見てた。酔っ払ってるな、確実に。そう思った。確かにメグミはいつもより酒を飲んでた。それからずんずんと真っ暗な商店街を歩いていき、その2歩くらい後ろを何も言わずに歩いた。商店街が終わって目の前に片側2車線の車道があった。向かい側に青い看板のコンビニがあった。
信号は黄色だけが点滅していた。メグミはそのままずんずんと歩き続けて車道を渡ろうとした。「おいおい」声を出したのか出してないのか、はっきりとしないけれどメグミは立ち止まってこちらを向いた。いまは真夜中で、車道は見通しが良かった。けれど、メグミは真っ直ぐ正面だけ見て、酔ってるくせにずんずんと歩いていた。さすがに、それは危ない気がした「おいおい」だった。「おいおい」僕は改めて、今度はちゃんと声を出したことを確認しながら言った。
「点いてない」
メグミが歩行者用の信号を指差した。赤も青も青の点滅も無かった。「点いてな」「赤は!」僕が言い終わらないうちに声を張り上げた。
「赤は、とまれ!青は、進め!」
指を真っ直ぐに信号機に向けたまま声を上げる。「信号機に従わなきゃいけないなら。いけないなら、黒は?」「くろ?」「くろ、だ」歩行者用の信号機は何も点いてない。黒。確かに。黒、だった。
「知らん」僕はメグミに追いついた。見通しのよい車道の遠くにヘッドライトもバックライトの赤も無かった。ずっと黒、だった。車道を渡りだした。そのあとにメグミが走ってついてきた。
黒は?ハッキリとすべきことを示してくれるものが見えてるなら。「進め」とか「とまれ」とか「好きだ」とか「嫌いだ」とかそういうものが、いつも見えてたらきっと誰も何も考えずに、盲目的と言ってもいいほどその通りにするだけ。赤だったら真夜中で車が一台も無くてもぼーっと突っ立てるだけかも知れない。だけど、黒だったら。
自分で、決めなきゃ、いけないだろ。例えば。例えばの話だけれど、恋人と別れたばかりの女の子が他の男にいきなり好きだって言われたらどう思うかなんて、その子の顔に書いてある訳ないし、まして、自分のことをどう思ってるかなんて。
だから、僕は分かりきってることをやった。コンビニでビールと酎ハイとウォッカとオレンジジュース、おつまみとチョコレート、そして2本アイスを買った。夏にアイスを食うのは、間違いが無くてハッキリとしていることだった。僕と、そしてメグミの分のアイスを買って、それを食べながらコンビニ袋を下げて帰ること、それは青信号ですごく分かりやすいことだった。
「ガリガリ君は、あんまり好きじゃないんだよなー」
僕は右手に持った食べかけのガリガリ君を口にくわえて、メグミの頭をはたいた。メグミはグーでコンビニ袋を下げた左手の肩を殴った。袋の中身をがちゃがちゃさせながら僕は走った。ぬるくて、じっとりと湿った空気の中を走って、汗をかいた。メグミも走った。マンションの入り口で暑い、暑いと二人で言いながら汗をぬぐった。「なんで、走るのよ」もう一回左肩をグーで殴られた。そのあと、部屋で勢い良くビールが缶から飛び出し、僕は部屋にいた全員からはたかれた。
黒信号で立ち止まった僕の夏は、こうして終わった。
そして僕は今では赤信号でも平気で渡る。
(そして、轢かれる)(引かれる、のです)
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Last updated 2006.07.25 01:43:25
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