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2007.04.11
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島田荘司『見えない女』
~光文社文庫、1989年~

 海外を舞台とする3つの短編が収録されています。以下、簡単に内容紹介と感想を。

「インドネシアの恋唄 An Indonesian Love Song」学生生活最後の夏休み、突然インドネシアへの旅行券と滞在費を与えられた「私」は、最初は不審な思いを抱いたものの、いつしかインドネシア訪問を楽しみにするようになる。ジャカルタの次に訪問したジョグジャカルタで、「私」は、日本の新人歌手に似た現地人女性と知り合い、やがて恋に落ちる。ところが、彼女と行動をともにしはじめると、「私」に、たどたどしい文字の日本語で書かれた脅迫文が届けられるようになる。

「見えない女 An Invisible Woman in Paris」映画作成のため、パリで仕事を進める「私」。フランス語が不自由な「私」は、マリーフランス・テネロープという通訳と仕事をともにするようになる。通訳だけでそれほど稼げるわけでもないだろうに、彼女はほとんど私と行動をともにしており、非常に金持ちでありながら、パトロンがいるわけでもなさそうだった。ある日、彼女は、自分は「透明人間」なのだと言う。

「一人で食事する女 A Berlin Lady」観光でドイツを訪れた「私」は、気になる女性としばしば出くわす。彼女は、ベンツでレストランを訪れると、ベンツのことを心配した風もなく、一人でレストランの奥の方の席に向かい、一人で食事していた。誰かが彼女をおごると言っても不思議はないくらい魅力的な女性なのに…といぶかっていた「私」は、娼婦として街角に立っている「彼女」を見ることになる。ルートヴィヒ2世の建てた城をめぐっていた「私」は、また別の機会に女性と出会い、女性をガイドとして、二人で旅をすることになる。

   *

 第一話は別ですが、基本的に、別段大きな事件が起こるわけではありません。メインは、外国で出会った、魅力的でありながらどこか不思議な女性たち、といったところでしょうか。
 表題作「見えない女」は、彼女が自分を「透明人間」と言ったことや、その金持ちぶりの理由が最後に鮮やかに示され、その点も面白いのですが、その裏にある彼女の心境も訴えてくるものがありました。

 さて、この短編集の中で一番印象的だったのは「インドネシアの恋唄」です。この作品は、後に単行本化されているようですね。ミステリとしてはあまりぱっとしないのですが(そもそも、狭義のミステリとは言い難い作品ですが)、「私」と、エコ・サリのやりとりを通じて、二人にどことなく感情移入していくのですが、そうなると、悲しい気分になります。エコ・サリの歌も、きっと綺麗だったのだろうと思える物語でした。
 本書は、もともと文庫オリジナルのようです。巻頭に、それぞれの物語にちなんだカラー写真が紹介されていて、そちらも素敵でした。





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Last updated  2007.04.11 06:22:24
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