アンソニー・ホロヴィッツ(山田蘭訳)
~創元推理文庫、 2022
年~
(
Anthony Horowitz, A Line to Kill
, London, 2021
)
元刑事で警察顧問のダニエル・ホーソーンと、その活躍を記録することとなった作家のアンソニー・ホロヴィッツが活躍する、ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第3弾。
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『メインテーマは殺人』
の宣伝のため、オルダニー島で開かれる文芸フェスに参加することとなったホロヴィッツとホーソーン。ホーソーンには、何か思惑がありそうで…。
参加者は、児童文学者のほか、「カロリー万歳」をうたい文句とする料理人、オルダニー島の歴史家、視力を失ったかわりに霊の世界が見えるようになった女性、少数言語で詩をつづる朗読詩人で、それぞれも独特の個性を持つメンバーたちだった。
朗読詩人と謎の男性の言い争い、料理人とアシスタントの口論、料理人がフェスのスポンサー―ル・メジュラーに向ける敵意などなど、参加者の中に不穏な空気があるだけでなく、島の住民も、ル・メジュラーが推進する島への送電線敷設計画をめぐり対立しているという状況の中、フェスでも、霊能者による暴露、ホーソーンへの敵対的な言葉など、異様な空気が漂っていく。
そんな中、ル・メジュラー邸でパーティーが開かれるが、翌朝、ル・メジュラーが殺されているのが発見される。椅子にくくりつけられ、首を刺されていた被害者だが、なぜか右手だけは縛られていなかった。
地元警察の協力要請を得て、ホーソーンたちは捜査を進めるが…。
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今回も面白かったです。
過去の2作と違い、なかなか事件は起きませんが、その間、関係者たちのいさかいなどなど、何かが起きそうな不穏な空気が高まっていきます。
被害者を殺害する動機を多くの人が持つ中、現場付近に残された足跡や指紋の付いていない金貨、右手だけが縛られていなかった謎など、多くの謎があり、これらが解き明かされていく過程も鮮やかです。
また、殺人事件だけでなく、今回はホーソーンの仇敵ともいえる人物が登場し、そちらも読みどころです。
(2025.01.18 読了 )
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