2007.04.16
カテゴリ： 本の感想（さ行の作家）
島田荘司『出雲伝説7/8の殺人』
～光文社文庫、1988年～
吉敷竹史シリーズの長編です（私は、その中でも勝手に「分数シリーズ」と名付けているのですが…）。以下、簡単に内容紹介と感想を。
昭和59年4月20日。山陰地方を中心に、恐るべき事件が起こった。若桜駅、山守駅、大篠津駅、倉吉駅、大社駅、鳥取駅、そして山陰ではないが大阪駅にそれぞれ到着する電車の網棚に、女性のばらばら死体の各部位がつめられた袋が置かれていた。頭部を除く、七つの部位が発見されることになる。
その日、吉敷は休暇で鳥取を訪れていた。警察学校時代の友人、吉田をたずねて鳥取署を訪れた吉敷は、事件の話を聞き、のんびり旅行する気分がなくなってしまう。根っからの刑事である吉敷は、それでも多少は旅行をしつつ、事件のことを考え始めた。
桜田門に戻った吉敷は、届けられた匿名の手紙を目にする。それによれば、被害者は、Ｋ学院大学の歴史民族学研究室の助手、青木恭子であった。頭部が発見されていないため、確証が得られないままに捜査を進めざるをえない状況の中で、被害者は青木でほぼ間違いないだろうと思われた。そして、青木と、出雲伝説―特に八岐大蛇伝説をめぐる激しい論争を繰り返した同研究室助手の野村操が有力な容疑者と思われた。
被害者の青木は、事件の日、＜出雲１号＞に乗っていたと思われる。しかし、野村は、その15分前に発車する＜富士＞に乗っていた。完全なアリバイが成立することが、逆に怪しいと考える吉敷だが、そのアリバイを崩すために苦心することになる。
以前、通勤の日に読むのは短編集にするつもりと書いたのですが、この作品はずっと楽しみにしていたことと、二日に分けて読了できるとふんだこともあり、通勤時と休み時間を使って読みました。楽しみにしていた甲斐があったというものです、面白かったです。
歴史民族学研究室の助手たちの争い。教授をめぐった、三角関係的なところも物語としては面白いのですが、やはり彼女たちの論争が面白かったです。紀要をもらった吉敷さんが、予習として古事記を読み、そして論文を読むあたり、わくわくしました。
一つ気になったのは、ウサギとワニの話。山陰地方では、鮫のことをワニと呼ぶと聞いたことがあるのですが（ネットでぱらぱらと調べたのですが、逆に、なぜ山陰地方で鮫のことをワニと呼ぶようになったかも考えてみると興味深いですね）、そのことがふれられていない箇所がありました。このことも、つきつめると犯人の誤算を指摘する根拠になりえると思ったのですが、そこまではしていませんでしたね。
個人的には、吉敷さんが倉敷の美観地区をめぐるあたりの描写にわくわくしました。『寝台特急「はやぶさ」1/60の壁』の感想にも、似たようなことは書いたのですが…。美観地区にアイビースクエアというところがあるのですが、吉敷さんはそこも訪れています。自分の知っているところが作品に出てくると、とても身近に感じられるのが楽しいですね。
～光文社文庫、1988年～
吉敷竹史シリーズの長編です（私は、その中でも勝手に「分数シリーズ」と名付けているのですが…）。以下、簡単に内容紹介と感想を。
昭和59年4月20日。山陰地方を中心に、恐るべき事件が起こった。若桜駅、山守駅、大篠津駅、倉吉駅、大社駅、鳥取駅、そして山陰ではないが大阪駅にそれぞれ到着する電車の網棚に、女性のばらばら死体の各部位がつめられた袋が置かれていた。頭部を除く、七つの部位が発見されることになる。
その日、吉敷は休暇で鳥取を訪れていた。警察学校時代の友人、吉田をたずねて鳥取署を訪れた吉敷は、事件の話を聞き、のんびり旅行する気分がなくなってしまう。根っからの刑事である吉敷は、それでも多少は旅行をしつつ、事件のことを考え始めた。
桜田門に戻った吉敷は、届けられた匿名の手紙を目にする。それによれば、被害者は、Ｋ学院大学の歴史民族学研究室の助手、青木恭子であった。頭部が発見されていないため、確証が得られないままに捜査を進めざるをえない状況の中で、被害者は青木でほぼ間違いないだろうと思われた。そして、青木と、出雲伝説―特に八岐大蛇伝説をめぐる激しい論争を繰り返した同研究室助手の野村操が有力な容疑者と思われた。
被害者の青木は、事件の日、＜出雲１号＞に乗っていたと思われる。しかし、野村は、その15分前に発車する＜富士＞に乗っていた。完全なアリバイが成立することが、逆に怪しいと考える吉敷だが、そのアリバイを崩すために苦心することになる。
以前、通勤の日に読むのは短編集にするつもりと書いたのですが、この作品はずっと楽しみにしていたことと、二日に分けて読了できるとふんだこともあり、通勤時と休み時間を使って読みました。楽しみにしていた甲斐があったというものです、面白かったです。
歴史民族学研究室の助手たちの争い。教授をめぐった、三角関係的なところも物語としては面白いのですが、やはり彼女たちの論争が面白かったです。紀要をもらった吉敷さんが、予習として古事記を読み、そして論文を読むあたり、わくわくしました。
一つ気になったのは、ウサギとワニの話。山陰地方では、鮫のことをワニと呼ぶと聞いたことがあるのですが（ネットでぱらぱらと調べたのですが、逆に、なぜ山陰地方で鮫のことをワニと呼ぶようになったかも考えてみると興味深いですね）、そのことがふれられていない箇所がありました。このことも、つきつめると犯人の誤算を指摘する根拠になりえると思ったのですが、そこまではしていませんでしたね。
個人的には、吉敷さんが倉敷の美観地区をめぐるあたりの描写にわくわくしました。『寝台特急「はやぶさ」1/60の壁』の感想にも、似たようなことは書いたのですが…。美観地区にアイビースクエアというところがあるのですが、吉敷さんはそこも訪れています。自分の知っているところが作品に出てくると、とても身近に感じられるのが楽しいですね。
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Re:島田荘司『出雲伝説7/8の殺人』(04/16)
torezu
さん
こんばんは。TBありがとうございます。ｗ
日記を拝見して、古事記論争の所をもう一度読み返してみましたが、あの場面は面白かったです。
個人的に神話などの話は好きですし、邪馬台国論争に関する？本も読んだことがあったので、こちらの作品で、色々な考えに触れることも出来ました。八岐大蛇のお話は、私もどちらかというと史実を踏まえたという考えに賛成です。全くの白紙からこんな物語が出来たとは考えにくいですし、フィクションだったとしても面白いのですが、やはり天岩戸のように本当にそういった事件があったと思った方が面白い気がします。
また日記を拝見しに来ます。ｗ (2007.04.16 17:45:52)
日記を拝見して、古事記論争の所をもう一度読み返してみましたが、あの場面は面白かったです。
個人的に神話などの話は好きですし、邪馬台国論争に関する？本も読んだことがあったので、こちらの作品で、色々な考えに触れることも出来ました。八岐大蛇のお話は、私もどちらかというと史実を踏まえたという考えに賛成です。全くの白紙からこんな物語が出来たとは考えにくいですし、フィクションだったとしても面白いのですが、やはり天岩戸のように本当にそういった事件があったと思った方が面白い気がします。
また日記を拝見しに来ます。ｗ (2007.04.16 17:45:52)
こんばんは
のぽねこ
さん
torezuさん、コメント＆ＴＢありがとうございます。
ミステリの謎もわくわくしますが、本作の魅力は古事記論争だと思いました。私は日本神話に疎く、なかなか覚えられないのですが、それでも魅力的だなぁと思います。野村さんの説など、わくわくしました。
私からも、またブログにうかがいますね。 (2007.04.16 18:47:05)
ミステリの謎もわくわくしますが、本作の魅力は古事記論争だと思いました。私は日本神話に疎く、なかなか覚えられないのですが、それでも魅力的だなぁと思います。野村さんの説など、わくわくしました。
私からも、またブログにうかがいますね。 (2007.04.16 18:47:05)
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