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2007.05.09
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島田荘司『灰の迷宮』


 吉敷竹史シリーズの長編です。内容紹介と感想を。

 昭和62年(1987年)2月10日(おっと!)の朝、新宿でバス放火事件が起こった。浮浪者風の男がバスに乗り込むと、一人の乗客が急いで逃げ出した。男はまず、乗客が残したバッグに丹念にガソリンをまきはじめた。乗客たちが男を取り押さえようとしたとき、バスから逃げ出した乗客がタクシーにひかれてしまい、放火(未遂)犯は逃げてしまう。その後、おそらくなんらかの過失で、バスは炎上した。
 この事件は、7年前に起きたバス放火事件の模倣ではないか、と吉敷は考える。同じバス会社、同じバス停を狙った事件なのである。
 この事件で、タクシーにひかれた男―佐々木徳郎の過去を追う内に、吉敷は意外な事実にいきあたる。2年前に殺された男、壺井が持っていた、破りとられた新聞記事を、佐々木が持っていたというのである。それでは、2年前の事件の犯人は、佐々木だったのか―。
 佐々木の家庭、そして壺井のアパートのある鹿児島の刑事、留井と連携をとりながら捜査を進める吉敷だが、留井と関係のあった女、茂野恵美に対する事情調査が難航していることもあり、吉敷自身が鹿児島に向かうことになる。
 2年前の、鹿児島の大降灰前後に起こった、暴力団の<戦争>。暴力団の一員と関係があった壺井が、佐々木と近づこうとする。あるいは、競馬場の関係者と近づこうとする。壺井の行動の理由はなにか。なぜ、佐々木が壺井を殺したのか。なぜ、奇妙なバス放火が行われたのか。複雑に絡む謎に、吉敷は推理をめぐらせる。

 事件自体は、なにか、幻想的な大がかりな謎が提示されるわけでもなく、同じく大がかりなトリックが用いられているわけでもない。それでも、細かな謎が絡み合っていて、どこか気持ち悪さが残ります。大がかりな謎ではないけれど、それでもそのもやもやが解かれるのを楽しみにしながら読み進めました。
<ここまで>
 留井刑事も素敵でした。なにってかにって、エピローグで紹介される彼の手紙が良かったです。おいしいラーメンの作り方について、留井さんは自ら編み出した料理法について詳しく書いている…らしいのですが、事件とは無関係ということで省略されていました。惜しい!
 正直、エピローグまでは、たしかに絡み合った謎が解かれていくのは素敵だったのですが、あんまり印象的ではありませんでした(恵美さんが遺したインスタントラーメンは心に残りますが…)。けれど、エピローグで、一気に物語に深みが出たように思います。面白かったです。





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Last updated  2007.05.09 06:53:52
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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