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2007.06.17
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~講談社ノベルス、2002年~

 法月綸太郎シリーズの短編集です。短編集としては三冊目で、これが一番新しかったりします…。(この後の小説は、長編『生首に聞いてみろ』ですね)
 とまれ、内容紹介と感想を。

「イコールYの悲劇」坂崎夫妻のマンションの一室で、留守番をしていた、坂崎翠の妹・茜が殺されているのが発見された。茜の手元にあったメモパッドの一番上の紙は破りとられていたが、残った紙に、次のように読める跡が残っていた。「=Y」。坂崎夫妻の仲の悪さから、夫が翠を殺そうとして誤って茜を殺したとも考えられたが、夫の不倫の現場をおさえようとしていた妻の行動のため、彼にはアリバイが認められるのだった。

「中国蝸牛の謎」カタツムリを題材に、密室もののミステリを書くと言っていた作家・鹿沼が首を吊って死んでいた。編集者が彼のもとを訪れたとき、すこし前に対談したばかりの法月を呼んでくれとさんざん言われたという。そこで法月綸太郎がかけつけると、鹿沼の仕事部屋は、動かせるものは全てあべこべにされていた。まるで、エラリー・クイーンの『チャイナ橙の謎』の現場のように。鹿沼自身が首を吊っていたのは、その仕事部屋の下の部屋であった。

「都市伝説パズル」男の部屋でパーティがあり、みなが帰ったあと、女が一人忘れ物に気付いて男の部屋を訪れる。男を起こさないように、電気をつけずに忘れ物をとって帰った翌日、男が死んでいるのが発見される。そして部屋には、「電気をつけずに命拾いしたな」という血文字が…。都市伝説そっくりの事件が起こったと法月警視から聞き、綸太郎は推理していく。

「ABCD包囲網」殺人事件の犯人の目星がついてきた頃、自分が犯人だと名乗りをあげる男が現れた。男の供述はあやふやで、新聞や週刊誌の記事を丸覚えしているだけだった。ところが男は、その後の飛び降り自殺などの事件でも、自分が犯人だと言って久能警部と話をしたがった。男の真意が分かりかねる警部だが、やがて、彼の妻が現れることで、事件(?)は転機を迎える。

「縊心伝心」不倫の関係のあった女から、自殺をほのめかす電話があり、急いで彼女のもとを訪れた男は、彼女がベッドに首をつっているのを発見した。ところが、女は、そこから2メートルは離れているタンスで後頭部を強打して死亡していた。



 いやはや、私は陸上軟体動物が大っ嫌い(というか、大の苦手というか、怖いというか…。見ただけでその場に自分が存在することを悔やみたくなります。モアやドードーが絶滅する前に、あれらが絶滅していれば、などと無茶なことも考えたくなります)なので、「中国蝸牛の謎」で、あれらについて蘊蓄がかたむけられるのは少ししんどかったです。カタツムリはまだぎりぎりセーフなのですが、名前すら言いたくないあれらの名前も出てくるので…(さらに脱線しますが、以前読んだ動物裁判に関する仏語論文の中でもあれらに言及があるのですが、仏和辞典でその単語を調べてやつらの名前を確認したときでさえ「うわぁー…」ってなったほどです)。といって、右巻き左巻きの話など、興味深かったのも事実。そういえば、先に陸上軟体動物と書きましたが、ウミウシやアメフラシなんかもやっぱり嫌ですね…。もはや何の感想だか分からなくなってきましたが、「中国蝸牛の謎」は、著者あとがきにもあるように、密室のための密室、トリックのための作品みたいな形になっているので、物足りない感がありました。
 本書の中で一番面白かったのは、「ABCD包囲網」です。なぜ、男は、明らかな嘘だと警部にばれながらも、何度も自分が犯人だと「自白」しに行ったのか。なかなか、わくわくしました。
 前作『法月綸太郎の新冒険』(感想は こちら )よりは、(良くも悪くも)インパクトのある短編集だったかと思います。

(追記)ときどき、この本についての記事はこちら、というようなことを書きながら、リンクをはり忘れてしまっています。今回も、『法月綸太郎の新冒険』のリンクをはり忘れていたので、遅くなりましたが訂正しておきました。





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Last updated  2007.06.17 06:19:11
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