のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

PR

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2007.08.14
XML
筒井康隆『あるいは酒でいっぱいの海』
~集英社文庫、1979年~

 筒井康隆さんの初期ショートショート集です。SF同人誌『NULL』に掲載されていた作品も収録されています。合計30作品が収録されています。 あえていえば、二部構成とでもいいましょうか。ラスト6作品が比較的長い作品(解説の山野浩一さんによれば、これらが『NULL』に発表された初期作品だそうです)で、それまでが、2~3ページの短い作品です。

 短い作品の中では、「消失」「怪段」「電話魔」あたりが特に好きなタイプの作品です。同じく、「体臭」という作品も良かったです(さわやかからはほど遠いですが)。
 それから、解決編が離れたページに収録されたミステリ「ケンタウルスの殺人」という作品もあり、有栖川さんの「タイタンの殺人」を連想しました。「ケンタウルスの殺人」は、解決編が理解できなかったのですが…。
 比較的長い作品の中では、「二元論の家」と「底流」が印象的でした。
 「二元論の家」は、その家で眠った人の潜在意識―さらにその下に潜在するエスを具現化する作用があります。教授の娘を嫁に欲しがる二人の学生が眠っている間に具現化されるエスは…という話。
 「底流」。エリートには、人の心の中の声を聴きとることができるという世界での話。こつこつ働いて、やっと局長になった男は、すぐにその座をエリートに渡すことになった。若いエリートを前に、男が考えることは…という話です。鬼気迫るものがあります。

 短い作品が多いせいか、ずどんとくるような話はあまりないですが、それでも読んでいて楽しかったです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.08.14 06:42:10
コメント(2) | コメントを書く
[本の感想(た行の作家)] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:筒井康隆『あるいは酒でいっぱいの海』(08/14)  
hina_max  さん
筒井康隆さんの作品が続いてますね。
自分も最近、筒井作品に目覚めたのでどれか読もうと思っています。
いままでなんとなく敬遠してましたので。
毒が強そうな先入観があったからだと思います。(*^_^*)こういった短いのが最初はいいかな。と思ってます。 (2007.08.14 09:25:09)

Re[1]:筒井康隆『あるいは酒でいっぱいの海』(08/14)  
のぽねこ  さん
hina_maxさん、コメントありがとうございます。
筒井さんのは、毒の強い作品も多々ありますが、私はそういうのにも魅了されてしまいました…(笑) 一方で、『家族八景』にはじまる七瀬シリーズなどはシリアスな雰囲気ですし、本当にいろんな作風の作品があると思います。
私が最初に読んだ毒舌系の短編集は、『くたばれPTA』と『農協 月へ行く』あたりです。前回記事を書いた『薬菜飯店』も良かったです。どれも短編集あるいはショートショート集なので、読みやすいと思います。
(2007.08.15 09:26:08)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: