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2007.08.18
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文学部唯野教授のサブ・テキスト

~文春文庫、1993年~

 前回紹介した『文学部唯野教授』の続編というか、その作品にまつわるエピソードなどを収録した一冊です。
 目次の順に、簡単にどんな感じかふれておきます。

文学部唯野教授に100の質問
 …小説なのでしょうか。唯野教授のプロフィールなど、いろんなことが分かります。卒業論文、修士論文、博士論文のタイトルに加え、雑誌に掲載された研究論文のタイトルなども。 …どれも興味深いです。早治アメリカ文学同人の会編≪ぬる≫というのは笑ってしまいました。筒井さんが最初に作品を発表していた同人誌の名前が『NULL』ですね。
 興味深かったことをもう少し書いておきましょう。
 唯野教授は、学生のことをゴキブリだの蛆だのに喩えますが、そのことに関する質問に対しての答え。「教授たちが学生をゴキブリとか蛆虫に例えたくなるのはさ、講義を聞かないで私語を交わしてる学生が必ずいるからなの」。…私はなんだかんだで6年間学生として勉強していましたが、学生の人数が多い講義では私も感じていました。温厚そうな先生がお怒りになったことを今でも覚えていますが、やっぱり残念な気持ちになりますよね。
 それから、関心のある社会学者について質問されたとき、アナール派の名前を挙げています。ちょっとテンションが上がりました。

≪インタビュー≫『文学部唯野教授』から『短篇小説講義』へ
 『文学部唯野教授』執筆時の背景や、続編(にあたるような作品)についての構想について語られます。『文学部唯野教授』を連載するのと並行して、使える言葉が減っていく『残像に口紅を』という作品も連載していたそうです。『残像に口紅を』は先日買っているので、今度はこちらを読むつもりです。


ポスト構造主義による「一杯のかけそば」分析
 『文学部唯野教授』でも紹介されていた、ポスト構造主義によるテクスト分析のパロディです。「一杯のかけそば」の話だけ読んでいくと素敵な話なのに、分析されることにより、素敵さは無惨にも砕かれていきます。私は、ポスト構造主義による文学批評(それ以前に、どんな理論であれ、ある理論に基づく文学批評)を読んだことがないので、なんともいえないですが、完全にゲームのようになっていると感じました。なんというか、そういう雰囲気にふれられたことが、良い体験になったように思います。

 私が読んだ文庫版では、解説にかえて、「『文学部唯野教授』の特別講義」というタイトルで、河合隼雄さん、鶴見俊輔さん、筒井康隆さんの鼎談も収録されています。

 『文学部唯野教授』を読んだすぐ次に読んだので、作品の背景が分かって良かったです。

*『短篇小説講義』は、1990年に岩波新書として発売されているようです。こちらもいつか読みたいです。





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Last updated  2007.12.13 10:45:06
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