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2007.12.12
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悪魔の降誕祭

~角川文庫、1974年(1997年42刷)~

 電車に乗る機会があったので、久々に電車の友に横溝正史さんの金田一耕助シリーズを読みました。本書には、表題作を含めて3編の短編が収録されています。
 いまでもそんなに変わりませんが、横溝さんの作品を読み始めた中学生~高校生の頃は、なんて魅力的なタイトルなんだ!と、わくわくしながら読んだのを覚えています。横溝さんの作品には、魅惑的なタイトルが多いですね。
 ではでは、内容紹介と感想を。

ーーー
「悪魔の降誕祭」 昭和32年(1957年)12月20日。緑ヶ丘荘の金田一耕助の部屋に、小山順子と名乗る女性から電話がかかってきた。彼女は、近く恐ろしい事件が起こりそうだという。金田一耕助は、等々力警部との約束もあり、午後9時に会う約束をし、それまでに自分のアパートにきたようなら、管理人に言って自分の部屋で待っていなさいという。
 等々力警部との用事を終え、アパートに帰ってきた金田一耕助を待っていたのは、小山順子と名乗る女性―ジャズの女王といわれる関口たまきのマネージャー、志賀葉子の遺体だった。
 驚愕に見開かれた彼女の目は、なにか恐ろしいものを見たかのようだった。そして、金田一耕助の部屋にあった日めくりカレンダーは5枚めくられ、25日を指していた。犯人は、その日に事件を起こすことを予告しているかのようだった。


「女怪」 昭和2X年夏。金田一耕助の物語の記録者である「私」は、金田一耕助に誘われて、伊豆の温泉場Nに休養に出かけていた。そこで、『八つ墓村』事件などの冒険譚もあらかた聞き、暇な時間をもてあそんでいたとき、親しくなった旅館のおかみさんから、興味深い話を聞く。その近くに、近頃有名になってきた一種の預言者、狸穴の行者がいること、そして、墓荒らしの事件が起こっていること…。特に金田一耕助の関心をひいたのは、狸穴の行者の修行場だった。そのもとの持ち主、持田恭平は、金田一耕助が恋している銀座裏のお店「虹子の店」のマダムの夫であった。つまり、マダム―虹子は、そこに住んでいたことがあるということだった。
 墓場荒らしの件もあり、二人で行者の修行場や、墓場のあたりに行くと、行者が箱をもって墓場の方からやって来るのに出くわした。行者がやってきた方に行ってみると、穴を掘られた墓があり、そこに埋められていた遺体には、頭蓋骨がなかった。
 「私」はその後、その墓場での一件を忘れていたが、その事件以来、マダムが狸穴の行者に強請られているという話を聞く。怒りに燃える金田一耕助は、狸穴の行者の犯罪を暴こうと奔走する。

「霧の山荘」 「香水心中」( 『殺人鬼』 所収)事件で訪れたことのあるK高原で休養していた金田一耕助に、江馬容子という女性が接触をはかってきた。彼女がいうに、彼女の伯母―戦前鳴らしていた映画スター、紅葉照子が、30年前に起こった迷宮入りの事件の犯人を見かけ、なにか事件が起こるのではないかと心配だ…ということだった。半信半疑だった金田一耕助が、待ち合わせの時間に待ち合わせ場所に行っても、迎えはこない。霧の深い夜、道に迷ってしまった彼を、アロハの男が迎えにきて、ともに西田家の別荘に向かう。西田は、照子の元夫の姓である。その別荘で、二人は赤黒い液体を流して倒れている照子を発見する。あわてて足を怪我した男にかわり、金田一耕助が電話を借りに近所の邸宅に走り、西田の別荘に戻ってみると、倒れていた照子も、流れていた液体の跡も、アロハの男も消えていた。その別荘には、照子の姉の房子がおり、照子の事件など知らないという。
 狐につままれたような思いにとらわれていた金田一耕助だが、翌朝、西田の別荘の近くで照子の遺体が発見される。耕助が見た照子は、和服を身にまとっていたが、遺体はなぜか裸であった。
ーーー

 冷静に考えると、「霧の山荘」事件で金田一さんがとったある行動は、とんでもないことなのでは…と思ってしまいましたが、そこはそれということで…。もう一つ、この事件では、金田一さんの滞在を地元の新聞が報じているとのことですが、なんというか、すごいですよね。もっとも、金田一さんは探偵というより、記録者のYさんもおっしゃるように、犯罪研究家としての性格の方が強い―一種の専門家だと思えば、納得できなくもないですが。ふつうの探偵が、自分の動向を報じられたら、捜査どころではなくなるでしょうから…。
「悪魔の降誕祭」「女怪」で感じたのは、金田一さんが、ある種の人の死を抱えながら生きることを選んでいるのかなぁということ。金田一さんはいつも飄々としていますし、事件の捜査中でも、興味深いことがあれば口笛を吹きそうになるなんてこともありますが、これだけの経験をしていると、ものすごく重たいものを抱えながら生きているのかな、と感じたりもします。ふと、映画『犬神家の一族』の石坂金田一を連想しましたが、あのラストの感じ。あの感覚を思いました。
 特に、「女怪」は印象的です。金田一さんの恋にはほのぼのしますが、その後の展開、金田一さんの激昂などは、ぞくっとするものを覚えました。
 金田一さんは、本当に素敵な探偵さんです。
(2007年12月10日読了)







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Last updated  2007.12.12 06:20:29
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