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2007.12.16
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島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』
~光文社文庫、1994年~

 舞台は、20世紀初頭のロンドン。主人公は、当時ロンドンに留学していた夏目漱石と、シャーロック・ホームズという、島田荘司さんの作品の中では異色作ですね。ジャンルはユーモア・ミステリでありながら、事件は魅力的な謎に包まれています。
 ではでは、内容紹介と感想を。

ーーー
 留学先で、無愛想な女主人のいる家に下宿していた漱石は、就寝時、奇妙な音に悩まされるようになった。やがて、「この家を出て行け」という声が聞こえるようになり…。
 シェイクスピア研究の個人指導を受けていたクレイグ先生にこのことを相談すると、先生はシャーロック・ホームズという奇人を紹介してくれた。話を聞くだに不気味な人物だと思ったが、その夜も「幽霊の声」が聞こえたこと、ホームズへの相談が無料ということで、漱石は彼のもとに趣く。
 ホームズとその兄は、自分について無茶苦茶な推理を展開した。誤りを訂正すれば、ピストルをぶっ放す始末。漱石は、ワトソン博士の助言で、ホームズの言葉を訂正しないように気をつける。相談事については、「幽霊はもう出ないよ」との助言。実際、それから幽霊の声は聞こえなくなった。
   *

 翌日、レストレイド警部から連絡が入る。現場は、あの依頼人の家。依頼人の弟が内側から釘で打ちつけた密室状態の部屋で、弟が死んだ。その遺体は、ミイラ化していたというのだった。
 私とホームズは、「東洋の呪い」の関わる事件であるため、ナツミのもとへ知恵を借りに行く。
ーーー

 夏目漱石の幻の原稿と、ワトソン博士による未発表の原稿が交互に並べられるという構成です。
 私は、夏目漱石の作品はあまり数を読んでいないので、その節のパロディっぷりはよく分からないのですが、ワトソン博士の節のパロディは分かりました。懐かしい気分になりますね。
 上の内容紹介にもちょっと書きましたが、漱石視点から見たホームズのエキセントリックぶりは、ホームズのイメージを覆すほどにユーモアが強くて、面白かったです。いや実際、そんなこともあっただろうなと思わされました。石崎幸二さんの作品で、作中人物のミリアとユリが、ホームズネタのパロディをしていたのを思い出しました。
 一方で、ワトソンの描くホームズは、あのホームズなんですよね。このギャップもまた面白いです。
 それでいて、事件の謎は、その朝まで生きていた人物が、密室状態の部屋の中で、ミイラ化して死んでいたという、なんとも魅力的な謎なのです。
 解決も鮮やか(?)で、面白かったです。
(2007年12月13日読了)





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Last updated  2007.12.16 06:54:21
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Re:島田荘司『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』(12/16)  
torezu  さん
こんにちは。こちらからもTBさせていただきました。
パロディものは個人的に大好きなので、この作品も非常に楽しめました。
ホームズはタイプ的には、島田さんの描く御手洗さんと同じように奇人タイプですが、実際に女装して歩いたりしたのかなぁと、色々想像してしまいました。
が、何といってもラストの落ちが良かったです。
パロディなのに本当にあったかのように書けるというのはすごいと思いました。次回は、また違ったパロディも読んでみたいものです。w (2007.12.16 14:06:34)

torezuさんへ  
のぽねこ  さん
コメント&TBありがとうございます。
本当に、ホームズと御手洗さんと似ていますね。女装のパロディは楽しかったですね。背の高さなどの不自然な点に、たしかに!と思いました(笑)
ラストも良かったですよね。
私は、パロディといえば筒井さんの短編を何編か読んでいるくらいなので、島田さんによるパロディというのはとても新鮮な感じがしました。楽しいですね。 (2007.12.16 18:48:03)

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