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2007.12.26
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辻村深月『名前探しの放課後(上・下)』
~講談社、2007年12月~

 辻村深月さんの最新作です。とても、素敵な物語でした。
 それでは、内容紹介と感想を。

ーーー
 依田いつかは、違和感を覚えた。いつの間にか、自分は、ジャスコの屋上で、友人の秀人と話している。しかしこの状況は、3ヶ月前にも経験しているはずだった。
 3ヶ月後には、同じ学年の生徒が死んでしまう。そのことを知っている依田いつかは、自分がタイムスリップを経験しているのではないかと考え、中学校が同じだったクラスメート、坂崎あすなに相談する。
 ハンサムで、女子にもてながらも、付き合う女子に対する態度のあり方などから、いつかには良くない評判もあった。しかし、ほとんど初めて声をかけたにも関わらず、あすなはいつかの話を信じてくれた。そして、3ヶ月後に自殺するであろう「誰か」の自殺を防ぐことに、協力してくれることになった。

 そんな中、移動教室の授業であすなの席に座る生徒が、自殺をほのめかすようなノートをあすなの席に置き忘れている、という出来事があった。その生徒の名は、河野基。あすなは、彼が同じく置き忘れていたペンを返しに行ったとき、河野が小瀬友春にいじめられている状況を目にすることになる。
 いつかたちは、河野を助けるべく、彼と交流をとるようになる。河野は、水泳のフォームがひどいということがきっかけで、友春にいじめられるようになったという。そこで、きちんと泳げるようになり、友春に認めさせよう、という話が決まる。怪我をきっかけに水泳から離れていたいつかがコーチとなり、河野の水泳の特訓がはじまる。
 努力する河野を見ながら、小学生の頃に水泳に挫折していたあすなも、25メートルを泳ぐことを目標に、水泳に挑戦する。
ーーー
 辻村さんの小説には、たいてい腹立たしくて仕方ない人物が登場して、その人物をめぐる不快な物語にしんどい思いをすることもあるのですが、本作はそれほどでもありませんでした。いじめの描写は不快でたまらないのですが、水泳の練習がはじまるあたりから、なんだかとても爽やかな青春物語といった感じで。
 同時に、ラストでは、いくつかの違和感がすーっとつながります。そこで浮かび上がる真相。これは泣きました。
 ただ一つ、思うことを文字色を変えて書いておきます。<反転> それは、河野くんが水泳の練習をし、上達していくこと。泳ぎが苦手だということは演技ではなくて、きちんといつかくんと練習することで上達していったのだと、これだけは思いたいです。 <ここまで>
 それから、本書には、チヨダ・コーキさんの名前が登場するなど、既に発表された辻村さんの作品に元ネタがあるシーン(設定)もいくつかありました。読み返したくなる作品もあるのですが、面白いし感動して泣くのも分かっているのですが、同時に不快な気持ちになるのも分かっているので、決意がなかなか…。
 とまれ、本書は表紙も素敵で、物語も素敵で、良い読書体験でした。
(12月23日読了)





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Last updated  2007.12.26 06:59:20
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