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2008.03.05

横溝正史『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』

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テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24672)

カテゴリ：本の感想（や・ら・わ行の作家）

～角川文庫、1977年～

　横溝正史さんの処女作「恐ろしき四月馬鹿」を含む初期短編集です。こちらは、大正編。昭和編は、『山名耕作の不思議な生活』にまとめられています。
　全部で１４編の短編が収録されています。全体的に、ユーモアやぬくもりあふれる短編も多く収録されていて、嬉しい１冊です。
　では、簡単にそれぞれの短編にコメントを。

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「恐ろしき四月馬鹿」 エイプリル・フールに、殺人現場を偽装したある学生。ところが、元気で帰ってくるはずの被害者役の学生の遺体が発見されたという…。
　中学校の寄宿舎を舞台にした短編です。サスペンス色あり、論理的な解明もありで、面白いです。

「深紅の秘密」 主人公のもとに泥棒が入り、三冊の書籍を盗んでいきます。ところが、犯人が残したメモと、盗まれた本には食い違いがあり…。
いろいろ横溝さんの作品を読んでいるのでネタは分かったのですが、解説の中島河太郎さんによれば、日本でこの症状をトリックに用いた初めての作品であろう、とのこと。いま読めば分かるネタですが、当時は衝撃的な作品だったのでは、と思います。＜ここまで＞

「画室(アトリエ)の犯罪」 アトリエで死亡した画家。現場に居合わせた女が犯人だと思われるが…。従兄についてはじめて殺人事件に挑む素人探偵の話です。

「丘の三軒家」 井戸に落ちて死亡した男の息子がその家にやってきて、埋められたその井戸を掘り返す。果たして、男の死は事故ではなく殺人だったのか。

「キャン・シャック酒場(バー)」 こちらは、ユーモアあふれる一編。友人にバーに誘われます主人公。友人はこのバーが素敵だと言うのですが、私には次第に不愉快なことばかり起こり…。
　横溝さんの作品の魅力は、それがどろどろした殺人事件を描いていても、どこか温かみがあることだと思うのですが、こちらはそうしたほのぼのした部分が押し出された作品です。もちろん、このバーのどこがワンダフルなのか、わくわくしながら読み進める楽しみもあります。

「広告人形」 自分の顔の悪さを気にしながら、外に出たい気持ちを抑えられない男が、広告人形の中に入って町を歩く楽しみを覚えます。やがて、犯罪者を告発する意味もこめて、それらしく見える人にそれらしい広告を配ると、なんと本当に犯人を捕まえられそうな気配に…。
　サスペンス色あり、ユーモアあり、楽しい一編です。

「裏切る時計」 気持ちがすれ違いはじめた妻を、ついに殺してしまった男の告白。彼はいったい、どんなミスを犯したのか…。
　真相を知ると、やりきれない気持ちにもなる一編でした。

「災難」 大阪に、幼なじみの女の子がやって来るというので、やりきっていた男。彼女に大阪の街を案内した後、彼にはとんでもない災難が待っていた…。
　関西弁の一人称で、こちらも楽しい作品です。しかし彼にしてみれば、災難以外のなにものでもないお話で…。

「赤屋敷の記録」

「悲しき郵便屋」 気になっていた女性に、暗号らしき文章が届くことを知った郵便屋は、暗号を解読し、差出人になりすまして彼女に手紙を送ります。そんな彼を待っていたのは…。
　ユーモア色もある一編です。

「飾り窓の中の恋人」 これは面白いです。奇抜な行動で有名な友人の今度の恋人は、なんと飾り窓に飾られたマネキンというのです。本書の中でも印象的な作品です。

「犯罪を猟る男」 デパートで起こった殺人事件。関係者の男に話しかけてきた青年は、この事件のことを独自に調査しているという。
　サスペンス色も強いですが、謎解きも面白いです。

「執念」

「断髪流行」 長かった髪をばっさり切った恋人が、浮気しているのではないか…。疑惑をいだいた青年を待っていたのは、なんともショッキング（？）な事実でした。
　こちらもユーモア色の強い１編です。
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　それぞれの紹介でも書きましたが、全体的に、ユーモア色の強い作品が多いです。
　表題作など、謎解きも面白い作品も含めて、横溝さんのバラエティ豊かな短編を集めた本書は、読んでいてその面白さに安心できました。

＊表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。

(2008/02/28読了)

＊追記。文字色反転すべきところを（そしてする予定だったところを）そのままの文字色でアップしていました。閲覧者の方の興をそいでしまううっかりで、申し訳ありませんでした。

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