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2008.06.15
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~講談社文庫、1990年~

 清水義範さんの短編集です。タイトルは誤解を招きそうですが、小説です。本書は、吉川英治文学新人賞受賞作だそうです。
 まずは、それぞれの作品についてコメントを。

ーーー
「猿蟹合戦とは何か」 太宰治はなぜ猿蟹合戦を書かなかったか、という問いにはじまり、あの物語の意外な意味を浮かび上がらせるという形の、評論のパロディです(不勉強にして知らなかったのですが、丸谷才一さんの『忠臣蔵とは何か』という著書があり、こちらのパロディだそうです)。
 表題作にもうかがわれる、国語問題への痛烈な批判もあって、興味深く読みました。

「国語入試問題必勝法」 国語が苦手な受験生に、名家庭教師がつき、国語の問題を解く技を身につける、という話。国語問題の風刺はもちろん、お役所文書への風刺(「悪文でいいということですね」には笑いました)などなど、面白い箇所が満載でした。小説の要約問題も楽しかったです。

「時代食堂の特別料理」 前二作とうってかわって、じんわりと胸にしみる物語です。舞台は、お客さん一人一人に、そのお客にあった「特別料理」を提供する、時代食堂。その「特別料理」を食べた客は、不思議な―懐かしい―体験をし、そして、大切なことに気付くことになります。

「靄の中の終章」

「ブガロンチョのルノワール風マルケロ酒煮」 男が、珍しい食材を使って、美味しそうな料理を作るという話。先の「時代食堂の特別料理」でも感じましたが、料理の描写が素敵で、よだれが出そうになりました(笑)

「いわゆるひとつのトータル的な長嶋節」 長嶋茂雄の解説は、論理的ではなく感覚だけではないか、というよくある思いに対して、具体的な例を挙げて、その解説がとても論理的なことを証明するところから始まります。そして、(私は知らないのですが)村山実さんの解説と長嶋さんの比較を通して、長嶋さんはプラス思考、村山さんはマイナス思考だと示し、いろんなことを二人に解説してもらっています。
 これは笑いました。長嶋さん素敵です(笑)

「人間の風景」 いまはポルノ作家という状態に甘んじている作家が、老人クラブのメンバーが作ったリレー小説を読む話です。こちらも大笑いしました。笑った回数は本書の中で一番多いような。
 楽しく読みました。
ーーー

 聖月さんの記事を拝読していて、清水義範さんの小説が気になっていたので、試してみたのですが、読んで正解でした。これは楽しかったです。
 表題作や「人間の風景」などで大笑いするのも楽しいですが、「時代食堂の特別料理」も良かったです。
 はじめての作家ですので、今回は雰囲気をつかんでみよう、という感じで読みましたが、面白かったです。これからも清水さんの作品を読んでいきたいと思いました。7月にはもう少し読書に時間が割けるようになると思うので、そのときには良い電車の友となるでしょう。

 最近はどうにも忙しく疲れ気味だったので、昨日(14日)は作業は少しにして、ゆっくり過ごすことにしました。古本屋に出かけ、本書を購入、さっそく読んでみたのですが、良い時間になりました。
(2008/06/14読了)





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Last updated  2008.06.15 07:57:10
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