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2008.07.24
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~講談社文庫、1996年~

 清水義範さんの短編集です。10の作品が収録されています。
 では、それぞれについてコメントを。

「私は作中の人物である」 。良いです。「私は踏みつぶされてぺしゃんこになったミミズです」。なぜ読者の皆様は「私」=「ミミズ」と信じるのですか?というところから始まります。小説の人称の問題は高校生のときにも気にかかっていましたが(その後目をそらせました)、面白い問題ですよね。

「魚の名前」 方言では、普段使っている言葉が別の言葉で使われることがあるよね、という話。この物語は、なんだか不安な気持ちにさせられました…。ちなみに、岡山弁で「えらい」には、「しんどい」という意味がありますが、仙台では通じませんでしたね… (どこまで通じるのでしょう?)。

「どえりゃあ婿さ」 歴史物です。私は日本史は苦手ですが、こういうのは割と好きです。

「全国まずいものマップ」 旅先にでて美味しいものを求めるなんて甘い!美味しいものなんてどこででも食べられるのだから、まずいものこそ探すべき!というルポ(フィクション)です。それぞれの小見出しが素敵です。「悪夢に近い旅館の夕食」などなど…。笑えます。

「重箱の隅」 日本でどれだけの人が知っているのか、というマイナーな問題を出すクイズ番組です。今回は、「畦倉商事株式会社鴨居市水田町寮クイズ」です。こういうの大好きです。

「保毛田岩の由来」

「文字化けの悦楽」 戒律の厳しい宗教の国で、官能小説家が仕事をします。…が、その国で買ったフロッピーのせいか、肝心の作品部分はひどい文字化けで…。これもすごいですね。

「とねちり」 落語風のむちゃくちゃ話です。繰り返しになりますが、こういうの大好きです。

「船が州を上へ行く」 ジェイムズ・ジョイス(柳瀬尚紀訳)『フィネガンズ・ウェイク』のパロディ(?)です。その柳瀬さんは、解説でこの作品を「挑戦」と言っておられます。『フィネガンズ・ウェイク』は、図書館でぱらっと見てみて、すごいと思いつつ挫折したのですが、本作もすごいです。

「観戦記」 これはなんというのでしょう…夫婦が将棋(囲碁?そんな感じのゲーム)で勝負するのですが、一手ごとが、「ガスレンジが油でこてこてじゃないか」みたいな意味をもつのです。その解説が楽しくて、案外わくわくしながら読みました。「全国まずいものマップ」といい、「重箱の隅」といい、よくこんなの思いつくなぁという作品で、楽しいです。

ーーー
 これはほとんどハズレのない、面白い作品集でした。
(2008/07/22読了)





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Last updated  2008.07.24 06:41:59
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