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2008.12.12
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筒井康隆『旅のラゴス』
~新潮文庫、1994年~

 ただ、感動しました。
 以下は適度にあらすじやエピソードも交えながら書いていきますが、私自身はなんの予備知識もないままに読みましたこともあり、先入観なしに本書を読もうと思う方は以下の記述に注意してください。むしろ冒頭の一言だけで本書に興味をいだいて下さった方は、できればなんの先入観もなしに読んでいただきたいと思います。私の言葉のせいで先入観が生まれ、感動が薄れるのは悲しいことですから。
 詳細なあらすじも、大きなイベントやその結果など、いわゆる「ネタバレ」になるようなことも書きませんが、以下の文章は文字色を反転させておきます。


 同じく筒井さんの作品「幻想の未来」以来の衝撃と感動でした。これはすごいです。べつだん泣き所というわけでもない、なにげないシーンでも感動して、電車の中で涙をこらえるのが必死でした。
 たとえば、第1章「集団転移」。「転移」という、いわゆる瞬間移動が行われる世界ですが、成功するには時間がかかったり、移動後に具合が悪くなったり、難しいものもあります。
 南へ向かうラゴスは、北へ向かうムルダム一族と合流し、ひとまず彼らと北へ向かいます。そしてラゴス自身は行ったことのない、彼らの故郷へと転移するのですが…。もうそのあたりから感動でした。

 感動の理由のひとつは、まずなによりもラゴスの人柄にあります。旅の中で、ある女性が彼のことを、あなたは自分が正直でいい人間だということを周囲の人にまき散らすみたいに教えているんだよ。ことばほど確かではないにしても、確かなものだよ、と評します。なにげない彼の仕草、言葉、思考の描写から、ずっとそれを感じていて、この言葉に深く共感しました。

 旅の中では、悲しい出来事、事件もあります。それでも、そこで落ち込むのではなく、さらに先を見据えるように読み進められました。

 とにかく、素敵な物語でした。


 いま生きていて、悲しい出来事ももちろんありますがまわりには素敵な方々がいて、そしてこうして素敵な物語に出会えることを、本当に幸せに思います。

(2008/12/10読了)





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Last updated  2008.12.12 06:40:47
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