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2008.12.31
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~岩波書店、2008年~

 岩波書店から刊行が始まったシリーズ「ヨーロッパの中世」の第8巻(第二回配本)です。儀礼と象徴という観点から、中世史を見直した興味深い1冊です。
 本書の構成は以下の通りです。

ーーー
序章 「カノッサの屈辱」は出来レースだったのか
第一章 支配の道具としての儀礼
 1 国王の三つの儀礼
 2 君主化する教皇儀礼

 5 特権を可視化する貴族たち
 6 社会関係の中の裁判と仲裁
第二章 家族とその転成
 1 人生最初の儀礼=洗礼
 2 家と家を結ぶ婚姻儀礼
 3 死にゆく者とのやりとり
 4 名前の力
 5 霊的家族と聖家族
 6 拡張する家族観念
第三章 身振りと感情表現
 1 典礼の身振り

 3 商人と職人の身振り
 4 友愛と怒りの深層
 5 感情の軌跡としての身振り
第四章 連帯と排除の記号
 1 表象としての身分制社会

 3 ユダヤ人・娼婦・ハンセン病患者
 4 聖痕と魔痕
 5 救済のシンボル
第五章 象徴思考の源泉
 1 身体のコスモロジー
 2 動物のヒエラルキー
 3 色のモラル
 4 数の神秘
 5 時間の象徴
結論 儀礼と象徴のヨーロッパ

参考文献
索引
ーーー

 まず序章。ちょっと俗っぽい副題ですが、面白いです。高校世界史でも勉強するカノッサの屈辱ですが、背景を掘り下げ、しかも儀礼という観点から見ると、ずいぶん違った姿に見えてきます。俗人(皇帝)が聖職者を叙任することができるか、という問題をめぐって皇帝と教皇が対立するいわゆる叙任権闘争の中の重要な事件。神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世は、この権利をめぐって教皇から破門を言い渡されます。そして、1077年初頭、雪の降る中、ハインリヒはカノッサ城に滞在していた教皇グレゴリウス7世に、面会を求めて謝罪するという事件です。
 本書を読むと、流れはそうでも、ハインリヒが謝罪に赴くまでに周囲の人がかなり手回ししていたということや、謝罪の在り方もきわめて儀礼的だったということなどを知ることができて、あらためて本書を読もうという気持ちもかき立てられました。

 本書の中で特に興味深く読んだのは第二章と第五章です。順番が前後しますが、第五章の2節、3節はミシェル・パストゥローの諸論考で勉強していることも援用されていて、理解が深まります。
 第二章では、特に代父・代母についてふれている部分が興味深かったです。赤ちゃんに名前をつけるのは、その両親ではなく彼らの役割になるのですが、その制度というか慣行の事情に興味を持っていたのです。ここでは概説的なこと(その起源など)は分からず物足りなかったのですが、それでも、代父・代母と彼らが名前をつけた子供、あるいはその両親とが霊的な親族となるということや、代父・代母になると幸運がもたらされると信じられたので、希望者がひけも切らなかったということなど、興味深いことを知ることができて良かったです。

 結論が本書の中でいちばん興味深く読めました。儀礼と象徴の性格を考えると、初期中世の重要性も浮かび上がってくること、また、それらが形骸化し、「儀礼と象徴のヨーロッパ」から「式典と寓意のヨーロッパ」に移行することが、中世から近代への移行と重ねられている点も本書の中で最重要の部分でしょう。

 引っ越しやその準備でばたばたしている中で読んだので、流し読みの部分も多いですが、どの章も興味深く読みました。

(2008/12/28読了)





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Last updated  2008.12.31 07:52:45
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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