のぽねこミステリ館

Profile

のぽねこ

Calendar

2009.06.08

有栖川有栖『壁抜け男の謎』

テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24672)

カテゴリ：本の感想（あ行の作家）

～角川書店、2008年～

『ジュリエットの悲鳴』に続く、ノンシリーズの短編やショートショートを集めた作品集です。まずは収録作品を掲げた上で、印象に残った作品を中心に感想を書いていきます。

ーーー
ガラスの檻の殺人
壁抜け男の謎
下り「あさかぜ」
キンダイチ先生の推理

ミタテサツジン
天国と地獄
ざっくらばん
屈辱のかたち
猛虎館の惨劇
Ｃの妄想
迷宮書房
怪物画趣味
ジージーとの日々
震度四の秘密
恋人

　最初の二編は、読者への挑戦もついた犯人当てミステリです。「ガラスの檻の殺人」は、周囲に逃げ場のない狭い範囲の中で起こった殺人事件、「壁抜け男の謎」は、絵画盗難事件となっています。

　いろんな作家へのオマージュ（パロディ的要素のあるものも）もあります。「下り「あさかぜ」」は鮎川哲也さんと西村京太郎さん、「キンダイチ先生の推理」と「ミタテサツジン」は横溝正史さん、「彼方にて」もある有名作家を題材としています。
　私が特に嬉しかったのは、横溝さんにまつわる二編ですが、さらに「キンダイチ先生の推理」には、岡山県は真備町にある横溝さんの疎開先や資料館について言及があり、嬉しかったです。私自身も横溝さんの疎開先などに遊びに行ったことがあり、そのときのことはこちらの記事に書いています（再訪して、今度はいろいろ写真も撮ってみたいと思っています）。

　上で「彼方にて」にふれましたが、この作品と「ジージーとの日々」はどこかセンチメンタルになるような、味わい深い作品だと思います。

　「Ｃの妄想」はほんの８ページのショートショートですが、最初の媒体を思えば、これは巧い、とうならされました。

　こんな感じで、バリエーション豊かな物語が収録されています。寝る前に少しずつ読み進めたりしていましたが、楽しかったです。

(2009/06/06読了)

お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう