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2009.11.30
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~文春文庫、2006年~

 今回、奥田さんの作品に初挑戦してみました。本書はとても有名だと思いますが、なるほど、面白かったです。
 変わり者(というか変態??)の精神科医、伊良部一郎先生が活躍する5編の短編が収録されています。訪れる患者さんたちの症例もバリエーションに富んでいて、伊良部先生の対応も光ります。
 それでは、簡単な内容紹介と感想を。

ーーー
「イン・ザ・プール」 内蔵の不調があるものの、内科で診てもらっても異常なし。和雄は、内科医から、神経科に行くよう促される。
「いらっしゃーい」と甲高い声で迎えられた和雄は、まるでトドのような伊良部と対面する。そして伊良部に運動を勧められ、十数年ぶりに水泳を始めたところ、今度は水泳中毒のようになってしまい…。

「勃ちっぱなし」 別れた妻のことを夢に見たある朝から、哲也は自分のモノが勃ったままおさまらなくなってしまった。日常生活にも不具合を感じた哲也は、伊良部総合病院を訪れる。しかしすぐには解決せず、ついには会社の接待旅行へ行かざるをえなくなり…。

「コンパニオン」

「フレンズ」 一日200回はケータイでメールを送り、携帯電話を取り上げられると左手が震えてくる…そんな雄太を親が心配し、彼は神経科に通院するようになった。けれど、ケータイでのメールを特にやめるようにはならず、変わったことといえば、医者の伊良部からどうでもいいメールが送られてくるようになったことくらい。そして、いくつもの遊びの約束をぶつけていたある日、急にケータイが使えなくなり、雄太の不安は高まってしまい…。

「いてもたっても」 きっかけは、煙草の始末が気になり始めたことだった。ルポライターの義雄は、外出しても、何度も煙草の火の不始末が気になり、マンションに戻るという行動を繰り返すようになった。調べてみて、自分が強迫神経症になっているのを知り、伊良部総合病院を訪れる。ところが医師は、カウンセリングもしない。それどころか、煙草だけでなく、ガス漏れ、漏電などなど、いろんなことが火事の原因になるではないかと、かえって義雄の心配は増えてしまう。また、自分が取材して記事を書いた男が、事件を起こしてしまい…。
ーーー

 伊良部先生がカウンセリングをしない、という方針を貫いているのが、またなんとも凄いなぁと思いました。自分なら、この先生はあわないと思いつつ、物語の中ではしっかり活躍していらっしゃるのが読んでいて楽しかったです。
 先生の行動は無茶なのですが、実は(全ての短編に当てはまるわけではないですが)、患者の行動に同化し、またそれを極端にしているのだな、ということに気付きました。そして患者は自分の行動を相対化して見ることができ、結局は「冷める」というか。それを特に感じたのは、「フレンズ」での伊良部先生のメールです。雄太くんがしているのは、結局はそういうことなんだよ、と(しかし伊良部先生も、そのことに気付かせてあげようとしてメールを送っているわけでもありませんし、また雄太くんもなかなか気付かないのですが…)。
 そして、無茶ばかりしているような伊良部先生ですが、「コンパニオン」のなかでは、まさに「もしかして名医?」と思わされるような発言もします。きっとむつごい感じの先生なのでしょうが、その活躍を楽しんで読めました。
 というんで、面白い一冊でした。
 続編の『空中ブランコ』も読んでみたいです。

(2009/11/29読了)





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Last updated  2009.11.30 06:56:01
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