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ぬるま湯雑記帳
岡田英次編・壱
【岡田英次編】其ノ壱
オクダエイジではありません。ワタクシは「エイジ」と呼ばせていただいております。国際派俳優にむかって無礼です。でも「エイジ」で通します。
☆エイジお写真(『砂の女』より)
<きっかけ>
2年前の夏、前作のフジテレビドラマ『白い巨塔』をビデオで初めてみて エイジに遭遇。カッコいいと思う。その後『砂の女』を見てハマる。
ぬるま湯感想INDEXエイジ用
↑みづらい…。今後修行いたします。
*
オレンジの文字
の作品は感想がまだ書けておりません。
あ行
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悪女かまきり
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白い巨塔(1977フジテレビ版)
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[は]
博徒解散式
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[ひ]
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/
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ひめゆりの塔
/
ひろしま
[ふ]
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ま行
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水戸黄門
[む]
無常
や行
[や]
山びこ学校
わ行
[わ]
吾輩は猫である
/
若き日の啄木 雲は天才である
『白い巨塔』
1978~79年 フジテレビ
よくぞ、よくぞやってくれた。全31回の厚みのある作り。原作を読んだのは10年くらい前だけど、それもベラボーに面白かった。ビデオは1週間かけて見ておったが、山本學とともに怒り、児玉清に拍手を送り、岡田英次と清水章吾に惚れ(これはシュミ)、中村玉緒に涙し、河原崎長一郎に歯噛みし、太地喜和子とともにたみやんをからかい、そしてたみやんのずるさに反発しながら魅かれ、むかえた最期に合掌するという感情移入しっぱなしの1週間でありました。「医療」とは全く別の次元で渦巻く欲望にとらわれ「起こるべくして起こった」医療ミス。「白い巨塔」といわれる大学病院の実態が暴かれてゆく。原作とドラマの多少の変更は目をつむる。今はへたれたフジテレビだが、この作品を生み出した過去がある。故にフジテレビ万歳。この他にも曾我廼家明蝶、金子信雄、渡辺文雄、加藤嘉、中村伸郎、小沢栄太郎、大滝秀治等々等々、ものすごい顔ぶれ。それにしても多くの方々が鬼籍に入られた。それを思うと泣けてくる。もうちょい早く生まれたかった…。おっさんが主人公でおっさんが脇を固める。おっさん達がまだまだ元気だったころの作品。
『砂の女』
DVDオリジナル版 1964年 監督:勅使河原宏
くすぶっていたエイジへの想いがいっきに吹き出し、生まれて初めて買ったDVDがこの作品。いわずと知れた安部公房の傑作の映像化。私は大好きで何回も何回もみております。昆虫採集のため訪れた砂丘で、脱出不可能な砂地の中の家に捕らわれてしまった男と、家主の女。逃げようとする男とそれをひきとめようとする女のかけひきは、女の圧勝!特になにか策を弄しているわけではないのになあ。この女が岸田今日子。このおヒトの演技はすごいな。引力がある。だからエイジは砂地から出られない。
しかしエイジはガタイがよろしい。なんか、ジムとかいってむきむきの筋肉をつけているってのじゃなくて、子どものころからお手伝いをして自然に筋肉がついちゃった、てな感じ(注:妄想です)。白ケツはまぶしかった!煙草は両手で吸えてるし、器用だなあと感心しました。とにかく惚れた。
言いたいことはいっぱいあって、うまくまとまりませんが、エイジが作った「希望」という装置は映画でみていると都合3回‘変態’します。それは外に逃れるための「希望」だったものが、砂地で暮らしてゆくための「希望」に徐々に変わっていってます。その変化をお楽しみください。その他、海をみるエイジの表情の変化や「ラジオ」の意味、岸田今日子がエイジを搦めとってゆく手法、村人の存在等々に注目するといろいろな発見ができます。ワタシどんくさいので何回もみて気づいたことばかりですが。衣装や小道具かなり凝ってます。オープニングも大好きです。この映画をみてからというもの、思い存分水が飲めて湯船につかることのできる環境にいることに幸せを感じるようになり、さらには若干の砂丘恐怖症と、「石鹸の泡立てる音を聞くとぞわぞわする症」を発症いたしました。あと、砂もなんだかエッチに見えてきます。
『香華』前・後篇
1964年 監督:木下恵介
原作は有吉佐和子だそうです。読んでないけど。放蕩癖の母と彼女に振りまわされる娘の明治~昭和の半生記で、エイジは馴染の芸者だった娘に思いを寄せつつもよき理解者としての立場から越えることなく亡くなった政治家の役。『砂の女』と同時期の作品なんだけど、こっちはべらぼうに年を食ってみえる。「わし」とか言ってるし。まるきり別人だ。しかも藤岡弘も真っ青の眉毛の太さ。エイジは作品によってよく眉毛の太さ濃さが変わる。不思議。この映画では絶対カいてる(ウえてる?)…と思う…。しかし娘役の岡田茉莉子はきれい。母親役の乙羽信子はみごとに憎らしい。
『遥かな時代の階段を』濱マイクシリーズ
1995年 監督:林海象
号泣した一品。しかも勘違いで。こうベタな探偵さんのお話はワタクシの性にあわない。意図的に紋切り型の名探偵ものスタイルにしたような感じなんだけど、「わざとこういう演出しましたよ~」て感じがイヤ。で、大層ワタクシの肌にあわないこの映画、エイジの役もあまり魅力的でなく、しかも最後はしょもないおヒトに殺されてしまう。これが彼の遺作だと思ったら泣けて泣けてしかたなかった。風呂場で頭を洗いながら号泣。あとでもいちど調べてみたら、遺作は別でありました。あー、でもエイジの役は山崎努なんかだったらよかったのかなー。エイジは感情や感性で動くというより、理知的な役が似合うと思うんだけど。
『鬼平犯科帳』白根の万左衛門
1994年 フジテレビ
エイジ最後のテレビ出演作品。泣いた。死の床についている盗賊のおかしら万左衛門役。すごいな、歳を重ねても声のハリは若いころのまま。また渋い声なんだな、これ。咳き込む場面は見ているこっちが苦しくなってくる。ほんとに死んでしまいそうな勢いで心配だった。ちなみに鬼平と直接言葉を交わしたり出会ったりすることはなく、万左衛門の死の直後鬼平が彼の一味を捕らえるという筋書き。「殺さず、女を犯さず、貧しきものから盗まず」を貫いた万左衛門を偲びつつ鬼平が「一度話がしてみたかった」と言うところでジプシーキングス「インスピレイション」。これで泣かずにおれようか。
実際の収録でもきっとエイジと吉右衛門は会わなかったと思うんだけど、故にそれは吉右衛門の実際の言葉であり(注:妄想)、私の気持ちでもある。エイジ、一度話がしてみたかったよ。心からそう思う。涙。ちなみに原作とはだいぶ違ってます。エイジが出てるからというのではなくて、ドラマのほうが「いい」話。
『博徒解散式』
1968年 監督:深作欣二
「おっ、やくざ映画に出演だ!エイジはどんなやくざだ!」と思ってみていたらやくざの組をつぶしにかかる警察の本部長役(だったかな)でした。ぴちっと七・三。冷徹無比。すげーかっこいい。いっさいの義理や人情を否定する立場は命を懸けて任侠の意地をとおした「古い男」鶴田浩二とは好対照。しかし任侠映画は「やくざ映画」になると面白味がなくなってしまう。着流しに日本刀じゃないとなあ。映画の中でも「時代の流れ」という言葉がキーワードとして多く使われていた。ぎりぎり任侠の心意気が残った作品なのかもしれない。しかし昔は七・三って堅気の髪型だったのね。現在は若干見受けられるものの、ほぼ絶滅状態。
『人でなしの恋』
1995年 監督:松浦雅子
これが彼の死後に公開された遺作でした。温和な美術学校の先生役。品のある好々爺。なんといっても印象的だったのはエイジと主役の阿部寛との身長差。30センチ以上あったんじゃなかろか。大正に生を受け戦争も体験した国際派俳優エイジと、昭和も半ば以降に誕生したモデル出身阿部寛の間には、こんなにも進化の差があったのでした。どこといって具合が悪そうな風にも見えず、この作品が遺作になるとはエイジ自身も思っていなかったのでは。もっともっと演じるつもりだったんだろうなあ。嗚呼。「人でなし」の阿部寛の愛したもの、それは…。私は絶対木の根っこだと思っていました。違いました。原作読んでなかったもんで。
『ひろしま』
1953年 監督:関川秀雄
ガッコの先生に共産系が多い理由がなんとなく分かった作品。子どもたちに軍事教育を施し、戦争に巻き込み、命を奪ってきたことに対する十字架が教師にはあるんだなあ。日教組が作った映画ってのもびっくりした。当時は良くも悪くも骨のある組織だったのね。戦後広島に赴任してきたエイジ演じる英語教師は、原爆のこともそれが残した爪あとも知らないが、被爆した生徒たちを通して少しずつ理解をしてゆくという、いわば狂言回しの役。作品のほとんどを占める原爆投下後の広島市街のシーンは、とにかくハンパじゃない数の出演人数。子どもらのけなげな演技。泣けるというより息を呑む。銃後でのあまりに理不尽な死に愕然とする。確かにこの時代で放映するにはいろいろ問題箇所はあるけれど、四の五のいわずに今学校でみせりゃいいのに、と思う。今の子らも感じるところはたぶんにあるはず。
話は変わってエイジはスーツにネクタイ、ソフトなオールバックというびしっとした姿で、まことにまことに美男子だったが、当時の先生ってほんとにそんなだったのかしら。先生がジャージを着るようになったのはいつからなんでしょう。
『ひめゆりの塔』
1953年 監督:今井正
ワタシが中学生くらいだったころ、毎年夏はテレビで戦争映画をやってて、『ひめゆりの塔』も何度か見た覚えがあるけど、この作品のリメイクだったんだなあ。ちょっと話の流れがつかめない部分もあったけど、沖縄戦の悲惨さは十分伝わってくる。第二次世界大戦末期、戦場となった沖縄で看護要員としておびただしい負傷兵の治療や世話をし、自らも戦争の犠牲となった女学生・ひめゆり部隊の話。戦争を起こした政治家や軍人たちは、自分たちが垂れ流したクソ(=戦災)を省みるどころか、そのクソを戦争ともっとも遠いところにいるはずの者たちに拭かせてたんだなあ、とつくづく思う。エイジはこの「ばかげた戦争」に疑問を持ちながらもひめゆり部隊を率いてゆく独身の先生の役。束の間の休息のとき、同僚の先生に「戦争が終わったらいいヒトを紹介するから」と言われ、無言で草にねそべるところが印象的。無理矢理元気を出そうとはしゃぐ女学生の姿は、なんともいえない気持ちになる。
しょうもないことを言えば、髪形だけは皆々きれいだった(特にエイジ)。あと皆標準語。ま、映画だからね。今『ひめゆりの塔』をやるとしたら、エイジの役は上川隆也かな。ちょっと似てるようにみえました。香川京子、可憐。最後の最後まで救いのない映画でした。悲しかった。
『ここに泉あり』
1955年 監督:今井正
「ああ、前向きに生きるって素晴らしい」って素直に思える作品。エイジは市民楽団(の前身のアマチュアバンド)に招聘されたインテリでやや鼻持ちならないバンマス役。こういう、プライドが高くてちょっとキザが入るインテリ役はまさしくエイジにぴったりですね。とにかく仕事がなくて、鉱山やらい病の施設(ここのシーンは絶句)、僻地の学校へと演奏をしにゆき、さまざまな苦労困難を乗り越え、わがままエイジもへなちょこ楽団も少しずつ成長してゆきます。かといって単純な友情やら努力やらの話ではなく、むしろやりきれない人間の濁った部分をみせつけられるお話。
あと、戦後の風俗が随所にみられて、なんだか胸が熱くなります。自分たちの親はこんな感じの世界にいたんだなあと、実際みたことがないくせに懐かしさでいっぱいです。さらにごろごろ出てくる子どもたちのかわいくて、にくらしくて、けなげな「生」の表情は必見。
エイジはバイオリンを弾いているけど、ホントに弾けたのかな。ドウにいってます。いや、もちろん吹き替え場面はいっぱいあるけれど。岸恵子、美しき哉。小林桂樹演じるマネージャーも好き。あっ、肝心なことを。山田耕筰センセが出演!あの音楽室の肖像画、つるぴかはげ丸(不謹慎!)が動いています。
『24時間の情事』
1959年 監督:アラン・レネ
ワタシ、フランス人の心の機微が理解できないわ~。自分のテイタラクを呪った作品。エイジが戦後14年たった広島で、フランス人の女性をくどいてくどいてくどきまくります。国は違えどお互い第二次世界大戦を経験し、広島で出会って愛し合う男と女…。でも、おバカなわたしにゃいまいち話が見えないの(>_<)。素人なのでよく分からないけど、エイジのフランス語はどうなんでしょうか。私は上手だなーと思ってみていました。もともと話せたのかなあ。『ここに泉あり』のバイオリンといい、フランス語といい…エイジやるう。『砂の女』のラブシーンはなんとなくぎこちないような感じだったけど、ああ、そういう演技だったのねーと納得。こちらではまことに日本人らしからぬ西洋風のこじゃれたじゃれあい、睦言が繰り返されます。しかし、男女の語らいに「認識」って言葉なんかがぽんぽんでてくるってのはフランスのお国柄なんでしょうかねえ。エイジがハーフにみえる。きれいなお顔立ちです。
あ、この映画には『ひろしま』がちょっと出てきますよ。勿論『24時間の情事』も反戦映画。
『球形の荒野』
1975年 監督:貞永方久
清張作品。戦後16年経った日本で、ある外交官の「死」をめぐり、終戦工作に奔走した人々、それによって「利害」を蒙った人々の現在と過去が暴かれてゆく。戦後は何年経とうとも戦後なんだなあ。戦争関係の映画をみてると、心からそう思う。もちろん平成に到った現在でも戦争の爪あとはいろんな形で残っているもんね。エイジは外交官の「死の秘密」を知っている外務省のお役人役。彼の死に疑問をもった竹脇無我演じる新聞記者に問い詰められるが、立場上多くを語れない。そのときの無表情というか、冷静であろうと努める表情が好き。今回ちょっとカツゼツ悪し。しかし、白黒映画に見慣れるとカラーはエイジの顔色が悪く見える。
『球形の荒野』の意味、ニブチンの私にしてはめずらしく種明かし(?)の前に分かりました。分かりやすい話ってことかな。たぶん原作のほうが好きであろう。読んでみよっと『大岡越前』伊織センセのスーツ姿もなかなかよろしかったわ。ちょこっと入るナレーションはたみやん(田宮二郎)です。
『日の果て』
1954年 監督:山本薩夫
うおおお、エイジかっこいいぞお!はじめ五分刈りで出てきたときにゃ、モンチッチか昔の緒方拳かと思い(ちょいとクセ毛なのか?)、このまま進行してゆくのかっと危ぶんだが、それは回想のシーンだけで、その後はいつもどおりのふわっとした髪型になり、私を大いに喜ばせました。時は昭和19年、ルソン島。現地の娘(ほんとは現地人と日本人との混血児)と恋に落ち軍を抜けた軍医エイジを、親友である鶴田浩二が上官の命を受け殺しに向かう。鶴田浩二にはエイジを殺す気は毛頭なかったが、最後に二人を悲劇が襲う…。
鶴田浩二は一生懸命になると、口元に力が入って笑ってるように見えてしまうのね。あと、ねっからの江戸っ子なの?過去にみた作品でも「しでじろうさん」「ここはしとまず…」って言っておったが、今回も「しがし海岸」って言ってた(注:ねっからの江戸っ子ではありませんでした)。私は鶴田浩二の関西弁が好きであります。さて、エイジ。どちらかというと感情をオモテに出す演技で、いつもよりは熱いオトコだったような。恋人(島崎雪子このカタ綺麗!)をひょいとお姫様だっこした場面は巻き戻し。最期は絵のような美しさでした。実質的な主人公はエイジです。あー、戦時中日本軍は人様の国にも土足で踏み込み、へんちくりんな軍規のもとで兵隊さんを統率していたんだな。皆日本に帰りたかったろうに。
『真空地帯』
1952年 監督:山本薩夫
全編とおして後味が悪いのなんの。そりゃ軍隊の悪いところを描いた作品だからなんだけど、軍隊ってのは誰も彼も自分以外の者をバカにし見下すことによってわずかな矜持を得、生活するところなんだなあ、と思った。戦時下でなかったら普通のおヒトらなんだろうけどなあ。主人公の木村功の役からして好きになれない。なんだか虚しさが残る作品。で、たぶんこういう感想で監督および作者野間宏の意図は達成してるんじゃないかと思ってる。エイジは軍の検事役。いいとも悪いともいえない、本編ともそれほど密な役割を果たしていない、エイジ的には印象の薄い役。若い花沢徳衛と思った以上に長身だった下元勉、たぶん毛のある金子信雄が珍しかったです。
『飢餓海峡』
1978年 フジテレビ
フジテレビの過去に乾杯!こういう作品をドラマにしていたのね。今じゃ考えられません。文句なしに大好きです。水上勉原作の長編小説。文庫本の紹介には「長編ミステリー」ってあるけどちょっと違うよな。全8話。どん底の貧乏から抜け出すため過去に殺人を犯した名士と、恩人である彼の秘密を守り続けた娼婦。お互いがそれぞれの幸せをつかみかけた時に起こる破綻。戦後の日本を舞台にした哀しい哀しいお話。音楽だけで涙腺をやられるのは『砂の器』以来。胸が痛くなるマンドリンの調べ(音楽担当は真鍋理一郎という方ですが、不勉強ゆえそれ以上のことは未調査)。罪を犯す者、それをかばう者、追う刑事、彼らを取り巻く人々、登場人物が皆哀しい。うわーん。あんまり哀しくなかったのがエイジの警察署長くらい。でも、渋いお顔のため、作風にはまことにぴったりであります。エイジはこのころ歯が悪かったモヨウ。『球形の荒野』の時もそうだったんだな、きっと。50代すぎると歯にくるからなあ。
若山富三郎は勿論のこと、もうもう山崎努と藤真利子が本当によいです。当初は多岐川裕美がキャスティングされてたが、脱ぐのがNG(娼婦役なのに!)で藤真利子に変わったらしい。しかし結果おーらい。はまり役。この二人をキャスティングした時点で8割方成功。最後の最後で「うわっ、それはやっちゃだめ!」というシーンがあります。でも泣く。号泣というのではなく、哀しみがずうっと体の中に残っている持続性のあるタイプのものです。若造の長谷川初範!ぜんぜん分からんかったー。藤真利子の友人カツラギトキコ役、たぶん新橋耐子という方だと思われますが、いい。ああいう演技ができる人、今はいないよなあ。
『飢餓海峡』
1965年 監督:内田吐夢
*エイジいません。
てなわけで、本家本元を見てみました。テレビ版とはだいぶ違いますな。かといって映画版のほうが原作に忠実というわけでもなく。とにかく3時間を越す長編傑作。みごたえあります。三国連太郎=山崎努、左幸子=藤真利子、伴淳三郎=若山富三郎、高倉健=村野武範、主だった配役はこんなです(後者がテレビ版配役です)。ううんと、主人公の2人を比べると三国連太郎はぬらりひょんで計算高く、山崎努は情熱的でトリッキー、左幸子は気のいい女で、藤真利子は哀しい女。さらに伴淳の刑事は味がありヒトのよさがにじみ出ているが、若山富三郎の血の気が多くてしつこい刑事も捨てがたい。健さんと村野武範はどっちも違和感が…。健さんが刑事ってのは、しかも結構威圧的なしゃべりをするってのは、しかも若いってのは、なかなか変な感じ。エイジの署長は映画の方が大活躍。抹茶も点てるしね。このおカタ見たことある。任侠映画で親分さんとかしてなかったかなあ。やはりわたし好みのお顔立ち。…いかん、そんな見方ばっかりしててはバチがあたる。
見る順番が違ってたらテレビ版は噴飯モノだったかもしれないが、テレビ版の、ちょっとメロとエロが入った方が私の性にあうようで。名士の故郷の情景を挿入したテレビ版のほうが「飢餓」をいっそう深めたように思うのです。
『新座頭市物語 笠間の血祭り』
1973年 監督:安田公義
ワタクシが初めて遭遇した、頭の先から足の先までまっくろくろ助のエイジであります。時代劇ではエイジは結構ワルい奴だそうですが、今回は金に汚く生娘好きな(さ~い~て~い~)商人役。代官の佐藤慶と組んで、村の石切り場の利権を狙う。そんなエイジと勝新は一緒にスイカ畑を荒らした幼馴染。勝新の心中如何に。いやー、座頭市面白いです。むかあしむかしテレビでやっていたことはなんとなく覚えているがじっくり見たのはこれが初めて。座頭の市がべらぼうに剣がたち、常人が全くかなわないところ、見事な勧善懲悪、もうスカッとしますわ。佐藤慶の死にっぷり見事。えびぞってたし。エイジはいつ勝新に斬られるのかなー、とワクワクしていたら、自爆でした。うわーん、斬られておくれー。まだ借金を抱える前の岸辺シローなんかも出ております。
『新吾十番勝負』第一部・第ニ部総集編
1959年 監督:小沢茂弘
えっと、なんていったらいいのかな、え~、なんだかすごいお話ですね。徳川吉宗のご落胤であった美女丸が、「諸般の事情」により自分の生い立ちを知らずに剣の道場で育てられるが、ある日父親が吉宗公と知らされ、さらには葵新吾の名を賜り、それからは葵の御紋をカサにきて(?)悪人を退治してゆくっちゅう筋のようです。いくら父親が将軍とはいえ、いくら悪いヤツがいるとはいえ、そりゃやりすぎなんじゃないの?って気がいたします。
大川橋蔵かわいいっすね。ポニーテールがお似合いの、絵に描いたような若者であります。カッコが天草四郎っぽいといえばそんな感じ。とにかく目立つ。ルパン三世が泥棒なのに赤ジャケット着てるのと同じ。しかし…殺陣がね…お粗末…かな…。誰も斬れてないよ、あれじゃ。やっぱり十手と銭がいいのかしら。あ、あとちゃんばらの際の「ずしゃっ」「ざしゅっ」って効果音、ありすぎるのも問題だけど、今回のようにまるきりないのも大問題です。なんか「ぺしっ」って音がしてました。
エイジは「諸般の事情」をつくった張本人。新吾の剣の師匠で新吾を育てあげ、とってもいいヒトらしいのですが、なんてったって将軍の子ども盗みだしてます(一応それなりの理由はあるんだけど)。その時点でいかがなものかと。でも、エイジの忍者姿がみられたので嬉しいわ♪ちょっとヘンでーす♪
『暗殺』
1964年 監督:篠田正浩
新選組の(一応)モトを作った清河八郎が、江戸で暗殺されるまでの経緯を追うことによって、清河八郎の人物像と彼に関係した人々の思惑を描いた作品。霊界丹波の強さと脆さを合わせもった清河はなかなか素敵。強引でつかみどころのない奇妙な男の役としてはぴったりだと思う。地でいけたんじゃないのか?標準語をしゃべる竜馬は佐田啓二。標準語でも思ってた以上に違和感はありませんでした。しかしカッコいいです。エイジは腹黒…というよりは策略家?…いや、やっぱし黒いかな、悪役とまではいかないと思うんだけど…やっぱ悪いか(なにいってんだ)、幕府の老中で清河暗殺の黒幕。たくらんでそうな顔してます。霊界丹波を暗殺する佐々木只三郎は木村功。前から思っておりましたが、声高いですね。エイジと一緒に劇団をたちあげた方でよく共演してたりします。『暗殺』全編オトコくさくて、この雰囲気嫌いじゃありません。
『新吾十番勝負』第三部
1960年 監督:松田定次
朴念仁のトラブルメーカー、汝の名は葵新吾。時代劇版『母をたずねて三千里』のような気もする。とにかく話が盛りだくさんなんですわ。悪人は倒さにゃならない、師匠の仇(エイジのほかに父とも尊敬する師匠がおりまして、前作で宿敵にヤられてしまいました)も討たなきゃならない、江戸城にいる父母には会いたい、剣の修行はつまなきゃいけない、で、あんまり考えないで行動しちゃうからみーんな振り回されちゃって、いらんところでいらん殺生が発生してしまう。挙句の果てにはすべてが台無しに。女心のわからんヤツでもある。映画の最後のほう、雪山で剣の修行をしようと登った山、あれはどこだ?日本アルプス級の山ではなかったか?もちろん合成だけど。ものすごい軽装でした。
エイジは前作よりは将軍の子を盗み出したことを反省しておったが、まだ足らん。新吾の母親お鯉の方はすごい親バカ。つっこみどころ満載の娯楽大作。楽しいけどね。子役がどっかで見た顔だと思ったらやっぱり風間杜夫(当時は住田知仁、本名です)だった。顔って変わるようで変わらないのねー。10歳くらいかなあ、芸達者でした。
『新吾十番勝負』完結編
1960年 監督:松田定次
「寝言は寝て言え」というコトワザがありますが(?)、そのコトワザは葵新吾のためにあるのじゃないかと思ったです。相変わらずの短気と移り気。独自の世界観。「考えるのは明日にしましょう」のスカーレット=オハラとて、もうちっと考えて行動していたぞ。今回もメタメタ。ただ自分でも「近頃の新吾はおかしい」と言っていたので自覚症状はあるようです。
映画が始まったと思ったら、新吾がいきなり滝に打たれていたので、ワタクシ大笑いしてしまいました。今回は四国の諸大名に大顰蹙を買い、彼らとその仲間たちに命を狙われます。ま、べらぼうに強いという設定なので逆に皆ヤられちゃいますけど、みね打ちですけど、あれは新吾が悪いよなー。あんなに偏った御仁がなぜ人々に好かれるのか。かわいいからでしょうねえ。
完結編ということで師匠の仇もとり、わずかな間とはいえ父母にまみえることもでき、剣一筋に生きる決心もついてめでたしめでたし。この新吾シリーズ、評判がよかったのか、こののち番外編や『新吾二十番勝負』とつづきます。ますます拍車がかかりそうですね。今回の子役は目黒ユウキ(当時はカタカナだったんだなー)。このおヒトもさっぱり顔変わらん。特に眉毛は申し開きができません。全編を通していえること、エイジは少々ヅラがきつかったのではなかろうか。てゆうか、なんでこの映画にキャスティングされたんだろ?ちょっと不思議。
『宇宙大怪獣ギララ』
1967年 監督:二本松嘉瑞
エイジ見たさにとうとう未知の特撮(…特撮?)怪獣映画に手を出した、記念すべき作品。早送りしたい気分をグッとおさえて1時間半耐えました。おかあさん、ワタシは我慢強くなりました。火星探査を試みるたびに未確認飛行物体の妨害により失敗に終わっていた調査団。今回その妨害物質の一部を地球にもちかえることには成功したが、その物質より怪獣ギララが発生、関東地域はことごとく壊滅。ギララを倒すテはあるのか…。
エイジはFCFA(FAFC?なんだかわからん)とかいう宇宙研究所みたいなところの所長さんにして博士。意外に登場回数が頻繁で、それが早送りをためらわせたひとつの要因ともいえます。かっこいい。小柄だけど、背広姿の背中は広かった♪ギララはすっぽんと鳥とトカゲを足して足したままのような、パッと見まるきり怖くない、二重あごの、むしろ愛嬌のある顔立ち。びよーんとした触角もとぼけてます。怪獣を何の根拠もなくギララと名づけ、ギララの動きを封じる物質をギララニウムとしたエイジおよび研究員の方々は放射能物質もわしづかみ。…今後も頑張ってください…。
最後ちょっと青春ドラマ風の終わり方。どんなもんなんでしょうか。もしかして青春ドラマなのかも。テーマ曲がいずみたくだし。この曲妙に頭に残ります。
『黄金の犬』
1979年 監督:山根成之
考えたら登場人物は豪華なんだよなあ。『白い巨塔』メンバーはエイジ、島田陽子、坂東正之助、小沢栄太郎。やくざ部門からは鶴田浩二、待田京介、菅原文太。あと、夏木勲(現夏八木勲)や森田健作、誠直也に三田佳子。忘れちゃいけない地井武男。エイジと鶴田浩二は結構共演してるよな。…このメンバーで、どうしてああなる。やりすぎの殺し屋にやりすぎの刑事。そしてやりすぎの犬。このビデオ「ファミリームービ」のところにあったけど、いいのか家族団らんのときに見て。やや問題があるんではなかろか。
熊撃ちのときに主人とはぐれた犬と、通産省の秘密を握って逃亡中の男。男がこの犬の首輪に証拠のマイクロフィルムを隠したことから、男と犬を警察、殺し屋、飼い主がそれぞれ追いかける、という筋。鶴田浩二の刑事って、仁侠映画から入った私にはちと違和感が。殺し屋の地井武男がベラボーに悪人だった。今まであんまり悪役のイメージがなかったんだけど、いやあ見事に悪人ヅラ。特別出演の菅原文太はどんな役かと思ったら、トラック野郎で大爆笑。エイジは通産省の役人で腹黒いうえに保身ばりばりの小心モン。アラレちゃん(古っ)みたいな黒ぶち眼鏡をかけておりました。はみだし刑事の鶴田浩二に捕まって通産省の秘密をハかされるが、手錠をかけられたうえにベルトで鞭打たれ、しかもピストルまでつきつけられて、半泣き。二人ともいいトシしたオジサンなのにー。『日の果て』じゃ親友だったじゃん!と悲しくなった。関係ないですね。今まで見たエイジのなかでもっとも情けない役でした。合掌。犬は大変賢かったです。しかしやりすぎ。音楽は大野雄二。『ルパン三世』『コブラ』『大追跡』の方ですね。
『子連れ狼』子貸し腕貸しつかまつる
1973年 日本テレビ
記念すべき第一回目のゲストとして、エイジと太地喜和子が出演。このときエイジは少しやせていて頬がそげていた気がする。くりんとした、ちょいと妙なあごひげを生やした杉戸監物なる悪城代役をしておりました。わる~い顔しておったわい。太地喜和子への横恋慕と藩政の粛清の名のもとに、祝言の最中に手下とともに切り込んだエイジ。ハレの日に家族を惨殺された喜和子が身を売ってためた金で子連れ狼に復讐を依頼する。大五郎…いくら劇とはいえ幼子の前であの惨劇はあるまい。その後の事件はPTSDかと思っちゃったわ。たぶん違うけど。
エイジ今回は見事主人公の拝一刀に殺され、ワタシもほっとしました。エイジも本望だったであろう。萬屋錦之助はなんでまゆがないんだ?悪人よりもこわい顔。
音楽は渡辺岳夫なんだなあ。『白い巨塔』『機動戦士ガンダム』のお方だとは存じておりましたが、『子連れ狼』もそうだったのね。…なにっ、『キューティーハニー』もそうなのかっ!?
『独眼竜政宗』
1959年 監督:河野寿一
幸か不幸か正史の伊達政宗について、知識も思い入れも殆んどないために無事に見おおせたが、ま、『独眼竜政宗外伝』といおうか『独眼竜政宗青春白書』といおうか『独眼竜政宗恋物語』といおうか、純粋な娯楽時代劇ですね。確か、政宗は幼少のときの病気で片目が見えなくなったはずなんだけど、この映画では23のときに暗殺団の弓矢を目にうけて失明となっておる。本人は治ると信じていたが(でも、目に弓矢さしたままさらに暗殺団と戦った挙句、自分で矢をひきぬいちゃ元通りにはならないわな)、ある日我が顔を刀に映しみて愕然とする。そして、目がつぶれてしまったことよりそれを隠していた乳母や父、家来たちに反発してプチ家出をする。そこで出会った小娘にほのかな想いを抱いたりなんかしてるうちに、戦の時がせまる。
この話はこの話で、「こういうもんだ」と思ってみていれば特に問題がなく、中村錦之助の政宗はりりしくて、目を負傷して臥せっているときの不安気な様子、包帯がとれそうだと喜ぶときの顔、片目を失ったことを悟った際の落胆、怒り等々等々、表情豊かでワタクシそれなりに感情移入してみることができました。合戦シーンは全体的にいまいちでしたけど。エイジは政宗の家来片倉小十郎役で、感情の起伏激しい「動」の政宗とは好対照の「静」の役柄はしっくりきてたと思います。
しかし、これをみるまでは政宗が関が原以前の武将とはしらなんだ。恥ずかしいよう。髷も月代も江戸時代とは違ってるんだな。この映画の時代考証が完璧とは思われないけど。みんな桃太郎さんみたいなカッコしてたぞ。のちの萬屋錦之助、まゆがあって大変よろしい。
『おかあさん』
1952年 監督:成瀬巳喜男
行ってまいりました世田谷文学館!なんのために?『おかあさん』を見るために!あー、これは映画館で見たかったなあ。どこかで上演してください。戦後間もない日本、あるクリーニング屋の、特別ではない日々の出来事を描いたもので、長男と大黒柱のお父さんの病死も、次女が貰われてゆくことも、淡々。淡々と流れてゆく中に悲しみも笑いも籠められていて、じ~んとする。「おかあさん」は田中絹代。いつも気丈にふるまってはいるが、見えぬところでそっと涙をぬぐうような、後ろから背中を抱きしめたくなるようなおかあさんで、ほんとにこの方の演技はさりげないのに惹きつけられますね。
長女が香川京子。かわいい~。顔も性格もかわいい。で、この長女に惚れてる近所のパン屋の息子がエイジ。エイジもかわいい~。こういう役は珍しいです。脳天気でややひとりよがりで真面目で本好きで。香川京子と床几にこしかけて本を読んでいるシーンは「かわいい」の一語につきます。エイジが登場すると流れるBGMがオーソレミオ。お祭りののど自慢でもピカソパンを焼くときも歌ってる。のほほーんとした雰囲気がBGMともぴったり合ってます。エイジのお父さん役の方、お名前が分からないのですがこの方のとぼけた味も捨てがたいわあ(注:中村是好さんでした)。
しかし特筆すべきは次女のちゃこちゃんと、この家に預けられてる男の子のてっちゃん。この子らの健気さ、やんちゃさ、かわいらしさ、いじましさにワタシはやられっぱなしでした。てっちゃんのエイジに対するツッコミはそりゃ見事なもんです。監督の遊び心にもあっさりひっかかったワタクシ、ビデオブースで一人で涙ぐんだり、くすくす笑ったり、「えっ」と声をあげたり、かなりアヤしい客だったことでしょう。こういった映画が今の時代でも多くの人に見てもらえるようになってほしいです。
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