「それでは皆様ごきげんよう。」
そうして2つの顔を持つ柚稀は、姫之輔の部屋へと消えていった。
「…………」
部屋に重苦しい空気が漂う。
先ほどから幸も、何度か口を開いたが、結局何も言わずに黙ってしまった。
「……………」
沖南家の二人は二人で、怖い顔で黙りっぱなしだ。
楓華はこれからの事を。
悠斗は……まあ、人生のうち、知らない方がいいこともある。
「…そーだ。この子に名前を付けないと。」
「お前と呼べば十分だ。」「いつまでもそういう訳にはいかないの。」
「…………」
もっともな正論だ。
悠斗が黙ったので、それを許可とみなし、話しを進める。
先程のやり取りは、あえてスルーすることにしたらしい。
「名前、何かいい案がある?悠斗。」
「え…でも私、寿馗――――「…そうだな、幸が薄そうな顔をしている。幸薄が妥当な線だと思うが。」
「ですから、私は寿―――「うーん。薄が駄目かな。幸にするなら一が良いわよ。占い的には。幸一。良いと思うけど?」
「 だから
!私は寿―――「お、いいな、幸一。幸が一番薄いという事だな!!」
「ねぇ、いい加減薄から離れたら…?」
「…駄目なのか?」
「……」
無言の肯定。
「…。まあ良い。そういうわけで、今日からお前は沖南幸一だ。」本人の意見をまったく無視した討論は、沖南幸一で決まったらしい。
「……………」
「…? そうか、嬉しすぎて声も出ないか!!」
少し悲しんでいたら、勝手に解釈されてしまっていた。
「そうね…。師匠だと被っちゃうから、私たちを、楓師匠と―――」
「悠師匠」
「って呼んでね♪」
なんかどこかで見たことの有るやり取りをする二人。
「どうでもいいことだけど、私、宗方 みく役ってのが気にくわない。」
「台詞の都合上だ。気にするな。」
「あ…あのぅ…。」
すこぉ~~し、自分の世界に入ってしまっている2人に恐る恐る声をかける。
「その、私、弟子入りするなんて一言も…。
「そうそう。君の両親+αにかけた催眠術、私にしかとけないから♪」
「何故だか突然、弟子入りする気になってきました。それも今すぐ!!」
投げやりな気持ちが自分の人生を変える。そんな良い例だったりして。
「ならば拙者が部屋まで案内してやろう。」
「あ、ありがとうございます、師しょ―――…」
チャキッ
わざとらしく刀の音がする。
「……ありがとうございます、悠師匠」「私も暇だからついていこーっと」
次回。幸一は、この家の重大な秘密を知る――――幸一の運命やいかに!!
スタッフロール 2007年11月19日
第17幕 問答無用。 2007年11月19日 コメント(3)
コメント新着