真理探究と歴史探訪

真理探究と歴史探訪

2005年12月20日
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(かくいう私は、山口県吉敷郡小郡町《今年の10月1日の広域合併により、現在は「山口市」となった》の出身。)

その萩市内には、毛利家の歴代藩主と夫人などの墓所がある「東光寺(黄檗宗)」と「大照院(臨済宗)」の二つの寺院がある。新世紀を迎えた頃に縁があり、私は両寺院を参詣する機会を得た。本日の日記は、その当時の回顧録を記したものである。

それぞれの由来書を見ると、「東光寺」には歴代(三代以降)の「奇数」の代の藩主の墓所があり、また「大照院」には歴代(初代を含む)の「偶数」代の藩主の墓所があるとされている。つまり、代数の奇遇で、歴代藩主の墓所が二つの寺院に分けられてきたということである。この二つの寺院の立地は離れているけれども、両寺院は歴代藩主の居城であった萩城に向かうように建てられている。それぞれの墓所をお参りすると、ともに荘厳な雰囲気がただよい、墓所に鳥居が立つという神仏混交の佇まいは印象的だった。


この二つの寺院を参詣した後、私の心に残る風景があった。それは、それぞれの寺院に植樹された、東光寺の「松」と、大照院の「藤」である。


そこで私は、この「松」と「藤」には、何らかの関係性があるのではないかと直感し、その因果関係を調べてみた。すると、興味深いことがわかってきたので、様々な関連文書から抜粋したものを以下にまとめてみた。

[ 野生の藤が松にからむ「松藤」の姿は野趣に富み、古い時代から歌に詠まれたり、物語に散見される。平安文学を代表する「源氏物語」の《蓬生》巻では、源氏と末摘花の再会の場面に「大きなる松に藤の咲きかかりて・・・」の一説や、「枕草子」の《めでたきもの》の段では、「色あひふかく花ぶさ長く咲きたる藤の花の松にかかりたる」などがある。

また、松と藤を組み合わせた「松藤文」などの意匠は、吉祥慶寿の文様とされ、平安時代の藤原氏全盛の象徴として「藤」がもてはやされるなかで、「松」とともに描かれることが多く、「松にかかる藤」は、貴族の庭園の景であり、典型的な屏風絵の図柄でもあった。その「松藤」の図柄は、皇室を「松」に、藤原氏を「藤」にたとえて、皇室とともにある藤原氏の象徴とも考えられていたようである。

この紫の花房が松にからむ藤蔓の趣は、その後いつの時代にも意匠化がさかんに行われ、能装束などの工芸品をはじめ建築装飾にもみられる。 ]




以上のことを考え合わせると、萩本藩 毛利家藩主の歴代墓所の配置においては、おそらくその構想の段階から、「松」は「東光寺」、そして「藤」は「大照院」と、それぞれの意匠にかなう二つの寺院として、その風情にふさわしい地所が選定されたと推測するところである。

(現在の萩城址の近くには、萩開府の礎を築いた毛利輝元公の墓所である「天樹院」がある。おそらく配置構想の要地と認識されていたであろう。)


加えて、「松に藤」の意匠の意味合いとして、「男は松、女は藤、松に藤がからまるように、女は男に頼りすがって生活すべきものである」という、往時の生活規範や、中国思想の陰陽説がいうところの「奇数」を「男性」とし、「偶数」を「女性」とする区別をふまえて考えると、なぜ歴代藩主の「奇数」の代の墓所のある寺院の植樹が「松」であり、同じく「偶数」の代の墓所のある寺院の植樹が「藤」であったのかということが、彷彿として浮かび上がってくるわけである。

この度は、先述の二つの寺院を参詣の後、図らずも「松と藤」の関係に着目することとなり、それを確認できたときの感動が契機となって、文書化を試みた次第である。





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最終更新日  2005年12月20日 22時11分52秒


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