田中およよNo2の「なんだかなー」日記

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2007年08月05日
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カテゴリ: ほどよく
僕がまだ10代か、20代のはじめだった頃。

エロビデオ屋でテンションが上がった。
多くのビデオと店内で垂れ流されている、広告用のビデオ。
おおぉ、なんて凄げえんだ。
って、マックスなテンションになる。

30歳を超えてしまっても、ついついそんなお店に入ったりしちゃう。
でも、違う。
同じ店でも僕の受け取り方が違うのだ。
おぇ。

かなりテンションが下がってしまう。
おいおい。
ちょっと、このDVDはえぐすぎるんじゃないのか?
なんで、ここまでしなきゃならないんだ。
ブルーだ。

金原ひとみさんの 「アッシュベイビー」 の読後感はそんな感じだった。

僕が彼女の長編の読むのは 「蛇にピアス」 に続いて二作目になる。

「蛇にピアス」はスプリットタンの紹介で異常性から始まりながら、最後にはむしろ涼やかだ。
清々と、主人公は覚悟を決めて進んでいくからだ。


幻想文学に飛ばずに、リアリズム小説の枠組みを維持しているのが不思議なほどだ。

僕がもっと若かったのであれば、この小説のエッセンスを抽象的なものとして受け取れるように思う。
でも、今はちょっとグロイって感じちゃう。
きっと、金原さんは女性が生きるってことは、このグロさから逃げられないんだよ、ってのを表現しているのかなとも思うけど。

ただ、小説としてはどうだろうって気はした。

ラストの追い込みというか、独白の拡大の文章がベタベタじゃないかな。

「蛇にピアス」では文章は上手くないけど、作品としては丁寧に書き上げてる。
でも、「アッシュベイビー」の特に後半はわざと文章を崩している。
崩壊した文章の中で、でも、ちゃんと考えようとして、失敗した主人公になっている。

ちょっと、おかしくなっちゃったというか。
このおかしくなりっぷりは、正鵠を得ているのだろう。

あるいは。

丁寧に書こうか、勢いで書いてしまおうかって作者の筆が迷っているように、僕は思ってしまった。
新人として、芥川賞を受賞し、じゃあ、これからどういった方向に自らの筆力を勧めようかっていう迷いが浮かんでくる。

厳しい言い方をすると、軽い失敗作だと僕は思う。
というか、この小説はもっと別の、完成した形の構成を行うことは難しいことではない。
はじめに持ってくるのはレズのシーンよりも、鶏を鳴かせたりすべきじゃないかな。

にもかかわらず、「アッシュベイビー」は金原ひとみさんにとって必要な小説だったはずだ。
過渡期として形にしなきゃいけない小説だ。
なぜなら、そこに挑戦する姿勢があるからだ。

「蛇にピアス」に比べて格段に主人公の感情の独白がどんどん細かくなってる。
しつこくなってる。
あっさりとした外面描写に逃げてはいない。
そりゃ、ベタベタ過ぎな場面もあるし技術的には繰り返しを使いすぎてるとは、思うけど。
むしろ、その批判を承知で、きっと、金原ひとみさんは書いているのだろう。

性や、セックスやあるいはマンコの刺激的な描写だけの作家では、彼女はない。
むしろ、それについて考えれば、考えるほど、ばらばらになってしまう僕らの思考のシステムだ。

そんな、思考に向かい合う彼女に同世代の女性は特に共感させられるのだろう。
向かい傷をおそれずにというか、むしろ、傷を受けにいくために向かい合ってる彼女に。

おっさんになった、僕は「そこまで考えなくてもええんちゃう」って思っちゃうけど(苦笑)、小説家というものは考えざる得ないのだ。

※もっと、「なんだかなー」なら『 目次・◎ものがたり 』まで





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最終更新日  2007年08月05日 23時42分43秒
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