読書の部屋からこんにちは!

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2007.09.28
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カテゴリ: その他の本
100年前の市井の人々は、何を悩んでいたのか?

この本は明治40年頃の「都新聞」「女学世界」「女学雑誌」「いらつめ」などに掲載された人生相談から抜粋した本です。内容は、男女間のこと、結婚問題、夫婦間、近隣のこと、職場、健康などなど、現代の私たちの悩みとよく似てますねえ。今ないものは、軍隊や兵役のことくらいです。

だけど、その内容は現代とは大違いです。
特におもしろいのはやっぱりというか、当然というか、男女関係だなあ。
いくつか簡単に紹介しますと・・・・


◆「浅草公園に遊び活動写真を見た後、袂からハンカチーフを出しますと、一通の手紙が出たのです。末永くご交際を願うといやらしいことを書き連ねてありました。むろん返事すべきものとはゆめ思いませんが、大いなる侮辱を受けたことが残念でなりません。」
◆「記者はかような馬鹿者が絶えざるのみか、だんだん多くなることを常に嘆息している者でございます。むろんかような無礼者に返事する必要はありません。すみやかにドブの中へでも投じておしまいなさい。」

◇「先年ある方と恋仲になりましたが、事情のため別れました。かくてある機会から基督教信者となりました。聖書に心に色情を起こしたる者はすでに姦したと同様だというてあります。私は接吻や握手はいたしましたが、肉の交際は断じてないのですけれども、この言葉によれば姦したものと同様になるわけです。私は処女として立派に嫁することはできませうか。日夜心を痛めております。」


◆「美貌は婦人の生命に候。この青春の時代、いたずらに人の妻となりてこの美貌を夫一人のものとし、家庭の何のとあくせくするは天命を無視するように感じられ候。私は婦人は必ず結婚すべきものとは存ぜず。天与の人生の花なる時代をのどかに過ごすのはふじんにとりての幸福と思い候。しかしこれも間違いなり候や。ご判断のほど願い上げ候。」
◆「情けないというを通り越し、まことにお気の毒な方だと思いました。節操こそ婦人の生命なれ、美貌何ぞ生命ならん、さような不徳不倫無節操な、世のいわゆる醜業婦にも劣ったまねをするとは、記者はこれについて言うさえ嫌な心持がします。あなたの考えは常識を有している人の言葉と受け取れませんから、真面目に相手になることを好みませぬ。」


いちばんおもしろいなと思ったのは、最後の相談です。
相談者は「もう少し青春を楽しみたい」と言ってる。美貌云々はともかくとして、これは私たちから見れば、至極まとも、普通の気持ちでしょう。だけど回答者は、それを罵倒しています。「世の醜業婦にも劣った」なんて言ってる。しかも、実はこの回答の後に続きがあって、「もし一度ご来社下さらば、また話もうかがい意見を述べましょう。」と言ってるんです。
なあんだ、偉そうなことを言ってるけど、回答者だって美貌の相談者に会いたいんじゃないの?って言いたくなりますね。


他にもへえっとびっくりするような相談、回答の連続です。たった100年前の人々、私たちのおばあさんの親くらいの世代かな?日本の長い歴史を考えても、こんなに人の心が激変した100年ってないんじゃないでしょうか。

ところで、読まれた方はお気づきでしょうか。この人生相談、回答者が全部新聞や雑誌の記者なんですよ。男女関係に限らず、職場のことや健康問題も全部記者が回答していました。今なら、その道の肩書きつきの専門家が回答してくれますよね。
当時は新聞記者や雑誌記者というのは、知的な仕事ということで人々から信頼されていたんでしょうか?







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Last updated  2007.09.28 09:37:06
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