読書の部屋からこんにちは!

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2008.02.04
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カテゴリ: 小説
子ども時代を過ごした町に、65年ぶりに戻ってきた白石さん。

体は年相応に弱っていても、心はまだまだ元気いっぱい。
そんな老人たちの毎日と、競争の終結を描いた、楽しい小説でした。

小説の結末は、なるべくしてなったというような、ふんわりした着地。
十分に楽しめた小説でしたが、どこか空疎というか、そらぞらしいような感じを持ったのはなぜかしら。
それはたぶん、主人公白石さんが、世のお年寄りみんなが願っていながら、絶対に手に入れられない理想の年寄り像を地でいっているから・・・だと思います。



じゃあ、白石さんはどんなお年寄りなのかって言いますと・・・・・・・・
まず、お年寄りは、昔のことばかりよく覚えていて、懐かしんでいるもの。白石さんは、子どもの頃を過ごした町に住み、小学校の同級生たちとつきあいがあります。町はもちろん変貌しているけれど、「昔はこうだったね。こんなことがあったね。」って話し合える相手があるって、お年寄りにとって何よりのことだと思います。


さらに、白石さんの家には20歳の女の子エリが居候するようになります。エリは、白石さんの趣味や行動に合わせて、決してバカになどしないで一緒に過ごしてくれます。彼女はその経歴から独特の死生感を持っていて、白石さんと来世を誓うようになります。

白石さんは40歳になろうとする、独身の一人娘と二人暮しです。普通、この年頃の娘は夫の身内のこととか子育てのこととかで苦労する年代で、老親にも心配をかける頃じゃないでしょうか。でも、独身ですからそういうことは一切ありません。白石さんは、その点でも悩みがありません。

白石さんにははたち前後の若い友だちがいます。エリの元のカレシです。さらに、その後輩たちとも友だちになりました。彼らは、白石さんが大好きで頼りにもしています。しかも、その若い友達は、白石さんに「もっと戦争の話をしてよ。」ってせがむのです。
このあり得ない設定に加え、白石さんはちっともじじむさくない、なかなかカッコいい老人らしいのです。現に、おしゃれしたマドンナとフランス料理店でデートまでします。


という白石さん。きっと世の中のお年寄りたちは、よだれをたらさんばかりに羨ましいと思うんじゃないでしょうか?
こんなお年寄り、あるわけないよね。こんな恵まれた境遇の人なんかいないよ。
そう言ってしまうのは簡単ですが、これをお年寄り向けのファンタジー、童話として読めば、やっぱりとてつもなくおもしろい本なのです。






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Last updated  2008.02.04 12:00:20
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