読書の部屋からこんにちは!

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2009.07.26
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カテゴリ: 小説
元過激派の父親と、日々成長していく小学生の息子の物語。

熱くてからっとして、八重山を知らない私でも八重山の風を感じられる最高の読後感でした。


この小説、第一部と第二部に分かれていて、内容はつながっているものの、感じはがらりと変わります。第一部のほうは、東京の中野に住む小学校6年生の次郎の物語。次郎の学校生活が詳しく描かれていて、男の子ってこうやって大きくなるんだと再認識できるようなお話です。担任の若くてきれいな南先生。思春期を迎えてかわいくなり始めたクラスの女の子たち。優等生やらじいさんみたいのやら、いろんなタイプの親友たち。不良になりかけている友達と、中学生の不良たち。不倫をしているらしいお姉ちゃん。お母さんの実家には何か秘密がありそうだし、元過激派だったお父さんは、後先かえりみないアナーキーな突撃型熱血漢。
幼いながらも、家族を心配し、傷つき、少しずつ大人になっていく次郎です。
お父さんが過激派だった頃の仲間が、殺人を犯したことから、次郎一家は沖縄の西表島に移住することになります。

そして、ここからが第二部です。
八重山の人々は次郎たちがびっくりするほど力いっぱい、歓迎してくれます。お父さんはガンジンさんの孫だからとか、伝説の英雄アカハチの子孫でアカハチにそっくりだからとか。
そこには、伝説と現実の区別はありません。遠い昔から語り継がれたことだからそれでいいのだ。という、力強いおおらかさ。


お父さんは相変わらずアナーキストで困った人だけど、その生きる方針は、言葉の端々に表われ、実に魅力的です。おそらく私たちのほとんどが失ってしまっている、生き物としての人間の核のようなものを、お父さんは胸に大きく抱いているのです。

お母さんが言います。
「人のものを盗まない、騙さない、嫉妬しない、威張らない、悪に加担しない、そういうのすべて守ってきたつもり。唯一常識から外れたことがあるとしたら、それは、世間と合わせなかったってことだけでしょう。」
「それがいちばん大きなことなんじゃないの?」
「ううん。世間なんて小さいの。世間は歴史も作らないし、人も救わない。正義でもないし、基準でもない。世間なんて戦わない人を慰めるだけのものなのよ。」
そう言って、お父さんとお母さんは西表島からさらに楽園をめざし、船出していきました。


・・・私って世間に合わせることに汲々として生きている…
痛いほど実感して、自分が情けなくなりました。
他にも、お父さんとお母さんには、書き写してとっておきたいような言葉がいっぱいです。

心をじゃぶじゃぶお洗濯して、ぱりぱりに乾かして、バシッとアイロンをかけたくなったときに、この本を読むといいですよ。
そうそう、アカハチの伝説は小説の最後に詳しく出てきます。これがまた、すごくいいお話なんですよ。







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Last updated  2009.07.27 09:20:16
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